表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

婚約破棄られお嬢様with自称タイムスリップ息子


 身に覚えのない罪に問われ、婚約者である王子に追放を言い渡された。その経緯について、多くは語るまい。

 本来ならば悲嘆に暮れるべきなのだろうけれど、追放先へ向かう道中、行き倒れの青年をうっかり馬車に乗せてしまったせいで、それどころではなくなった。


「まったく、こんな美人を追放するなんて、あの馬鹿王子どうかしていますね」

「はあ、どうも……」

「ま、そのお陰で母上はこれから父上と出会い、恋に落ちるわけですが」

「へえ、そう……」

「そして2年後、僕がおぎゃあっと誕生するわけでして!」


 きっつい。


 青年は私の姿を認めると、なぜか自分は未来から来た私の息子だと主張して、行き倒れとは思えないほど元気よく、ゴキゲンな妄想を語りだした。

 春の陽気が恨めしい。きっと彼は、頭に花が咲き乱れてしまった類の人なのだろう。馬車の中逃げ場はなく、さりとて助けた人を放り出すわけにもいかず、私は青年の異次元トークに付き合わされる羽目となった。

 身分を明かしていないのに、どうして私のことを知っているのかと訊ねたら、「そりゃ母上ですから」とあっさり返された。怖い。


「時空魔法に失敗し、この時代に落ちてしまった時にはどうなることかと思いましたが、こうして母上にお会いできるとはなんたる僥倖。運命もなかなか粋なことをしますね」

「やっぱり人違いじゃないかしら」

「僕が母上を間違えるはずないじゃないですか。お喜び下さい、僕は貴女の息子ですよ」


 ……うわぁい。


「——それとも、僕が未来の息子であるかどうか疑っていらっしゃる?」

「そうね、疑うよりもう少し手前の段階にいるわ」

「なんてこった……」


 青年は端正な顔を悲しげに歪ませながら項垂れた。その横顔を見つめても、時を越えた母子の絆は芽生えてこなかった。


「……確かに、僕を信じられないのも無理はありません。僕はどちらかと言うと父上似。おまけに足が長くてハンサムだ。こんなイカした男が未来の息子だと言われても、びっくりしちゃいますよね」

「貴方の自己評価の高さにびっくりだわ」

「こうなったら父上と確認して頂く以外に方法はないな。さあ、先を急ぎましょう」

「えっ。貴方まさかついて来るつもり?」

「はい。僕、お金ありませんし」


 私に集るつもりなの? 助けてもらっておいて、なんて厚かましい。親の顔が見てみたい。


 ……でも、まあいいか。

 どうせこの先、予定などないのだし。


 彼と一緒にいれば、少なくとも涙を流す必要はなさそうだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 自称息子さん~、自分のことを色々としゃべって大丈夫なの~? 主人公がその気になれば、自称息子さんの父親を避けて他の人と結婚することも可能なんですよ。 自分の存在が消えてもいいのなら別ですけど…
[良い点] ポジティブすぎる息子と、失意の中でも冷静に突っ込む母親の会話に吹きました。テンポが良いです笑 [一言] 短編で終わってしまうのは寂しいです。続きが読みたい…!!
[良い点] 可愛らしいお話しで、ほっこりしました! [一言] 主人公はきっと幸せになるに違いない!と思いたいです。お父さんがどんな人か知りたくなりました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ