不死の誕生②
前回と同じです
「はぁ…久しぶりに研究発表だと思ったんですがねぇ…
やはり他の研究者の発表は面白くないですねぇ…
もっとこう…血の騒ぐような…そんな面白い発表をする人はいないのでしょうか?」
男は一人、前に出て発表を行う研究者を退屈そうに見ていた。
退屈が過ぎたのか手を後ろで組んで足を組んでいる。
そんな彼を誰も注意はしなかった。
それには理由があった。
前回彼が出席した発表会で、誰かが彼を注意した。
彼は自分に非はないと言い張り、そのまま注意した研究者を論破してしまった。
その研究者は、沢山の実績もあり、周りからは一目置かれる存在であり、それを自負していた。
だからこそ、彼が行った行動は批判され、周りから避けられるようになったのだ。
ふと、周りを見渡すと、自分の右隣りに自分とよく似た体勢で発表を聞いている人を見つけた。
前に参加していたときには見なかった顔ですねぇ…
私が出席していない間に新しく入ってきた子でしょうか?
とはいえ…あの体勢…昔の私とそっくりですね…
あのしつこい研究者が絡んでこないことを祈りましょうか…
そのまま少しの間彼女を見ていた。
見た目はぼさぼさの髪。きっとくしもろくに通していないだろう。
黒縁でレンズの少し大きい眼鏡。
二重でくっきりとした目。
少し真ん中が上がっている猫のような唇。
きっと、髪の手入れをして、化粧もすれば可愛くなるだろう。
らしくない…ですねぇ…一人の異性にここまで魅了されたことはあったでしょうか…
まさか…ねぇ…
『次は…三上優君前へどうぞ。』
自分の名前が呼ばれたので、異性に魅せられた目を擦り、重たい腰を上げる。
どうせ、自分の研究は誰にも理解されないですしねぇ…
私が的外れなのではなく、周りが私に追いついていないことを早く気付いてほしいものですねぇ…
いつもと同じ様に、端的に、そして明確に、自分の主張したいことを真っ直ぐに。
できるだけわかりやすいスピーチをしたつもりだった。
しかし起きる拍手は少しだけ。それもいつものことで、彼は慣れていた。
だが、今回は少し違った。
一つ、大きな拍手。
しかも、割れんばかりの音で。
誰もかれもが、その音の元を探した。
壇上にいる男も例外ではない。
そして、ついに見つけた
ぼさぼさ髪の黒縁眼鏡
あの女だった。