第26話:スーパーヒロイン大運動会!
スーパーヒロイン大運動会。
それは毎年秋頃、オキナワ全土のスーパーヒロインを集めて行われる一大イベントである。
それぞれの持つ技術や異能力を駆使し競い合う人気のイベント。
「それに……わたし達も参加できるの!?」
せせりが歓喜に声を上げた。
「そ、2日目にルーキーヒロイン障害物競走って種目があるのよ」
それは前回の開催以降、新たに登録されたスーパーヒロインに参加権のある人気種目。
それが市内の運動公園で開催されることになっていた。
と、いうことでイベント当日。
陸上用トラックには県内から集められた多数のルーキーヒロイン達の姿があった。
「いっぱいいるねー」
「毎年、結構な数の新人ヒロインが誕生してるっていうしな」
「そうだばー?」
「その通りよ!」
会話に割り込んできたのはピンクの衣装に身を包んだスーパーヒロイン。
「それだけ多数の人が憧れ、注目するのがスーパーヒロインという存在。その自覚を持つことね」
「クヴェスタ! ブーゲンビレアも参加するの?」
「当然でしょう」
「まっ、これでもナンバーワンルーキーなんだからね」
「当然よ」
シラーチュカとスヴァティニェも姿を現す。
「このイベントで活躍を見せればスーパーヒロインとしての将来も安泰。特にわたし達のようなヒロインチームであれば互いの連携で更に有利――とは言え」
クヴェスタはせせりを一瞥。
「あなた達はチームで連携して何がなんでも勝つ……とかそういう考えはないでしょうね」
「……確かにすっごい運動会みたいなものだからとにかく頑張るぞってくらいしか」
「そうか、オレ達チームだもんな。協力すれば有利になるのか」
「だあるさー!」
「ふっ、でしょうね。ではお互いに全力でがんばりましょう」
恭しく礼をすると、クヴェスタたちブーゲンビレアは前方の方へ消えていった。
「なんかいつもより当たりがゆるかったね」
「ソメイヨシノにボコられて少し大人しくなったか?」
「わからんさー」
「ふーん、アレがブーゲンビレアねっ!」
「あれ、無糖ライダー!」
「Hi! ハイビスカス少女隊!」
全身黒ずくめのスーパーヒロイン無糖ライダー。
「そうか無糖ライダーも新人扱いなのか」
「そう! 今回のイベント、ワタシも勝ちを狙いに行くからね!」
「てゆーか……自転車とかありなの……?」
せせりが気になったのは無糖ライダーが押している自転車だった。
「この子はワタシの相棒! 手放すなんてできないわ!」
確かに無糖ライダーは自転車に搭乗するからライダーの名を持つ。
確かに無糖ライダーとは切っても離せないものだろうが……。
「モンダイありません。キソクによるとスーパーヒロインとしてチョメイなギジュツのもちこみはカらしいです」
「ミリエちゃん!」
「ってことはバイクとか車とか持ち込んでもいいってことか?」
「カマわないそうです。モットも、このジョウキョウでバイクやクルマをシヨウするとホカのスーパーヒロインをヒいていくコトになりますが」
「普通はそんなことしないよね」
「ハイ。テレビホウソウもされますしリョウシキあるスーパーヒロインであればそのようなコトはしないはずです」
「つまり、使っても良いけどスーパーヒロインとして正しいかどうかはわかるだろってことか」
「ハイ。ギャクにイえばホカのスーパーヒロインにヒガイをださなければゼンリョクでノウリョクをコウシしてもモンダイありません」
「だあるさ! 他の種目でもみんな能力使ってやってたさー」
そう、このイベントはスーパーヒロインの能力を発揮し、様々な人々にその名を売り出す好機であると同時に不特定多数の人々に査定される日でもある。
良識を持ち、人々を守るスーパーヒロインとしての自覚を持ちながらも他者とは一歩先を行く自身の能力を示さないといけない。
『それでは開始の時刻となりました! みんな、あたしに注目してくれよな!』
マイクから響いてきたのはエラーニツェ、ふたおの声だ。
正面では高台に上るふたおの姿があった。
『それじゃあ、あたしのシールドに注目!』
右腕に円形のエネルギーシールドが生成され、それを高く掲げる。
それが空に投げ飛ばされ、この障害物競走は幕を開ける!
『ドンッ!!』
弾けるシールド。
それが合図。
「GO AHEAD!!」
合図と同時に無糖ライダーが声を上げ、目の前にいたスーパーヒロインを1人轢き飛ばし前進した。
「スーパーヒロインの良識は!?」
「ワタシ元々ヴィラネスだし!」
「コイツ開き直りやがった!!」
「あきさみよー!」
アクロバットのように目の前のヒロインたちを踏みつけ、轢きながら前へ進む無糖ライダー。
「では、ワタシもおサキにイかせてもらいます」
ミリエはそう言うと、軽く跳躍。
その瞬間――ミリエの姿が飛行機のような姿へと変形した。
「飛行形態!?」
「では、ごブウンを」
「空飛ぶとかありなの!?」
「規定のルート、制限された高度内であれば問題ないらしいですわ」
「サクマドンナーも参加してたんだ!」
「当然ですわ。わたくしの雷鳴を轟かせるためにもね!」
サクマドンナーはそのハンマーに自身の放った電気を蓄積させる。
それを元に放つ強力なエネルギー攻撃ヴェルダージ。
その威力と反動を利用し、宙へと飛び上がった。
「むぅー! 負けていられないよっ、わたしだってスーパーカーみたいなすごい速度出せるんだから!」
「ガンガン行くさー!」
せせりは跳躍力を活かして人混みの中からいち早く抜け出す。
たてはも軽やかかつパワフルに切り抜け先へと進んだ。
「オレは2人ほど体力はねーからな。さて、どうするか」
しじみは考えていた。
これはあくまで単純なマラソンではない。
障害物競走だ。
なら――
「まだ焦る時じゃないな」
しばらく進んだ先、
「給水コーナーでーす」
そんな声が聞こえてきた。
にこやかに手を振るのはマミンカ・マリンカ。
その目の前に設置された机の上にはドリンクボトルが置かれている。
「最序盤で給水? 妙だな……」
「いただくさー!」
「あのバカ!」
特に考えなしにそれを手に取ったたては。
そしてそれを一気に喉へと流し込んだ。
「うぉぉおおお!! 漲るさー!!!」
「杞憂か? いや、違う」
その後に続いてマミンカ・マリンカのドリンクを手にしたヒロイン達は地面にうずくまる。
「ミスレシュカ、あれって……」
せせりからの通信にしじみは冷静に溢れたドリンクをスキャンした。
「成分解析……激辛ドリンクだな」
「ベジェトルカ飲んだよね? もしかして当たりが混じってる、とか?」
「いや、ベジェトルカのことだ。激辛ドリンクくらいで怯むやつじゃない」
「まぁ、バカ、だもんね……」
実際、たてははバカだったので激辛で当然だと思っていた。
躊躇なくドリンクを手に取り、さらに平気で駆けていくたてはのせいもあって阿鼻叫喚の地獄絵図。
「けど好都合だぜ!」
図らずも後続のしじみの助けになったのだった。
それからも"障害物"による妨害は続いていく。
これ見よがしにお菓子とざるによる罠がしかけられていたり(たてははかかった)、ネットを利用したジャングルジムのようなものが作られていたり(しじみはレドームがつっかえた)、協賛だというソメイヨシノの物販が置かれていたり(せせりは買った)――。
その他、定番からよくわからないものまで、いろいろな罠を潜り抜け、競争も終盤に。
突如、空を駆けていたミリエが変形を解いた。
「ミリエちゃん?」
「ツギのボウガイです!」
せせりは空を見上げる。
そこには黄金に輝くアーマーを纏ったヒロインが宙に浮いていた。
「あげは先生!」
さらに目の前から衝撃。
「さぁ、ここを通ってみなさい!」
正面には拳を地面に打ち付けたミス・ファイアの姿が。
「げっ、ミス・ファイアにあげは先生とか……ヤバいだろ」
「ワクワクしてくるさー!」
「戦闘狂なの?」
尻込みするヒロインもいる中、たてはは果敢に突っ込んでいく。
「来たわね、ベジェトルカ!」
上空から撃ちおろされるあげはの放つイルゼビーム。
たてははそれをかわし、かわし、かわし、跳躍。
その瞬間、たてはの足元から"フキ"のような植物が現れ跳躍を助けた。
たてはの拳は空ぶったが、すぐ目の前にまで迫られあげはの表情に驚きが浮かぶ。
たてはの跳躍を助けたフキを作り出したのは――
「戦う必要はないですが、見ているのも尺ですわね」
クヴェスタだった。
「クヴェスタがベジェトルカを助けるなんて」
「仕方ないでしょう。ミス・ファイアにイビシェカ……この市内でも最強と言われる2人を同時に相手するからここにいる全員でかからなくては」
「それでもベジェトルカを助けるなんて驚きだぜ」
「それはわたし自身もよ。ですけど、ここは協力するところじゃないかしら?」
「うん、完全に同意! ハイビスカス少女隊はブーゲンビレアと連携してここを突破するよ!」
「ま、仕方ねーな!」
「ワタシもキョウリョクしましょう。それはそれとして、ベジェトルカさんがまたツっこんだようですが」
「シラーチュカ!」
「もう行ってるよ!」
先頭をいくベジェトルカにシラーチュカが並ぶ。
「ハイビスカス少女隊の脳筋担当とブーゲンビレアの脳筋担当。そのコンビネーションか」
「ひどい言い方するね」
目標はミス・ファイア。
そして空中のあげはを狙うのは――
「ワタシがケンセイします。それと――」
空に輝く雷鳴。
「雷神佐久間! サクマドンナーの出番ですわぁ!!」
「うわ、危ないなぁ!」
せせりの隣に落ちた雷。
サクマドンナーはあげはとミス・ファイアを倒すついでに他のヒロインも脱落させる気まんまんだ。
とは言え、他を巻き込むくらい全力でないとあの2人を突破できないのも確か。
「わたし達も負けていられないよ!」
「だな、オレは空中組の援護に回る!」
「わたしは地上組! っていうかミス・ファイアの弱点とかないの?」
「特にない、が――強いて言うなら……」
「強いて言うなら?」
「ない」
「役立たず!」
上空はともかくとして、地上ではミス・ファイアの火炎による迎撃でたてはとシラーチュカの2人は手をこまねいていた。
「ミス・ファイアの火炎攻撃はそれほど火力が高いわけではありませんわ。あの程度なら――」
正面から襲い掛かってくるミス・ファイアの火炎。
実際、その炎はクヴェスタが地面を変質させたアスファルト製の植物を燃やし尽くすことはできていない。
「でも、ミス・ファイアの能力は火炎じゃないんだよね……」
「そうですの?」
「うん。きっとソニックブームで粉々にされるよ」
ミス・ファイアの能力は超振動。
そしてその威力は想像を絶する。
空気が、地面が震え衝撃が走った。
その衝撃はクヴェスタの作り出した植物達をあっという間に粉塵へと変える。
「おやりになりますわね……」
「ソニックブームにはソニックブーム――」
スヴァティニェが掲げた右手、その異能力によって強烈な暴風が吹き荒れた。
そしてミス・ファイアの放った衝撃と、スヴァティニェが放った衝撃がぶつかり合う。
周囲のヒロインたちを吹き飛ばすような衝撃。
「ひらめいた! スヴァちゃん、今のもう1回やって!」
「スヴァちゃん……?」
あまりにも気軽に呼んでくるせせりにスヴァティニェは口元を歪めた。
「いいわ、やってあげなさい」
「むぅ。クヴェスタがそういうなら」
そして再びぶつかり合う2つの衝撃。
さっきよりも更に強い爆風にせせりは――乗った。
「ミリエちゃん!」
せせりの意図を察したミリエは飛行形態のまませせりの元へと向かう。
その身体を利用し、せせりは弾丸のようにはじけ飛んだ。
その標的は――
「ちょ、コッチ来る気!?」
宙を舞うあげは!
「獲ったぁぁあああああああ!!」
捕まえたあげはをそのまま、下にいるミス・ファイアへと投げつける!!
「頭脳の勝利!!!」
せせり達はそのまま先へと進んだ。
「いててて……やるようになったわね」
「うかうかしてられないですね!」
協力するパートは終わり、ここからはそれぞれの力、その全力をもって1位を奪い取る。
今までの障害物や先ほどの戦いでの消耗もあり、抜きつ抜かれつの接戦を見せた。
最初にスタートした陸上競技場へと戻ってき、そこにはゴールテープが用意されている。
あれを最初に切ったヒロインが――1位!
明確に示されたゴールを目の前にハイビスカス少女隊にブーゲンビレア、そしてミリエとサクマドンナーのテンションもマックス。
「ロケットハート!」
「インパクトファクター!」
「全力ダッシュさー!!」
「ルースト!!」
「ソニックブリット!!」
「ボウジェ……」
「ヴェルダージ!」
「サイダイシュツリョク……」
それぞれがそれぞれの全力を出した結果――
「1位は――――ハイビスカス少女隊、ツィーチュカ!!」
「やったぁああああ!!!」
喜びの声をあげるせせりの背後で、他の7人が地面に倒れ伏していた。
一体なにがあったのか――そう、せせりの手にはグレートバーベナが握られていた。
「ひ、卑怯だぞ……最後の最後にグレートバーベナで一掃するなんて」
「やるつもりはなかったんだよ。ちょっと興奮しすぎただけで」
どうしても1位が欲しいというせせりの強い意志に呼応したのか、バーベナストレートがグレート化。
それに気づかず、手を伸ばすようにグレートバーベナを伸ばした余波で他のメンバーは壁にたたきつけられたのだった。
「まぁ、勝てばいいんだよ」
完全に開きなったせせりはそう言い切った。




