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第19話:ワンダー・フルアイランド 前編

『美しい妖精たちがあなたをお出迎え! みんなで行こう、妖精の島!』

ハイビスカス少女隊の待機部屋。

しじみが手に持ったタブレットにCM映像が流れる。

青い海と空、そして緑の土地を舞い踊る妖精達。

それは今話題になっているテーマパーク、妖精の島のCMだった。

「すごいって話題だよねー。いーなー、行きたいなー」

「つってもチケットは即日完売。丁度夏休みだし倍率が高いなんてもんじゃねーしな」

「だからよー! たてはも応募したけど落選したばーよ!」

「応募したんだ……」

「そんなに行きたい?」

その時、急に聞こえた声。

声の主は――

「あげは先生! もしかして連れて行ってくれるとか?」

「いやいやあげは先生が自分からそんなこと言い出すなんて」

「ほら」

あげはの手には4枚のチケット。

それは確かに妖精の島への入場券だった。

「あきさみよー! チケットさー!」

「どうしたんですかこれ」

「日頃から頑張ってくれてる3人へのプレゼント――と言いたいところだけど、出撃よ」

「「「出撃……?」」」

挿絵(By みてみん)

「青い空、そして海! ここが妖精の島!!」

吹き抜ける風を一身に受けてせせりはうんと伸びをする。

「やっぱ人多いなー」

しじみの言う通り、周囲には人だかり。

当然のことだが家族連れが特に多い。

「しにワクワクしてきたばーよ!」

「車の中でも言ったけど、遊びに来たわけじゃないからそれだけは注意しなさい」

そう、あげは言っていた。

"出撃"だと。

「幻想案件の可能性がある、んでしたっけ?」

「つまり、3人娘のせいってこと?」

「それを調査するのが今回の任務よ」

「でーじにりー」

「今回は調査局の人たちとも合同になるから失礼のないようにしなさいよ」

「調査局って?」

「幻想案件の事件がどこで起きているかとかどういう原因だったのかとかを調べてるとこだよ。しじみたちみたいな幻想持ちを探してるのもそこだってさ」

「へー、◯ルドゥック機関みたいなものかー」

「最近エヴァでも見た?」

「チャンネルステーションで考察動画を見てたんだよ」

なんて話をしていると3つの人影が近づいてきた。

「あげはさん!」

響いた快活な声。

「来たわね」

「その3人がハイビスカス少女隊か?」

「ええ。今回の件、この子たちに協力してもらうわ」

あげはと会話をしていたその女性は視線をせせりたちハイビスカス少女隊へ向ける。

真っ直ぐな瞳に中性的で整った顔立ちの女性。

「オレは金神かなかみサンだ。よろしくな! それと――」

サンに促され前に出たのは赤毛の女性。

「私は金神ローズ。よろしくね」

どこか優しさと美しさを感じさせるローズは、優しい声音で挨拶をした。

「もしかして姉妹ですか?」

「そ。これでも双子なんだぜ」

「……全然似てない」

「二卵性だしなぁ」

そして最後の1人。

「ふっ、わたしは河川かせんミズルなのですよ!」

腰に手を当て大きく胸を逸らしながら謎の自信を纏いながら名乗った。

挿絵(By みてみん)

この3人が幻想調査局から派遣された今回、ハイビスカス少女隊と共に活動する調査員だ。

「幻想案件とは言いますけど、ここの何が問題なんですか?」

しじみは抱いている疑問をサンにぶつける。

このテーマパークに入場してから平穏そのもの。

綺麗な妖精が舞い踊り、目立ったアトラクションがあるわけではないが異世界に迷い込んだような気すらしてくる。

「そうだな。問題点はまず1つ、この島にある日突然妖精のようなものが現れたってことだ」

「プロジェクションマッピングじゃないの?」

「この世界、この時代に日中でもここまでハッキリとした映像を投影するのは難しいはず。だけどまるで実在しているみたいにくっきりと見える」

「映像を映し出してるわけではない、ってことですね」

「それともう1つ。調査の結果、ここにいる妖精は本物だということがわかったんだ」

「本物の、妖精! すごいじゃん!」

「けど不自然な点がいくつもある。まずそもそも、妖精なんて見たことあるか?」

「見たこと……ないね?」

「だからよー」

「まぁ、いつも戦ってる3人は似たようなもんだろ」

「あの3人娘は特別なケースとして、この世界では妖精というのは普遍的に存在するものじゃないんだ」

実際、せせりたちもイルゼ能力が他人よりずば抜けているとは言え、イタズラ3人娘のような超常の存在と出会ったことはなかった。

「もっと妖精ってのが身近なら、少なくとも君たちなら何度も目撃していてもおかしくないしな」

「わたしたちのイルゼってそんなすごいの?」

「データ上なら全盛期のあげはさんに次ぐくらいにはな」

「あげは先生が最強?」

サンの言葉に思わずハイビスカス少女隊の視線があげはに向く。

「む、昔の話よ……っ!」

「20年昔?」

「しじみ、後で職員室!」

「つまりはだ。この世界だと妖精や精霊みたいなものは普通、存在しえないってことだな」

「まぁでもたしかに、おとぎ話とかゲームの中だけのものだと思ってたしね」

「あの3人娘がそういうのって聞いて驚いたしな」

「だからよー!」

「それじゃあ今のこの状態っておかしいんだね」

「そう言えば妖精がいるのもこの島だけだしな。道路も繋がってるんだから他の島に来ても良さそうなのに」

「あいっ、そー言えばそーさー!」

「そうだ。だからここを調査する。何が原因でこういうことになったのか……それを調べるんだ」

元々は目立ったものも何もない島。

それを即席のテーマパークとしたことから、大きな遊具などは何もなく、基本的には島の景観と妖精たちを見て楽しむということを主にしていた。

「それでもこれだけたくさんの人が来るんだからすごいね……」

「子ども向けの遊具コーナーとかもあるみたいだぞ」

「動物型の乗り物があるさー!」

「たてはちゃん乗ってみてよ」

それはさまざまな動物のかたちをした乗り物。

お金を入れるとメロディと共にしばらくの間自由に操作できるという乗り物だ。

「サファリペットか……中学生がアレに乗るのは勇気が……」

ふとしじみは気付く。

はしゃぐ子どもたちに混じって、奇妙な格好をした女性が惚けたような表情でパンダに乗っているのに。

「なんかすごいお姉さんがいるな……」

「どした?」

しじみにつられて視線を向けたサンはその女性の姿を見て顔をしかめた。

「知り合いですか?」

「……見なかったことにしよう」

挿絵(By みてみん)

「お姉ちゃん、何か変な感じしない……?」

ふとローズがそんなことを口にする。

「そうだな。待てよ……」

サンは静かに左目をつむった。

瞬間、右目に魔力が集まりその色が青く変化する。

それは周囲にある様々なエネルギーを捉え、解析するサンの魔眼。

どこからか現れた奇妙な感覚。

青き魔眼はその根源を探るべく周囲に目を光らせた。

それは島の中心部。

山――というよりは丘というのが適切か。

緑が多い茂るその中心部から発せられていた。

「力が……広がる!」

島の中央から溢れた力は一気に大きくなっていく。

力は強大で、もし今この力を察することができたものなら急な突風に身体を揺らされたような感覚を覚えただろう。

「何、いまの感じ!」

「わかんないけど……何か起きるってことですか!?」

「でーじよ!」

「その何かは……すぐわかりそうだな」

「ええ。来るわよ」

「あ! あそこを見るのですよ!!」

ミズルが指を指したその向こう。

奇妙な光が吹き上がり、地面が割れた。

周囲を揺らした地響き。

「あれは……お城?」

せせりの呟きの通り、島の中心に現れたのは西洋風の巨大なお城だった。

「まるで夢の国だな」

「だからよー」

「あの城からだな。この島を包む奇妙な力が出ているのは……」

「行こう、あのお城まで!」

せせりの言葉に一同は頷く。

「あげはさんは念のために他のヒロインたちに連絡を。ハイビスカス少女隊はオレ達に任せてくれませんか?」

「わかったわ。任せたわよ」

あげはと別れ、ハイビスカス少女隊とサン達調査員はお城へ向かって駆け出した。

「3人とも戦闘準備をしておけ」

「戦闘!?」

「そうね。この先に何かいるわ」

進む先は奇妙な森へと変化していっていた。

それもどこか禍々しい、ファンタジーな森へと。

「よーし、変身するばーよ!」

ハイビスカス少女隊の3人は首にかかったネックレスをぎゅっと握りしめる。

それはハイビスカスアーマーが内包されている特殊な石。

その石は3人のイルゼと反応し、身体を包み込んだ。

イエローサムライ2000GT、ブルーソーサラー595、ヴァーミリオンフィスト・トマホーク。

3人をスーパーヒロインたらしめるアーマーを顕現させ、せせりはツィーチュカ、しじみはミスレシュカ、たてははベジェトルカと名を変える。

挿絵(By みてみん)

「うっほー! 変身ヒロインなのですか!? サイコーなのですね!」

「抑えろミズル!」

「周囲をスキャン……この先にイルゼ反応!? 来る!」

しじみの言葉通り、森の向こうから小人が姿を現した。

可愛らしい見た目とは裏腹に、剣や弓を構え見るからにこちらを襲う気マンマンだ。

「ゴブリンかな?」

「コボルトだろ」

「ドワーフさー!」

「何でもいい! 襲ってくるぜ!」

サンの言う通り、さっそく小人兵たちは矢を射る。

「行くぜ、金神!」

「来て、セラヴィス!」

「フツノミタマ!!」

その斉射をサンの刀が、ローズの斧槍ハルバートが、ミズルの直刀が蹴散らした。

「うわ、どこからともなく武器を取り出した!」

「オレたちもあーいうのやってみてぇ!!」

「アーマーも似たようなもんさー」

「確かに……じゃあわたしたちも、バーベナストレート!」

「スプリームトリスメギストス!」

「両腕で520%さー!」

サンたちの真似をするように、それぞれの武器を出現させると小人兵たちに斬りかかる。

「この小人、なんかを連想するんだよな……なんだっけ」

「あれなのですよ! ランドスターの剣士に似てるのです!」

「なるほど、それです!」

「しじみちゃんとミズルは気が合いそうだな……」

「もしかしてミズルさんはオタク……?」

なんて雑談を交えながらもたどり着いた城門前。

そこを駆け抜け一気に城の中へ。

「力は最上階から来てるな……行くぞ!」

ハイビスカス少女隊やサン達調査員がお城へ潜入した頃。

同じようにその場所を目指している人影が複数あった。

「この先だよ! ここを抜ければ……」

森の中を先に行く褐色の少女。

「うわ! いやーすっごいお城じゃん! こういうお城に住んでみたいなー」

能天気にお城を見上げる長髪の女性。

「ええ、女の子の憧れ……というやつですね」

優しく微笑む茶髪の少女。

「ここに居るのね。アナタの探してる人が……」

お城に静かな視線を向ける黒髪の少女。

「みなさん、手伝ってくれてありがとうございます(にふぇーでーびる)

「いーっていーって! さぁ、学校怪奇同好会、しゅつどーう!」

「学外ですのでそれは関係ないのでは?」

「学外ってか県外だし……」

そして更に別の場所。

「アンタがパンダ乗ってるから出遅れたじゃない!」

「うるさいわね……そっちこそ屋台で食べ歩きしてたクセに……」

「ったく、なんでアンタと一緒に仕事しないといけないの!? ロワー様は何考えてんだか!」

「私だってアナタと一緒はゴメンよ。はぁ、人が殺せない……」

「いい加減、殺すことと逃げること以外も覚えなさい!」

「爆破することしか能がないアナタに言われたくないわ……」

「ああ!?」

この先で何が待っているのか、どうしてこの現象が起きたのか。

その続きはまた次回。


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