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第28話:MEGANE

「あれ、すずめちゃん眼鏡掛けてる!」

給食後の長休み時間。

集まったいつものメンツの中、せせりがそう声を上げた。

「ずーめー、目ぇ悪かったばー?」

「そうなんですよ。普段はコンタクトなんですけど切らしちゃって……」

注目されるのに照れるようなはにかんだような表情を浮かべるすずめに――

「素晴らしい!!!!」

そこにいるメンバーの誰でもない声が響き渡った。

「だ、誰ですか!?」

そこに立っていたのは眼鏡をかけた女子生徒。

「あいつは――仲村渠なかんだかりみらか」

挿絵(By みてみん)

「しじみちゃんって顔広いよね」

「そう! 眼鏡をこよなく愛し、眼鏡っ子をこよなく愛でる! 仲村渠みらをよろしくおねがいします!」

「うわ、なんかヤバそうな人だ……」

実際、仲村渠みらはヤバい人だった。

翌日。

「せせりちゃん助けてくださーい!!!」

「すずめちゃん、どうしたの?」

なんてせせりが尋ねた瞬間、激しく響いてくる足音。

それは――

「すずめくん! ぜひ! ぜひ眼鏡をかけていただきたい!!!」

みらが眼鏡を手にしてすずめを追いかけてきた!!

慌てて逃げ出すすずめ。

それを追いかけるみら。

挿絵(By みてみん)

愉しそうなのでせせりもすずめと一緒に走る。

「なんで追いかけられてるの?」

「見ての通りですよ! 私に眼鏡を掛けさせようとしてるんです!!」

そういうすずめは確かに"いつも通りに"眼鏡をかけてはいなかった。

「あの人、極度な眼鏡っ子フェチみたいで――昨日、珍しく私が眼鏡をかけてきたのを見て、それで……」

「ああ、確かにヤバそうな雰囲気あったもんねぇ」

「ヤバそうじゃなくてヤバいです!!」

「みらちゃんは眼鏡っ子が好きなんだよね?」

「そうです!!」

「なら――!!」

せせりはすずめを先導して辿り着いたのは――1年5組の教室。

そこにいたのは――

「どうしたせせりー?」

「おねがいしまーす!!」

「!?」

そう、普天間しじみ。

せせりはしじみの腕を思いっきり掴むと――みらの元へと投げつけた。

「おお、しじみくん! 今日も眼鏡がキュートじゃないか!!」

「うわっ、仲村渠みら!!!」

デコイが効いてる間に逃げるよ!」

「デコイってオレか!?」

「おっとすまないしじみくん! 今はもっとレアものを追いかけていてな!!」

「レアものってずーめーか!?」

「うわっ、すずめちゃんハリアップ!!!」

「分かってますよぉ!!!!」

なんて走り回りながら職員室前。

「ちょっと、廊下は走らない!!!」

「あげは先生!! ってことは――」

せせりはとっさにその周囲を見渡す。

そこには――いた!

「ゆいな先生!!」

「えっ?」

「よろしくおねがいしまーす!!!」

2人目の眼鏡(ゆいな)の腕を掴むとみらの元へと押し出した。

「きゃっ、何ですか!?」

「おお! ゆいな先生!! あれ、もしかして眼鏡変えました? 以前の眼鏡よりも色味が少し濃いですね!!」

「な、仲村渠さん!?」

「先生まで盾にするなんて……せせりちゃん図太いね……」

「それくらいじゃないと人生大変だよ!」

「あはは……」

「それにこんな話してる場合じゃないよ! ほら来た!!」

みらはとてつもなくしつこかった。

逃げても逃げても追いかけてくる。

その度に通りがかった眼鏡っ子を盾にしていくがみらを撒くことができない。

「何で私ばっかり追いかけてくるんですかぁー!!」

「やっぱり普段は眼鏡をかけてないすずめちゃんが眼鏡をかけてたっていうのが琴線に触れんだろうね……」

「眼鏡っ子好きとしてそういうのってアリなんですかぁー!?」

「おおアリだ!!!」

「うわ出た」

「ついでに言うなら伊達眼鏡だろうとわたしは赦せる!!」

「赦せちゃうんですかー!?」

「確かに眼鏡好きの中には伊達眼鏡は赦せない派だっている……だがわたしは違う! より広く眼鏡っ子や眼鏡の魅力を広めるためには変革が必要なのだ!!」

「なんか力説し始めましたぁ!!!」

「走りながらなのにすごいね!!!」

「レンズに魂を引かれた人々からの脱却! 眼鏡をよりオシャレアイテムとして身近な存在へ昇格し、やがては全人類を眼鏡っ子へと導くのがわたしの夢だ!」

「怖い怖い怖い!!!!」

そんな逃走を繰り広げている中、せせりの持っていたスマホに着信が入る。

チラっと見た画面にはしじみからのメッセージが表示されていた。

「こんな時に……!」

そう、それは出撃要請があったというメッセージ。

「やぁ、楽しそうなことをしているね」

どうしようか悩んでいるせせりのところにタイミングよく表れたのはネフィラだった。

「ネフィラちゃん!! ちょっと協力してもらってもいいかな!?」

「協力? この鬼ごっこのかな?」

「そう! すずめちゃんをみらちゃんから逃がしてほしいんだ!!」

「すずめちゃんを――あの眼鏡の子から?」

「うん!」

「ふふっ、せせりちゃんの頼みならお安い御用さ」

ネフィラは優しく微笑むと、すずめの手を取る。

「それじゃあ行こうか、すずめちゃん」

「えっと、あっ、はい!」

うまいことネフィラにすずめを任せたせせりはハイビスカス少女隊としての使命を果たすのだった。

「なるほどね。大体わかった」

「全然諦めてくれないんですよぉー!!!」

「ふーむ……可能な限り手を尽くしてみようか。せせりちゃんから任されたしね」

「お、お願いしますっ」

「走り回るのに校舎内は向かない。外に出よう」

「ですけど外は隠れられそうな場所は……」

「ボクにいい考えがある」

「それってダメなフラグですよね!?」

「そうなのかい?」

「それでいい考えって……」

「モチロン、地道に相手の体力を奪うのさ」

「体力を奪うって……」

そんな会話を繰り広げながらも飛び出したグラウンド。

部活生が練習する中を走り抜ける。

ネフィラの動きはまるで周囲の動き全てを把握しているかのように的確で素早い。

その先導を受けながらすずめも必死に足を進める。

「撒けないか」

「これくらいで撒けたら困ってません!」

みらもみらで走りやすいグラウンドに出たことでその動きを更に加速させた。

とは言え、これだけ部活生が縦横無尽に駆けるグラウンド中ですずめとネフィラを追いかけることができるのはもはや執念としかいいようがない。

「来るよ。3、2、1……」

「何が!?」

その時、目の前に転がってきたのは1個のサッカーボール。

それをネフィラは素早く足を使ってすくい上げるとみらに向かって蹴り飛ばす。

「その程度の妨害! 眼鏡をかけていればなんともないのだよ!!」

「効いてません!」

「次!」

転がってきたのは野球ボール。

「縫い目に沿うように人差し指と中指を引っかける……そして、投げる。ヒット!!」

「アレはさすがに大丈夫なんですかぁ!?」

「軟球だからね。空気抜けかけ(プーカーボール)だったし」

「眼鏡がなければ即死だった!」

「やっぱり痛かったんじゃないですかぁ!?」

「野球部さん、ちょっとゴメンね!」

ネフィラは完全に楽しんでいるような声を上げながら、今度は野球部の倉庫前へと駆け――バッドが入れられた籠をひっくり返した。

そのまますぐ傍にある階段を駆け下りテニスコートへ。

テニスボールを掴むと何個か纏めてみらへ向かって投げる。

「次は体育館のところにいくよ」

プールの傍を駆け抜け、駐車場を抜け、小さな階段から体育館のある方へと駆けあがった。

体育館のすぐ隣はちょっとした広場のようになっている。

「結構引き離せたかな?」

「でも――この程度なら……見つかりそうです!」

「見つかるだろうね。でも任せて、すずめちゃんはこのまま校舎の中に」

「大丈夫なんですか!?」

「大丈夫。体育館の角を曲がった時に彼女の視界から消える。その隙にすずめちゃんは職員室のところの柱に隠れるんだ」

すずめはチラっと背後を見る。

まだみらの姿は見えない。

「そうですね……結構余裕は、ありそうです」

「彼女をやり過ごしたら念のため"いつもの部屋"に隠れた方がいいかもね。掃除用具入れの中ならなおベスト」

「はい!」

ネフィラの指示通りすずめはすぐに手近な柱へ身を隠す。

ネフィラ自身はすずめを連れているような素振りで体育館の方へと方向を変えた。

その後、追いかけてきたみらの目にわざとつくようにしてだ。

「待ってくれぇぇええええ!!!」

みらの叫び声が体育館の方へ消えていったのを確認した後、すずめはハイビスカス少女隊の待機部屋――その掃除用具入れへと身を隠す。

しばらくの静寂。

逸る鼓動を落ち着けるように目を閉じる。

それからしばらく――不意に教室の扉が開いた。

思わず身を震わせるすずめ。

用具入れの隙間から室内の様子が見える。

すずめの目に映ったのは仲村渠みら――その姿ではなかった。

「せせりーやけに急いでるな」

「すずめちゃんが大変なんだよ! みらちゃんに追いかけられてて……」

「ああーアイツなー」

「もしかしてまだ逃げ回ってるばー?」

「かもしれないから早く助けてあげなくちゃ!」

それはせせり、しじみ、たてはの3人――――いや、"ハイビスカス少女隊"の3人だった。

ハイビスカスアーマーを解除して待機部屋を飛び出すせせり。

その様子を見ていたすずめはただ茫然としているのだった。

挿絵(By みてみん)

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