第25話:島袋せせり探検隊!
「せせりサン、ナニをヨんでいるのですか?」
「UMA図鑑だよ!」
「ユーマ、ですか?」
「未確認生物のことだよね。せせりちゃん、そういうの好きなんだ」
「せーりーは小学生の頃もUMAを見つける! って学校中を走り回ってたもんね」
1年5組の教室。
せせり、ミリエ、ネフィラとゆみの4人が集まってそんな雑談をしていた。
「UMAいるもん! まだ見つかってないだけで!」
「そうだね。ゴリラやパンダも近年まで実在が疑われていた。人知の及ばない、まだ発見されていない生物っていうのはきっといるだろうね」
「ゆーみー的にはUMAよりもロボットの方が驚きなんだけど……」
「そうでもアリません。ヒトがカガクをキワめるイジョウ、ワタシのようなソンザイはヒツゼンです」
「このクラス、転校生も多いし次はUMAの転校生が来るかもね」
「むしろ、明星さんがUMAの可能性……?」
「いやだなぁゆみちゃん。ボクは人間だって」
ゆみの冗談にネフィラが笑顔を浮かべる横でせせりは神妙な顔を浮かべている。
「せーりー?」
「よし、UMA探そう!」
「うわ、言うと思った……」
「だって実在するかもしれないんだよね!? これはもう探すしかないよ!」
「昔さんざん探したじゃん……」
「昔は昔! 今は今! あの頃はしょせん小学生……中学生にランクアップした今なら見つけられると思わない?」
「思わないよ……」
「ゆーみー!」
「な、なに?」
「ミリエちゃん!」
「どうしました?」
「ネフィラちゃん!」
「うん?」
「UMAを探しに行こう! 島袋せせり探検隊、結成だよ!!」
「いやだよ……」
「スみません。キョウはヨウジがアりまして」
「人と会う約束があるんだ。ごめんねせせりちゃん」
「島袋せせり探検隊、解散!?」
「そもそも結成してないよ」
仲間を失ったせせりは1人、校内をぶらついていた。
「UMA……きっとどこかにいるはずなんだ」
さすがにこんなところにはいないだろとつっこむ人は誰もいない。
「そうだ、ほとんど人が来ないような教室なら……」
と言って辿り着いたのはいつものハイビスカス少女隊の待機室だった。
そりゃそうだ。
今日はしじみもたてはも用事があるということでいつものように集まってはいない。
「せせりさん、なにか探し物とかしちゃってるんですかー?」
「ちょっとUMAをねー」
「UMAってアレですよね。未確認生物ってヤツですよねー」
「そうそう! きっとこのオキナワにもいるはずなんだよねぇ。例えば……そう、ヒヤゴンとか!」
「わぁー、わたしみたいに幽霊もいますからねー。きっとUMAもいるでしょーねー!」
「そうそう。ユウレイちゃんとだって会えた……ってユウレイちゃん!?」
「はい、なんでしょう?」
振り返った先には確かに旅に出た筈のユウレイの姿があった。
「もう他の街に行ったんじゃ!?」
「え? いえいえ、ちょっとそこら辺を散歩してきただけですよー」
「そ、そうなんだ……」
「空港通りって知ってます? あそこら辺、夜はやばいですね」
「うん、知ってる……あ、そうだ! ユウレイちゃんもいっしょにヒヤゴン探そうよ!」
「実はこれから海中道路に行こうと思ってるんですよー」
「急にちょっと遠くなったね」
「はい! 移動も徒歩……いえ、浮遊? なので今から行こうかと」
「そうなんだ……えっと、観光、楽しんでね」
「はい! それではまたー!」
窓をすり抜けどこかへ消えていくユウレイをせせりは静かに見送った。
生徒会室前。
「あ、ふみちゃん!」
「せせりさん?」
書類を抱える桑古ふみの姿を見つける。
「生徒会長いる?」
「はい。室内に」
「ありがと! ふみちゃんもどうぞ」
「ありがとうございます」
せせりに促され室内に入るふみ。
それを見てせせりは扉を閉めた。
「あら、せせりさん。どうしたのかしら?」
部屋の奥にはこの桃山中学の生徒会長である透翅羽れいながいる。
「れいな先輩って色んなこと知ってるよね!」
「いえ、それほど色々知ってる訳では……」
「またまたぁ! きっとれいな先輩ならヒヤゴンの生息地もわかるんじゃないかなーって」
「「ヒヤゴン?」」
れいなと、そしてふみの声がハモった。
「ヒヤゴンはね、きっとこのオキナワにいるUMAなんだよ! どんな姿をしてるかは分からないけど……きっと人間みたいな二足歩行だね!」
「せせりさんはそういうUMAがいると誰かから聞いたのかしら?」
「ちがうよ。わたしがいるはずだって思ったんだよ!」
「あの……それ……せせりさんの創作UMAじゃ……」
「でもオキナワにUMAは絶対いるよね!」
れいなもふみも困った表情を浮かべるが、熱くなっているせせりにはわからない。
「えっと……せせりさんは、ヒヤゴンと会ってどうするの?」
「もちろん、友だちになるんだよ! だからヒヤゴンに会いたい!」
「残念ながらわたしでは力になれません」
「れいな先輩でもヒヤゴンのいる場所、わからないの……?」
「はい。ですけど、せせりさんが純粋な思いを持ち続ければいつか出会えますよ。ヒヤゴンに」
「……うん、わかった! わたし諦めない!」
生徒会室を後にしたせせりを見送り。
「上手いこと、言ったね……」
「本当、素敵な子」
職員室前。
「すずめちゃん! UMA見なかった?」
「え? ゆうま……さん? 誰ですか?」
「UMAだよUMA! 未確認生物!」
「私が見てたらUMAじゃなくなりますよ?」
「そうだけどそうじゃない! なんか見た覚えないの?」
「そんなの見た覚えがあったら話しますよー」
「そうなんだ……」
その時、職員室から1人の教員が姿を表す。
なんてぼかす必要もないだろう。
「あげは先生! UMAの出現情報とかないの!?」
「あたしを何だと思ってるのよ。UMAの専門家とかじゃないのよ」
せせりはそっとあげはの耳元に近づくと小声で言った。
「幻想案件とかでそういう話はないの……?」
「ない」
きっぱり言い切られせせりは肩を落とす。
「じゃあ噂! 噂とかなんかないの!?」
「UMAの?」
「そうです!」
再び職員室の扉が開き、そこからもう1人、教員が出てくる。
「ゆいな、何かUMAの噂とか聞いたことある?」
「え? UMA、ですか……?」
あげはに話を振られたのはせせりのクラス担任であるゆいなだ。
「そ、何かない?」
「UMAとは違うかもしれないですけど、キジムナーはガジュマルの木の上にいるって言いますよね」
「キジムナー……」
「せせりちゃん?」
不意に駆け出すせせりにすずめは首を傾げる。
「廊下は走らない!」
「早歩きだもん!」
「せせりさんどうしたんでしょう?」
「何か変な本でも読んだんじゃないの」
グラウンド。
運動部が練習をする中、せせりは目的のソレに向かって走る。
「せせりー、トレーニングしてるばー?」
そんなせせりの横に並んできたのはたてはだった。
「木に登ろうと思ってね!」
「なんで?」
「木に登ればUMAに会えるかもしれないから!」
「UMA? 味覚糖??」
「それはUHA」
「UMAって未確認生物かな?」
「さすがあきら先輩!」
今日もたてはと一緒にトレーニングに励んでいたのだろう。
伊良我あきらが興味津々で声をかけてきた。
「未確認生物ってなんだなー?」
「ネッシーとかビッグフットとか……発見されてない生物のことだよね」
「うん! わたしはヒヤゴンと友だちになるんだ!」
「ヒヤゴンか、いいね! ヒロシマにもヒバゴンっていうのがいるし似たようなものなのかな!」
「あきら先輩かなり詳しいさー!」
「そういうUMAと追いかけっこするのが夢だからね! せせりももしヒヤゴンを見つけたら紹介してほしいな!」
「うん! 約束だからね!」
そして目標の木はグラウンドの端にあった。
グラウンドを取り囲むように植えられた木よりは一回り大きい、ある意味異彩を放つ一本の木。
「わたくしはもっと強くなるのですわ!」
「まだだ、まだいけるぞ!」
「ええ!」
その木の枝で懸垂をしているサクマドンナとそのコーチをしているふたおの姿があった。
「サクマドンナとふたお先輩……なにしてるの?」
「もちろん、よりスーパーなヒロインになるための特訓ですわ!」
「かおりちゃんから特訓をつけてほしいってお願いされたんだよ。ま、これでもスーパーヒロインの先輩だしな」
「ええ、イルゼ能力は低くてもそれをカバーする技術と根性! わたくし、痺れましたわ!」
「そうなんだ。それじゃあそこどいてくれる?」
「なんですの藪から棒に!!」
「どうしたんだせせりちゃん」
「わたしはUMAを探してるの! 木の上に登ればUMAと会えるかもしれないの!」
「何を言ってますの……?」
「キジムナーか?」
「ふたお先輩も知ってるの!?」
「そりゃな。てかキジムナーはどっちかっていうと妖精の類いだろ。UMAじゃなくて」
「キジムナーじゃなくてもヒヤゴンがいるかもしれないでしょ!」
「ヒヤゴン……? 泡瀬の方にそういう地名もあったけど」
「泡瀬だね! 次の候補に入れておく!」
「もしかして本気でUMAを探してますの?」
「そうだよ! れいな先輩も言ってたもん! 純粋な思いを持ってればいつか会えるって!」
「まぁ、そうかもな。えっと、がんばれよ!」
「うん!」
せせりはいそいそと木に登り始める。
意外にも慣れた感じですいすいと。
そして木の上から周囲を見回した。
部活生の声や合奏部の楽器の音が響き渡る。
「ヒヤゴンもキジムナーも出てこないな……」
はぁとため息をついた時、
「せせりー、何してんだ?」
足元からそんな声が聞こえた。
「しじみちゃん!」
下からせせりを見上げるのはしじみとそしてもう1人。
見覚えのない女子生徒がいた。
「そっちの人は……?」
「ひやごんだよ」
「ヒヤゴン!?」
せせりは慌てて木から滑り降りると、ひやごんと呼ばれた女子生徒の前に立つ。
「あの、ヒヤゴンさん……1つお尋ねしたいんですけど……もしかしてUMAですか?」
「え? えっと……ゆうまだけど」
「やっぱりUMA!!」
そう、彼女の名前は比屋根ゆうま。
しじみの友人の1人だった。
「わぁ、けっこう人なんだ……あ、あの、握手してください!」
「え、いや、いいけど……なんか勘違いしてない?」
「まぁせせりーはちょっと変なところあるからな」
「あ、あの! ヒヤゴンさん!」
「う、うん?」
「わたしと、友だちになってください!」
「うん……いいけど……」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
そう感謝の言葉を述べるせせりの表情にはこれ以上ないほどの達成感で満たされていた。
「な、なんなんだろう……あの子」
「悪いやつじゃないよ。うん。変な気に入られ方しちゃったみてーだけど……」




