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第24話:幽霊電話の怪

友達の友達がね。

そんな出だしで始まる物語を読んだことがあるだろうか?

そう、都市伝説と呼ばれるものである。

ある種のホラー的な内容を含むものもあればそうでもないものもある。

それはどんな地域でも多かれ少なかれ存在するものだ。

「幽霊電話ボックスって知ってるか?」

「幽霊電話ボックス?」

「まず、電話ボックスってなんだばー?」

「そっからかー」

たてはの発言にしじみは頭を押さえる。

「せせりーはわかる?」

「バカにしないでよ。近所にあるもん。プラザハウスのとこにもあるもん」

「そうだな。プラザハウスの近くにある電話が中にある箱が電話ボックスだ」

「電話ができるばー?」

「お金かテレフォンカードがあればな」

「テレフォンカードってなんだばー?」

「もういいよ! 話が進まない!」

無知なたてははよそにしじみの話は続いた。

「子どもの国の近くにある施設があって、その前に電話ボックスがあるんだが……」

「うちの近所のやつじゃん」

「そうなのか?」

「そうなの」

「深夜0時、その電話ボックスに入って444-4444に電話を掛けて"幽霊さん、お友達になりましょう"と言うとどこからともなく女の子の声が聞こえて来るらしい……」

「へぇー」

「反応薄いな」

「でもどうせ嘘なんでしょ?」

「夢を忘れた地球人め……でも、オレのフォロワーさんのフォロワーさんも聞いたらしいぜ?」

「それならさ、わたし達で検証してみようよ。ちょうど近所だし」

「…………え?」

「本当に聞いたって人がいるんでしょ? ならわたし達も試してみようって言ってるの!」

「またまたご冗談を……」

「しじみービビってるさー!」

「ビ、ビビってねーし!」

「しじみちゃんってこういうの苦手なんだ」

「苦手じゃねーし。おばけなんてねーし。おばけなんて嘘だし。いないからおばけって言うんだし」

「それなら大丈夫でしょ!」

「うぐぅ……」

「結局しじみーはいる派だば? いない派だば?」

「いて欲しい! けどいて欲しくない!」

「どっちだばー?」

「でもおばけが居たとしてもわたし達なら倒せるんじゃない?」

せせりの何気なく放った言葉にしじみは真顔になると言った。

「そうだな」

「それにイタズラ3人娘とか他のヴィラネスのイタズラかもしれないしね。そういう意味ではまず調査するのはハイビスカス少女隊の仕事だよ!」

「正論だな……仕方ない、行くか」

ということで夜。

噂の電話ボックス前にハイビスカス少女隊の3人はいた。

挿絵(By みてみん)

「ハイビスカス少女隊、参上!」

「しじみーだけアーマーつけてるさー」

「な、何が起きるかわかんねーんだから当然の備えだろ!」

「ビビってるぅ!」

「2人は無用心だぜ。意識が足りない!」

「はいはい」

せせりはしじみをあしらいながら、電話ボックスの扉に手をかけた。

夜の闇の中、真っ暗に沈む電話ボックスの中。

「普通、夜には明かりがついてたりするもんだろ……」

明かり一つついていないそこは、もはや完全に闇。

こういう不気味さがあれば変な噂の1つや2つ、出ること自体おかしくはないだろう。

「わりと新しい感じだばーよ」

「どうせならもっと寂れた公衆電話とかならよかったなー」

「好き勝手言いやがって……」

受話器を手に取り、耳に当てる。

当然、まだ何もない。

「電話番号はなんだっけ?」

「123-4567」

「てーげーだねー」

せせりはダイヤルをプッシュ。

「なんて言うんだっけ?」

「ラーメン大盛り1人前」

「てーげーだねー。ラーメン大盛り1人前!」

「……しじみー嘘言ってない?」

「…………いってない」

たてはの視線から逃れるようにしじみは目を逸らした。

「うち、出前はしてませんよー」

不意に高い少女の声が響く。

「え、なになに!?」

「誰かなんか言ったばー?」

「知らない知らない! 知りたくない!!」

それは電話の向こうから――ではない。

電話ボックス周辺に響くような声。

外にいるはずのしじみとたてはにもその声が聞こえたらしいことからも、あくまで電話や電話ボックス内に関係があるわけではないことがわかる。

「誰だ! 出てこい!」

「はーい!」

気軽な返事と同時に急にせせりの目の前に1人の少女が姿を現した。

挿絵(By みてみん)

「うおっ!?」

素の驚きの声が響く。

すぐ目の前に突然、人が出てきたのだから仕方のないことだが。

「でもなんか、かわいい……?」

「あい、人さー!」

「お、おばけか……!?」

思ったよりも親しみやすそうなその姿にしじみ以外の2人はどこか拍子抜けだ。

「いや、見た目に騙されるな……き、きさま! 名を名乗れ!」

「はい! わたしはユウレイと申します!」

「幽霊!!」

「それは愛称で本名は夕闇ゆうやみレイミと言います!」

「本名!!」

「待つさー、まさか人間だばー?」

「元々はそうですねぇ。死んだと思ったら幽霊になってました!」

「なんか自由な子だね……」

「はいっ! ですから今は自由に旅をしています!」

「自由すぎるさー」

「何雑談を繰り広げてるんだよ!?」

「でも悪い子って感じしないしー」

「だからよー」

「いやいやいや、だったら何でこんな電話ボックスに!? 自由に旅をしてるなら旅してろよ!」

「気に入っちゃったからここを寝床にしてるだけですよー」

「寝床って!」

「なんか取り憑けるものがあると楽なんですよね」

「取り憑いてんの!? 電話ボックスに!?」

「すごいでしょー! 地縛霊だった頃の経験が役に立ってます」

「地縛霊だったの!? ぜってーやべーって!! 地縛霊はやべーって! 特に恨み辛みがやべーやつだからこう見えて本性は……」

「もー、話のわからない人ですねぇ。今はもう地縛霊じゃないんですよ?」

「信じられるか!」

「しじみー疑いすぎ! こんなかわいい子が悪霊なはずないじゃん」

「だある!」

「そうですよ、しじみー!」

「勝手に名前を呼ぶな!」

「そうだ、自己紹介しとこうよ」

「仲良くするさー」

「わぁい、うれしーさー! 嬉しみを表すために、ユウレイとっておきのジョークを言いまーす!」

「いぇーい!」

「実は最近ちょっと悩んでいることがあるんです」

「っていうと?」

「ちょっと髪の毛が薄くなってきたなぁーって」

「髪の毛どころか身体全体すけてるけどね!」

「そうなんですよ! あ、これ、ユウレイジョークね」

「しに面白いさー!」

「……そうか?」

空気も和み、どことなくしじみの警戒も解けてきた頃、小さな光がせせり達を照らした。

「なに!?」

挿絵(By みてみん)

「人、ですかぁ? オバケじゃあないよですよねぇ~?」

奇妙な装備を身に纏ったその女性の姿に、ハイビスカス少女隊の3人はどこか見覚えがある。

だが、思い出せなかった。

「ですけどぉ、ストロンゲスト怪異センサーがビンビンしてるんですよねぇ……」

どこか掃除機のようにも見えるアイテムをせせりたちへと向ける。

「人間、人間、人間……おっ、そこの髪が長い女の子ォ。怪異、ですねぇ」

女性が機械を向けるその先にはユウレイの姿。

「なにをする気なの!?」

「フフフフ、お嬢さん達ィ――運が悪かったですねぇ。わたしはストロンゲストの異名を取る凶悪ヴィラネス! ここで会ったが運の尽き、ですねぇ……」

「ストロンゲストって言ったら!!」

「オレが倒したヴィラネスか?」

しじみがせせりとたてはを押しのけ前に出た。

今まで薄暗さからその姿が見えていなかったのだろうストロンゲストは――

「……げっ」

ただ一言、そう漏らす。

「そうか、どっかで見たことあると思ったらストロンゲストの中身か!」

以前、巨大なアーマーを操りハイビスカス少女隊を苦戦させたストロゲンスト。

あの戦いの後、ヴィラネス収容所に確保されたはずだがフラサテルカ戦時の集団脱獄時に逃げ出していた。

「中身とか言うなし!」

「あの巨大アーマーは?」

「今回は怪異捕獲用の新型! その名もストロンゲストGB!!」

「つまりゴーストバスターズか!」

「フフフ。幽霊を研究し、ストロゲンストに生かす。これでストロンゲストがよりストロンゲストに近づくというわけです! その邪魔をするのなら……」

「邪魔をしないわけねーだろ! ハイビスカス少女隊、集合だ!」

しじみは霊子杖スプリームトリスメギストスを構えると、一気に撃ち放つ。

それと同時にせせりとたてはもハイビスカスアーマーを装着。

「ツィーチュカ参上!」

「ベジェトルカいっくさー!!」

「このストロンゲストGBは小型だからって舐めてはいけませんよぉ~。見よこのストロンゲスト捕獲装置の威力を!!」

ストロンゲストは捕獲装置のスイッチを入れる。

瞬間、その吸引口から放たれた強烈な閃光。

それは周囲にはじけ飛び、地面や壁を焼き付けた。

「これぞ吸引力の変わらないただ1つの怪異捕獲装置ですよぉ!」

「捕獲装置って割には殺意高くない!?」

「そういうもんだ!」

「そーゆーもんだばー?」

捕獲装置から電光が放たれる度、周囲を光が照らす。

「アレに当たっちゃったらわたしヤバイですよねぇ」

「だから隠れてて!」

「インパクト・ファクターで体勢を崩す! そこに斬りかかれ!」

「分かった! 太陽のフレアシャーベット!」

しじみとの連携をはかった空中からの奇襲攻撃。

「刃が立たない!」

「簡易型とは言えストロンゲストアーマーの1つなのですよぉ? そう簡単にダメージを受けるはずはないのです」

自慢するようにストロンゲストは胸を逸らすと、

「お返しですぅ」

捕獲装置をせせりに向かって起動させる。

強烈そうな電撃がせせりを襲う――が。

「思ったよりもダメージがないね……」

「そんなー!」

せせりはピンピンしている。

「ぐぅ……確かに怪異の捕獲に特化してますから戦闘能力は低いかもとか思ってたけど……」

「でも油断できねーぞ。アーマーが焦げ付いてるからな……」

怪異に対して効果を発揮するということは、同じようなイルゼ体であるハイビスカスアーマーにも何かしらの影響があるということだ。

ダメージ自体は低いとは言え、今までに無い被害の出方がする可能性はあった。

「持久戦はちょっと不利かもってことだね。なら、速攻でいくよ」

「言うは易しですよぉー!! こちらだって強力な攻撃手段だってあるのです! そう、捕獲装置から出る力場を交差させれば――」

「あい、奥の手があるらしいさー!」

「てか完全にゴーストバスターズじゃねーか!」

「で、交差させるもう1つの捕獲装置は?」

せせりの問いの通り、ストロンゲストはこれ以上捕獲装置を持っているようには見えない。

「…………取りに帰るんで少し待っているのです!」

「待つわけねーだろ」

「でもどうする? どうやったら攻撃が効くかな!?」

せせりの言葉にしじみは無言で人差し指を立てた。

「1?」

「ワン!」

「そういうことだ!」

「どーいうこと!?」

「行くぜ!」

「わからない!」

「とにかくやったるさー!!」

「ミスレシュカは指を1本立てた……つまり、息を合わせた一斉攻撃をしろってことだよ! いくよ!」

「「せーのっ」」

せせりとたてははタイミングを合わせ、ストロンゲストにバーベナストレートと右腕の一撃を叩き込んだ。

「ミスレシュカ攻撃して無いじゃん!」

「ふっ、そこだ!」

せせりが文句を言った瞬間、しじみはスプリームトリスメギストスをストロンゲストの脳天へと振り下ろした。

「いや、どう見ても頭がガラ空きだったろアレ」

「ああ、あたまね……」

「ストロンゲスト確保さー!」

「ユウレイちゃん、もう大丈夫だよ」

「ふぅ、びっくりしちゃいましたよぉ! まさかわたしを捕まえようとしてくるなんて……」

「この世界にはそういうヤバいヤツらもたくさんいるからな」

「旅をするならでーじ気を付けんといかんさー!」

「そうですねぇー。ありがとうございます! それじゃあわたしはそろそろ行きますね」

「え、行っちゃうの!?」

「はい! なんたって幽霊ですから!」

「幽霊は夜に活動するもんさー!」

「そーいうことです!」

「そうか……会ったばかりだが、なんか寂しいな」

「しじみーあんなに怖がってたのにー」

「だからよー!」

「うっせ」

「やっぱり、こういうのって良かったりしますねー。せせりさん、しじみさん、たてはさん。またいつか会いましょう!」

「うん、またねユウレイちゃん!」

こうして一夏の奇妙な出会いは幕を下ろしたのだった。

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