第16話:予言者!? プロフェットの脅威!
「くっ……つ、強い……」
「期待外れだなぁ、ミス・ファイア。私を捕らえた時の勢いはどうしたのー?」
地面に這いつくばるミス・ファイアを1人のスーパーヴィラネスが嘲笑う。
「あーはいはい、なるほど……パペットマスターかー。ヤツの入れ知恵ってことね。つまり、今の貴女を倒したところで何の意味もない、と」
ミス・ファイアは何も語らない。
それでもそのスーパーヴィラネスは1人勝手に納得するように頷いた。
「それならもっと愉しい趣向をこらしたいトコだけど……へぇ、最近後輩が活動してるんだぁ。面白いこと知っちゃった」
「な、待って……っ!」
ミス・ファイアの拳に炎が輝き、スーパーヴィラネスに向かって放たれる。
「ムダ」
だがその炎はスーパーヴィラネスに届かない。
それどころかその矛先を変え、ミス・ファイア自身の身体を焼いた。
「待っててね、ハイビスカス少女隊♪」
放課後。
コザ銀天街。
「覚えてなさい! ハイビスカス少女隊!!」
「もうシュールストレミングとか持ち込まないでよー!」
逃走するイタズラ3人娘を見送り撤収の準備をしているその時、アーケード街に一つの人影が現れる。
「ハイビスカス少女隊、だよね?」
人気のない中で響く声。
「うんうん、だよねぇ。君たちだ」
3人が答えるより早く人影は言った。
「誰?」
「待て……」
「ああ、いちいち調べなくていいよ。私の名前はプロフェット。もちろん本名じゃあないよ」
「プロフェットって……まさか」
その名を3人は知っていた。
今朝、あげはから聞かされていたのだ。
ミス・ファイアへの襲撃――その犯人が収容所から脱走したスーパーヴィラネス、プロフェットによるものだということが。
「やーがミス・ファイアを倒したばー!?」
「そ。私を捕まえたミス・ファイアにリベンジしに行くのは自然の流れでしょぉ?」
「それでわたし達に何の用なの!?」
「貴女達、後輩なんでしょぉ?」
「どこからそんな情報を……」
「だからってなんだばー!」
「どうやらミス・ファイアは万全じゃあないみたいでね。彼女に力を貸したパペットマスターもいないっていうし……ならもうかわいい後輩の未来を潰すしかないじゃない」
「つまり、戦うつもりって訳だね……」
せせりは静かにバーベナストレートを構える。
それに倣うようにしじみはスプリームトリスメギストスを、たてはも両腕を掲げた。
とは言え、3人の表情はどこか強張っている。
「緊張してるかな? ミス・ファイアですら倒せなかったから仕方ないよね」
そう。
そしてプロフェットを倒したと言われる過去の戦いでもパペットマスターと呼ばれるスーパーヒロインの力を借りてのものだった。
つまり、いくら3対1とは言え勝ち目は……。
「でも、やらなきゃ。ミス・ファイアの為にも、がんばるんだから!」
「プロフェットの能力は未来予知だと言われているぞ。勝てるのか……?」
「考えても仕方ないさー! たっぴらかす!!」
さすがはハイビスカス少女隊の鉄砲玉。
たてはが一気に地面を踏み込み、プロフェットの懐に飛び込んだ。
「全力一撃ー!」
豪快な一撃はプロフェットに容易くかわされる。
「そこだ!」
避けた瞬間を狙い、しじみは幻想弾を放った。
だがそれも当たらない。
「行くよ、ロケットハート!!」
ダメおしのせせりの一撃。
それも紙一重でかわされる。
「何だ? 今の感じ……」
攻撃が外れことにしじみは違和感を覚えた。
と言うより、
「攻撃の軌道が少し逸れた……ような」
「いつも言ってるラグとか回線の類のものじゃないの?」
「現実世界にラグも回線もねーよ。いやまぁ、正確に言えば状況を把握してから脳が信号を――」
「そういうのはいいから」
「沢山殴ればわかるはずさー!!」
畳み掛けるようなたてはの連撃。
それをプロフェットは容易くかわし、受け流し、涼しい表情をしている。
「読みやすいねぇ君ぃ。真っ直ぐで分かりやすい」
「本当だよな! お陰で援護射撃も――しやすい! インパクトファクターッ」
しじみの攻撃も案の定避けられる。
しかし、しじみの狙いは相手に当てることじゃない。
インパクトファクターの効果はそう――周囲に強烈な衝撃を与える幻想弾!
抉った地面から波紋が広がる。
そしてプロフェットの足元が――揺れない!
「何だって!?」
「ソッチの想定内はコッチの想定内。つまり無意味なのさぁ。そして――」
プロフェットは上空を見上げた。
「太陽の、フレアシャーベット!」
そこにいたのはせせりだ。
身軽さを利用した超跳躍からの奇襲攻撃。
だが完全に――読まれている。
バーベナストレートは虚しく地面を抉った。
「いやぁ、派手だねぇ」
服についた土埃を払いながらも楽しそうに笑みを浮かべる。
「全然当たらないっ」
全ての攻撃を先読みされているような感覚。
そう、まさに予言者の名の通り。
「だぁもう、やってられんさー!!」
怒りに任せたたてはの一撃は当然当たらない。
だが――
「ッ!!」
地面を激しく砕いた一撃。
「当たった……?」
その一片がプロフェットの頭部を打ち付けた。
「……予想以上のパワーだね。ちょっと痛かったわぁ」
「ベジェトルカ!!」
「全力粉砕!!」
その一撃にヒントを得たしじみの指示。
それに答えるたてはの一撃は、地面を抉り破片を無数に、弾丸のように弾き飛ばす。
逃げ場も無いほど豪快な一撃。
その渦中にありながらプロフェットには――
「ダメだばーよ!」
「効いてないよ!?」
一歩たりとも動かないまま、その全てを回避していた。
「あれだけの量、あれだけの密度で攻撃したんだ……少しくらい当たってもおかしくないはず」
もしも予言者の名の通り、未来予知が可能ならばあの場所が安全地帯だということは見抜けたのかもしれない。
だが、たてはの一撃が命中することもないだろう。
「あの2つの攻撃にどういう違いがあった!?」
そこで引っかかったのは最初に放った幻想弾の一撃。
そして何故か効かなかったインパクトファクター。
しじみのアーマー、ブルーソーサラー595は正確な演算能力と探知能力、仲間との情報共有能力を持つ。
つまり、しじみが狙った場所を的確に狙い着弾するはず。
だが、それが外れた。
それはつまり――
「ある種のバリアのようなものを張っている……?」
普通、それだけ強力であれば視認できたり何かしらの反応があったりするはず。
「それが無い……ってことは特定条件で強力な効果を発揮するタイプ?」
そしてたてはの放った攻撃の違い。
偶然と意図的。
そういうことだ。
「意図した攻撃の方向を変える……?」
しじみはスプリームトリスメギストスを構える。
「ツィーチュカ、ベジェトルカ、合図で射線を空けろ。それまでプロフェットを引きつけるんだ!」
「いーよー!」
「らっしゃー!」
せせりとたてはが畳み掛け、相手の動きをよく観察する。
例え相手が未来予知と錯覚するほどの先読み力があったとしても、人体的に、そして物理的に不可能なことはあるはずだ。
そこを狙う。
「今だ!」
せせりとたてはが射線を空ける。
「ランアップ・シューティングスター!!」
放ったのは無数の閃光。
その閃光が過ぎ去った後――無傷のプロフェットがそこに立っていた。
「君、良い読みするねぇ」
しじみの読みは当たっているようだ。
それだけじゃない。
出会った時からの言動から恐らくプロフェットは――
「心を、読むか」
「心を読むって――考えてることが全部筒抜けってこと!?」
「ああ。ヤツは自分で言うように未来予知の能力はない。けど心を読む能力とコッチの攻撃の軌道を変える能力――その2つで未来予知をしているように見せかけていたんだ」
しじみがそう考えたのは以前のミス・ファイアとプロフェットの戦いを分析したからというのもあった。
パペットマスターというスーパーヒロインの名が冒頭から当所するが、彼女の異能力は他人の身体を操る能力。
つまり、ミス・ファイアの身体を陰から操り、ミス・ファイアの意図しない行動をさせることで相手の心を読む能力を突破したのだ。
「心を読むだけなら、上手く立ち回れば打ち破れるはずだが……」
「もう1つ、よくわからない能力があるんだよね……意図するとか意図しないとかどういう基準なんだろう」
「つまりはだ、オレがプロフェットを狙って撃つ。それは明確に"意図した攻撃"だ」
「当然、防がれるよね」
しじみが最初に感じた違和感、そしてせせりとたてはがどれだけ攻撃を加えても全く命中しない理由がそれだ。
「さっきのベジェトルカの攻撃やオレのインパクトファクターでもわかるように、その攻撃で発生する副次効果も本人が"それを狙ってやった"場合には回避できるらしいな」
「つまり、狙わないで相手に攻撃を当てるってこと……?」
「だぁもうよくわからんばーよ!! つまり、何も考えずに殴ればいいさー!」
長々とした話に頭がパンクしかけたたてはがそんな叫び声を上げると一気に飛び出した。
「な、待てバカ!!」
しじみは思わずそう言うが、実際問題たてはは想像以上のバカだった。
「何も考えない、わーならイケる! なんくるないさー!!」
強烈だがデタラメな拳打がプロフェットを襲う。
「何も考えなければいいかぁ。一理あるわぁ。だけど、そんな単調な攻撃当たるわけないでしょうに」
そんな挑発にも構わず、たてはは心を無にして殴り続ける。
信じるのはその場その場の直感。
どこを狙うとか、相手を倒すとかも考えない。
暴れるために暴れる!!
「すごいすごい。同じような対策を取ってきたヒロインは何人かいるけど、勢いだけならナンバーワンねぇ」
プロフェットはそんな暴風もものともしない。
心を読む、そして意図した攻撃を逸らす。
その2つの能力はプロフェットの強みだが、彼女はそれだけに頼りきってきたわけではないというのがよくわかる。
その身のこなし、目の配り方、単純な肉体戦闘に於いても高水準だった。
「さすがに飽きてきたし……決着つける?」
呟くと右脚を思いっきり蹴り上げる。
一撃で吹き飛ぶたては。
それでもめげずに立ち上がり、殴りかかる。
「タフねぇ……」
暴れるたては、いなすプロフェット。
それは硬直状態に見えたが、やがて事態が動き出すこととなる。
たてはの攻撃の隙を突き、一撃を加えるプロフェット。
しかし、彼女は気付いた。
「隙が、減っていってる……!?」
プロフェットから攻撃を仕掛けられるタイミングが明らかに減っていっていた。
時間が経てば立つほど、勢いを増していくたてはの豪腕。
「心も……読めないッ」
たてははただ無心で、いや、野生的な感覚だけで戦っていた。
それでいて研ぎ澄まされていく攻撃。
「ベジェトルカのイルゼが高まっていってる」
「うん、感じる……もしかしてベジェトルカの特性!?」
「ベジェトルカの特性ってもしかして……考えなければ考えないほど強くなる、とかか!?」
「ぜらぉらぁぁぁああああ!」
たてはの高まりは最高潮に。
強烈な右腕の一撃がプロフェットを吹き飛ばす。
「がっ……!!!!」
「っしゃぁぁぁああああ!!!」
たてはな右腕を高々と掲げ、勝利の雄叫びを上げたのだった。




