冒険者という職業
「マジすかああああああああああああああああああああああああ」
「はい、マジです。次の方がお待ちですので、こちらへ」
ヴレイは受付人に待合室につれてこられた。
「ん~なんかもっと違うのを想像してたんだけどな」
癖の多い赤紫の髪をわしゃわしゃしながら頭を掻き、ため息をつく。
「リザードマン、まぁいいや。それよりこの鱗もどるの?」
スゥゥウウ
「あ、戻った」
「多分変化して戦ったほうが強いだろうし、戦闘中は変化しっぱなしかなー」
そう言って検診所を後にし、冒険者団体及び冒険許可区域のあるシンクロス州.第3市まで向かう。
移動手段はタクシー。この世界のタクシーは国内共通で国が運営している。道路には信号はなく、個々の車同士でネットワークが構築され、どの車がどこを通るかが瞬時に判断される。そのため乗務員はおらず、お金さえあれば行先を示すだけで国内どこにでも行けるのである。家庭の車も同様に運転は必要ではない。
──1時間後──
冒険者団体シンクロス支部に到着。受付に向かう。
「あのー、冒険者申請したいんですけどー」
「はい、冒険者申請ですね。かしこまりました。では、証明チップをかざしてください」
「はい」
ヴレイは自分の右手を機械にかざす。
この世界では生まれてすぐ、右手に証明チップというものを入れられる。それを専用の機械にかざすことによって、その人の情報が瞬時にわかるというものである。国が運営している施設には証明チップ感知機がだいたい置かれている。ヴレイの場合は生まれた後で入れられた。
「あっ、そういえば自己情報更新してません」
「なにか、自己に変化がありましたか?」
「はい、これが診断書です」
大きいリュックのポケットから、さっきもらった診断書を取り出す。さっきの検診所は国営ではないため、自己更新はできなかったのだ。
「かしこまりました。ではこちらで更新いたしますね。えーと、診断結果が爬虫類のリザードマン系統っと。人型になれるリザードマンはまぁいますけど、常に人型なのは珍しいですね」
「えぇ、まぁ」
「はい、では再度右手をかざしていただけますか。ついでに冒険者申請も承諾しますね」
────そうか、これで僕も冒険者か───
ヴレイは心をはずませる。
「では、一応冒険者適性が大丈夫かのテストをさせていただきますね。こちらへ」
ヴレイが連れてこられたのは、何かのコクピットのようなものがたくさん並んだところ。
受付人が、そのパネルをいじる。
「はい、こちらのVRで簡単な戦闘テストを行ってもらいます。相手の魔獣は、すごく弱く設定されているのでさほどのことがないかぎり倒せるはずです。」
そう、この世界にはVRというものが存在する。意識を電子機器につなぎ、仮想空間で行動することができるというものである。
「わかりました。変化とかってどうするんですか」
「そうですね、変化状態の方が強いのでしたら、変化状態で初めてもらえば状態認識するので」
「わかりました」
ヴレイは自分の体に集中する。
────何気に全体変化するのは初めてだな───
ヴレイの体から鱗が生え、骨格が変化する。
「……あなた、本当にリザードマン?」
「……どうなんでしょう」
通常のリザードマンは鱗があるのは当然で、骨格もさほど人間と変わらない。大きさが少し大きいくらいで、あえて言うなら頭の形がまるっきり爬虫類というところか。しかしヴレイの体はそれとはまったく違っていた。
足は、獣の走るのに特化した形の骨格。胴体は妙に人間らしい形で、腕は猿類のような腕力の高く器用に物を扱えそうな腕。頭が、獣と爬虫類のいい部分を合わせたようなかっこよく、どこかかわいくもあり、とさかみたいなものが生えている。全体的に見ると何か物足りない形だ。その肌は全て、異常になめらかで艶めいている赤紫の鱗に覆われている。
「あ、これ大きくなってたら服破けてたじゃん。それに足の形変わったから短い服でよかった。あと尻尾も出てたら危なかったな」
ヴレイはそんな安心をしながら自分の体を眺める。
「え、なんじゃこりゃ」
VR機の腰掛の金属に反射した自分の頭を見て驚く。さらに、
「え、こっちのほうがなんじゃこりゃ」
自分の胸元を覗くと、両性別特有の少しだけ膨らんだ胸は無く、赤紫の半球が胸元に埋まっていて、その上にV字がかぶさっているような感じだった。
「え、なにこれ」
あまりにも不可解な自分の体を見て驚きを隠せないヴレイ。
「とても珍しいのはわかりましたが、とりあえずテストを済ませてしまいましょうか」
ヴレイは受付人に言われ、そうですねとVR機器を頭に装着する。
「では、リンクします」
─────仮想空間に意識を移動─────
来たのは草原、目の前に一体オオカミのような魔獣が見え、手元には剣がある。
───目の前の魔獣を討伐してください───
視界にメッセージが表示される。魔獣が近づいてきた。
「よっと」
ヴレイは剣を魔獣の頭頂に突き刺した。
───おめでとうございます。これであなたも冒険者です───
─────現実世界に意識を移動─────
「おわった?」
「はい、テストは以上になります。寮とかには入られますか?」
「テスト早いな。あ、お願いします」
「えーでは、12番寮の204号室が空いているので、そこでよろしいですか?」
「はい」
「では、もう一度右手をかざしてください」
「はい」
「これで、寮の登録が完了しました。装備とかはどうされますか?体に合うものが無さそうなので、オーダーメイドするのををおすすめしますが」
「それでお願いします」
「では、こちらの採寸機に立ってください」
「はい」
この世界では、採寸もセンサーで行うことが可能である。
「採寸が完了しました。低級魔金属で作成でよろしいですか?」
「はい」
受付人が機械をいじる。
この世界の魔金属は、低級、中級、高級、と分かれている。通常の鉄などの金属は別にあり、魔獣が生成できる金属を魔金属という。
魔金属は今のところ人間の技術での錬成は不可能である。そのため、未開拓の地域を国が作り、そこに魔獣を住まわせていて、それを狩る冒険者という職業が成り立っている。
箱状の機械が、がたごとと音を出し始めた。
プシュゥウウ
「できました。代金は7000#となります。お支払いください。」
「はい」
ヴレイはポケットから四角い機械を取り出し、受付の機械にかざした。
#とは、このファリス神国のお金の単位である。一応現金も存在するが、ほとんどが電子マネー化しており、使われていない。寮は冒険者であれば無料で泊まることが可能である。
「こちらです。武器もお作りいたしました」
受付人が箱から装備を取り出す。
この箱は装備製造機といって、材料さえあれば、自動で簡単な装備であれば作れる機械である。難しい装備は、装備職人に依頼することで製作が可能である。
「おぉー、これが僕の装備かー」
「これで、受付は完了ですね。では、良き冒険者ライフを!」
「はい!」
────これから僕の冒険者ライフのスタートだ!
創神紀というお話を書き始めるので、こっちはまったくやりません。創神紀書き終えたら、新しく書き直すかもしれない。