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第4話 変化

誤字脱字ないといいなー。


ちょっとストーリー急ぎ過ぎたかな?



 side:カケル



 


「失礼します」


「あぁ、待っていたよ。此方の方が君をお呼びだ」



 


 なんだかんだで典型的理不尽貴族こと、アリスとその友達達から魔法を教えて貰った次の日の朝。学生寮から校舎の方へと行こうとして寮から出た時、一人の教師に呼び止められ、校長室へと向かった。



 そこで待ち構えていたのは二人。一人はいかにも魔法使いと言った風体の老人、この学園の校長である。そして、もう一人の役人のような格好をした男性。この人がその目的の人であろう。



 


「お忙しい中のお呼びだし申し訳ありませんサカキバラ殿。王より言を預かって参りました。至急私と共に来て頂ければ幸いです。内容は機密のためこの場で控えさせて頂ければと」


「わ、分かりました」



 


 そう言って王国の紋章が描かれた馬車で王都へと向かった。まさかの昨日此方へ来て、今日で王へ向かうという高速Uターンである。



 王都が見えてきた頃には昼に差し掛かり、大きな門をくぐり、石畳の大通りを駆け抜け王の待つ城に到着。



 


「剣の勇者様、ご到着されました」


「通せ」



 


 そして、謁見の間へと通される。目の前にはあの立派な髭を蓄えてるけれども、中年のおっさんである王様が豪華絢爛な玉座に腰を降ろして待っていた。



 


「よくぞ召喚に応じてくれた剣の勇者カケルよ。昨日の今日でこのような事態になってしまったことはすまない。で、本日の用件であるが……」




 そこで王は一旦言葉を区切る。




「勇者殿にはまずこの王都より北に行った所にある街アイルミに向かってもらう。そこを拠点とし、そのまた北側にあるノールト大森林の調査をして貰いたい。期限は此方より使いを出すか、そちらの判断でも構わない」


「はっ、了解致しました」



 


 ぶっちゃけ言うと拒否権無いし……この言葉以外言えないのだ。ここで断ったら俺はどうなるんだろうな。牢獄行きか、学園に戻されるのか。どちらにしろ待遇が悪くなるんだろうな。なんとも無いことは無いだろう。


 にしても調査ってなんなのやら。まぁ、今は聴けないな。



 


「でだ、もう1つ伝える事がある。勇者殿の仲間の問題だ。まだ、出来ていないようであるからな。まぁ、時間も無かったしな。仕方がないと思うぞ」



 確かに仲間なんて一人も居ない。まだ学園に一日しか居なかったから。さすがに一日で見ず知らずの人と仲良くなれるほど俺はコミュ力が高くない。


 そんなわけで頷くと少し慰めてもらった。少し、惨めな気持ちを感じる。……あの決闘騒ぎでこれからも出来るか分からないし。


 もしかして、これからずっと一人で旅するはめになるのか……ボッチは絶対やだな。



 王様は手をパンパンと叩き話を続ける。



 


「そこでだ。此方で勝手に仲間を用意させて貰った」



 


 その言葉と同時にタイミング良く玉座の後ろの方から現れる二人の人影。手を叩くのが合図だったのだろうか。そうして表したのは見知った奴らだった。



 


「やぁ、どうも。昨日ぶりだね」


「まさかアンタだとは……」


「なっ……」



 なにを言う。こっちも充分驚いている。それに困っている。にしても、一人足りない。それに詐欺使い魔も。



 まぁ、何を隠そう現れたのはあのアリスとその友達であろうユキであった。


 その二人と俺の反応を見てか王様が呟く。



「ふむ、自己紹介は必要なさそうだな。仲が良さそうで何よりだ」



 


 そう言って王様はニヤニヤとしている。あんた決闘騒ぎのこと絶対知っているだろう。そんなことがあったというのにこの人達と一緒に旅させるとか絶対性格悪いぞ。



 幸い少しだけ魔法の指導で関係修復したからマシと言ったところだろうか。関係、修復されてるよな?



 



 



 



 



 



 side:ユキ



 



 



 


 目の前には気不味そうなカケル君。横には不快そうなアリス。結局はどっちも不快そうだってこと。まぁ、そりゃそうだろうね。けど大丈夫だって。一度目も二度目も三度目もこのメンツ+αでやってこれたから。私が死んだ後は知らないけど。三度目は風の便りによるけど。後は神様知識。



 ちなみに今は謁見の間から出て、出発の準備の最終チェックのために四人だけの部屋で待機している。えっ、一人増えている? あぁ、ソウタ君だよソウタ君。使い魔という立場上あの場には居られなかったんだよ。心配しなくても大丈夫。すぐにあそこに立てるようになるさ。




「……………………」


「……………………」




 にしてもさっきからみんな沈黙を保っている。別にそんなになるほどかね。まぁ、原因二人がなんかしら話せば解決することだと思うのだけど。ソウタ君も私もどちらかと言うと関係無いし。まぁ、放っておくわけにもいかないのでアリスに声をかけることにする。



 


「……そんなに気にすることでも無くない?」


「気にするわよ……まさかコイツが勇者だったなんて。しかも、五聖勇者の一人よ。なんちゃって勇者じゃなくて聖剣に選ばれた本物の勇者よ? 実績は無いとは言え」




 確かに、この国の貴族が国際的な立場もある勇者にあんなことを仕掛けたのは不味いかもしれない。けど、まぁ本人達の同意の上じゃん? 大丈夫大丈夫。



 そこでカケル君がアリスの最後の言葉に反応したのか少しぶっきら棒に答える。



「悪かったな、まだ召喚されて二週間もたってないんだよ。で、俺が勇者だったらなんか変わるのか?」


「……まぁ、決闘なんて仕掛けないわよ。後は対応? 「疑問形なんですね」うるさいわよ使い魔」


「まぁまぁ落ち着いて」



 


 色々とヒートアップしては面倒なので落ち着かせる。ソウタ君がとてもかわいそうである。


 するとカケル君は話の流れを変えようと此方に顔を向けて口を開く。



 


「そう言えば気になったことがあるんだが……いや、別に大したことではないんだが。お前らいつここに来たんだ? お前らは昨日普通に居たはずだが。あの途中で消えたオレンジの奴ならここに居ても頷けるが……てか、あいつは居ないのか?」


「あー、私達は夜に使者が来てそのまま夜の内に王都に来たんだよ。エレナは元々こちらに用事があったから今回の旅には同行しないよ」


「なるほど……すまないな。それにあいつは一緒ではないのか」



 


 夜の内に移動されられた事に対するものなのかわざわざ頭を下げるカケル君。いや、気にすることじゃないよ。確かに少ししか寝れずにちょっとだけ眠いけど。


 にしても、知ってることなのに対策出来ないって辛いんだよね。昼寝は授業をサボることになるし。



 


「いやいや、大丈夫だよ……このくらい平気さ。ね、アリスにソウタ君」


「はい、勿論です」


「ん、まぁそうね。貴族たるものこの位耐えられなくないわ。非常時はもっと大変な時があるんだから」



 


 ソウタ君もアリスも特に体調は悪くなさそうだ。


 それしてもなんだいカケル君よ。エレナの事が気になるのかい?




「にしてもカケル君。カケル君はエレナが居た方が良かったかな?」


「い、いや別になんも問題はない。ただ……」



 


 私のニヤニヤした顔から察したのか心外だとでも言わんかぎりの顔で慌てて言う。そんな風に嫌がらなくても……。




「ただ?」


「アリスの保護者が居ないとなるとな……」


「なるほどね」



 


 確かに言えてるかもね。たった一日二日で私達の関係を把握するとは……恐ろしい勇者様だね。



 そんなことを考えていると扉をノックする音がし、同時に扉が開く音がする。



 


「失礼します。剣の勇者様方、出発の準備が完了致しました。勇者様方の準備が完了次第ご案内致します」




 その言葉にカケル君は私達三人の顔をひとりひとり確認する。それに私達は無言で頷き答える。 



 


「……大丈夫だ、今すぐ行ける」


「ではご案内致します。此方です」



 


 やって来た案内人の後を追い、この部屋を出ていく。



 さてさて、またこの王都に戻って来る時は厄介事があるんだよね。いっそのこと今すぐ逃げ出した方がいいんじゃないかと思う時が良くあるけどまだ今回は駄目だ。


 まだ、カケル君達と居なければならない。頭の中では分かってるけどやはり展開を知ってる人間からすれば避けたいことには変わりはない。






 



「では、お気をつけて」


「はい」


「我等王国貴族一同は勇者様のご活躍を期待しております。無事、帰還されますように、くれぐれも」


「勿論です」



 


 こうして私達は国の紋章がついた馬車に乗り込み、夕方になる手前、多数の貴族に見送られながら王城から出発し、王都を後にした。



 



 





 


「なぁ、これからどうなるんだ?」


「それはどういう意味で?」


「全般的に?」



 


 王都を出てから北へと向かう街道を走ること数時間、ふとカケル君はそんな事を聞いてきた。これからの日程が知りたいのかな?


 ちなみにアリスとソウタ君は仲良く眠っている。やっぱりキツかったみたいだね。あんなこと言ってたのに身体は素直のようだ。



 


「あぁ、そろそろ宿場町につくと思うよ? そこに泊まって今日は終わりかな。そんな感じで昼はずっと馬車で進んで夜は宿場町や都市に泊まってというサイクルを五日間位でアイルミに到着かな」


「五日間もかかるのか。まぁ、この速度じゃ仕方がないのか、アイルミという街が遠すぎるのか」



 


 そんな風に馬車の窓から外の景色の流れる速度を見て言う。まぁ、馬車の速度だから。自動車とか比べたらそりゃあね。まぁ、自動車擬きもあるにはあるけど。本格的に使うとなるとねぇっていうレベルだから。勿論開発元は魔導院である。ちなみに窓の外はもうほとんど暗くなりかけている。



 


「 まぁまぁ、この馬車でも充分速い方だからさ。まさか一人馬に跨がって行くわけにもいかないしね」



 


 この馬車と馬は国所有なだっけあって充分すぎる位にはハイスペックなのである。十日間休まずに馬車を牽かせても大丈夫な馬とサスペンションやゴムタイヤなどしっかりと備えられてる馬車なのだから。ファンタジーと科学の融合馬車である。勿論調教・開発元は魔導院。忘れてはならないのが御者もプロということ。


 さらには国の紋章のおかげで関所や街のチェックは素通りである。さらにさらに盗賊等から襲われにくいだけでなく、魔物避けも備わってるときた。こんな素晴らしい馬車は他に無いだろう。




「あ、でも別の道を使えば少しは短縮出来るかもね」


「本当か!?」


「今回は使えないけどね。余り安全な道じゃないから。明日からは商隊や巡回警備隊と合流して一緒に出発するからね。それなのにわざわざ別れるなんて」


「そっか……やっぱり魔物とかが出てくるのか?」


「まぁ、そうだね。他にも勢力の大きい野盗だったり、イカれた宗教だったりこの王国の紋章に屈しない強かな奴らは意外と多くてね」


「後者は別に襲ってくるわけではないよな?」



 


 魔物避けも強力な魔物には効きやしない。盗賊も自信がある奴は余裕で襲ってくる。一番厄介なのが宗教関係である。ただひたすら勧誘に熱心だったり、国教として認めてもらおうとしたり。そんなの一介の貴族には無理な話である。もうすでに国教はあるしね。



 


「勿論、襲ってくる宗教なんていたらそれは宗教じゃないね。賊だよ賊。やってくることと言えば勧誘だよ」


「まぁ、確かに……宗教としては普通だな」


「はは……馬車囲んで動けないようにして脅迫じみた勧誘が普通? 勇者様は随分とイカれた世界に居たようだね」



 


 おかしいな、カケル君は私の知ってる地球とは違う地球から来たのかな? そんな車囲んでなんてデモ隊位でしょ。後はマスコミかな。



 


「!? い、いや違うぞ! 詳しく知らなかったからだ!」


「うん、まぁそれぐらい知ってた」


「なに!?」



 前々回、前々前回と同じやりとりだからね。まぁ、なるべく守った方がいいからっていう理由だけどね。少しでも違ったりして未来が変化してしまったら私の知っていると利点の意味が無くなってしまう。さすがに一字一句全ての言葉を同じようにとは記憶力的に無理だが、どんな内容の会話かぐらいなら再現するに越したことない。


 まぁ、強制力がある以上大丈夫だと思うが。



「勇者様方ー! 宿場町が見えてきましたー!」



 そんな風にカケル君と話していたら御者の声が連絡用の伝声管から伝わる。いつの間にか宿場町に到着らしい。窓を開けて前方を見てみれば町の篝火の炎が見えた。



「今日はゆっくりと休もうか」


「あぁ、長時間馬車に乗るのは辛いな」



 これでそこら辺の馬車乗せてやったらどんな反応をするんだろうか。きっと馬車に一生乗りたくないと言うだろう。現代の車の乗り心地に慣れた人間があの酷さに慣れるわけがないよ。




 



 


 まぁ、そんな感じで翌日、その次の日も、またその次の日もと順調に旅路を消化して行き……いや、いろいろとあったけど。それは取り敢えずいいや。


 アイルミには次の日で着くといった最後の宿場町でそれは起こった。



 それはもう馬車から降り、貴族等高位の者専用の宿で夕食に舌鼓を打ってた時のこと。明日にはアイルミに到着ということで完全に気が緩んでいた時だった。



 

「勇者様一行はおられますでしょうか!」




 食堂の扉を勢いよく開けて入って来たのは全身傷付き、着けてる鎧はもう役に立たないほど壊れた、血塗れの兵士だった。



 どうしたんだろうか。おかしい、本当におかしい。何が起きているんだろう。……私はこんな展開知らないのだが。


 


「お、おい大丈夫か! しっかりしろ」


「なにがあったの!!」



 


 アイルミの事がある以上、今この宿を使用してるのは私達以外居ない。どこに好き好んで危ないとこに行く貴族や神官がいるか。あ、私達ですね。



 そのため、カケル君とアリスがその兵士に慌てて掴んでいた食器を放して駆け寄るのを尻目に私は必至に答えを探していた。


 ちなみにソウタ君は血塗れの姿に驚いたのか食べ物を口に入れようとした状態で固まっていた。ソウタ君は水魔法使えるんだから一番行って上げた方がいいと思うけどね。



 まぁ、それはいい。本当に何が起こっているんだろうか。私には分からない。この状況が分からない。……白フードの知識を探っても求めている答えは見つからない。




「急報です! アイルミの街が包囲されました!」




 は? パードゥン?


 包囲された?


 誰に? 


 なんで?



 本当に知らない。



 今までにこんなことは無かった。一回も経験してない、そんなことは…………。




「敵は不明。ただ分かることは魔物です! 魔物に包囲されました! 守備隊や冒険者の力によって持ち堪えていましたが今はどうか……うっ」


「しっかりしろ!」


「ちょっと! 無理しないで、落ち着いて! 『癒しの光』!!」



 血を吐いて崩れ落ちそうになる兵士を勇者が慌てて支え、アリスが即座に回復魔法を唱える。神に仕える神官ではないので効果は低い回復魔法しか使えないがそれでも無いよりマシである。


 兵士の顔色が少し良くなったようにも見えるが血塗れのためハッキリとは分からない。




「……いつもより数が圧倒的に多く、魔物達が街を、人を襲うという指向性をハッキリと持っています。私があの包囲を突破するのにも少なくない犠牲が出ました。その後ここに辿り着けたのは奇跡でしょう」


「そんな……」




 アイルミの街の近くの森ノールトでは数年おきに魔物が大量発生する。今回もそんなことだと当初は考えられていたのだがいつもより多い。


 そのため、その調査と対策の為に私達と勇者が送られた。原因は王国の北の国、アストロス帝国の策略で、無事勇者カケル君がそれを解決するというのが私の知ってる前回の人生までの今回の事件の流れだ。これは白フードの知識で裏打ちは取れている。



 しかし、その中にこの兵士がそんな急報を手に来るなんてことは無い。


 アイルミの街が包囲されるほど魔物が大量発生しない。



 何かがおきている。私の知らない何かが。これは既にどうしようもない事実である。



 四度目にて今までの流れが崩されている。私の手ではなく、誰かの手で。



 これは不味い。非常にマズイ。未来が変わる。得体の知れない何かに変わる。少なくとも『世界の宿命(ストーリー)』の道筋が変わる。



 帝国軍の数が増えた? いや、それでも包囲されるほど魔物を操れる魔導師や召喚出来る召喚士(サマナー)を動員することは不可能のはずだ。


 じゃあ自然発生の魔物が混じってる? 影響されてる可能性も捨てきれない。そもそも一度目や二度目、三度目で魔物の大量発生は起きていたのか? 帝国軍だけだったら、今回はたまたま大量発生も同時に起きたのなら……。



 そんな偶然の変化で人生計画がパァ? ふざけるな。



 同じ事を辿るんじゃないのかよ、強制力が働くんじゃないのかよ。



 そう、だから私は死ぬ運命しか無いんじゃないのか。



 ……本当に変わってるんだな? 



 運命は変えられるんだな?




 


 いや、待て。一旦落ち着こう……。

 正直言ってこの四度目。白フードに言われたから、可能性があると言われたから、なんとなくやってやろうと思ってた。惰性に近いかもしれない。だから、少しやる気を出してた反面、心のどこかで諦めていたんだと思う。結局無理なんだろうって。


 だから、別に二次創作の転生主人公のように幼少期に、今まで色々と動き回ってたわけではない。知識を持っていたのに、だ。自分を殺そうとする意志を潰そうと思った。けれども、まだ自分は幼いから。何も出来ないから。後少し、もう少し、大きくなってから。そんな風に過ごして結局何もせずにカケル君が、ソウタ君が召喚された。結局もう変わらないんだって。


  ただただ、いつもの人生をなぞっていた。そうさ、三度目で諦めた奴なんだからそれがお似合いだったさ。


 だから、実は今回も何も変えるつもりはなかった。生き抜くつもりなんてのはなかった。


 でも……。



 

「だから、アイルミの街を、人々を、どうか、助けて下さい!」



 

 血塗れの姿のまま、ただ私達に助け求める一人の兵士の姿。掠れた声で。街で魔物に怯えながらも、どんな理不尽にも我慢し、死の恐怖に耐え、助けを待っている人達のために。


 その必死な姿は当然憐れだ。そして、力の無い者が他者に求めるそれは、この無駄に金が使われた装飾が輝くこの食堂の場ではとても滑稽だ。



 けれども、その姿を見て。命を掛けたその姿はどんなに憐れで、滑稽でも、どんな場であろうとも、今の私には強く響いた。


 今回。私が何もせずにも変わった結果が現れた。例え、偶然だとしても未来が変わる可能性を見せつけられた。

 ……混乱は当然する。この四度目で今までなにも変化は起きなかったから。




「剣の勇者様! 貴族の方々、どうか!」



 


 もちろん、私が、自分が何もしなかったから。


 そんな中、自分以外の人達はこの今を、何も知らずに、全力で生きている。この手あの手で必死に生へとしがみついている。


 それが全部私が知っていることだったというのに。


 それが今初めて崩れた。私はこんなの知らない。全て予定調和の中で終わるんはずなんだ。けれども、人は殺されまいと生へと全力疾走する。死ぬ運命に抗わんとする。



 四度目の腐った私に、その姿は酷く輝いて見えた。



 そして、燃え尽きていた心に生きようとする炎を与えてくれた。




「まかせろ」


「もちろん」


「ぼ、僕もです」



 


 カケル君にアリス、そしてソウタ君までが言う。




「もちろん、まかしてよ」



 


 私だってそこに混ぜて欲しい。いつもの、傍観者じゃなくて、ただ塗り絵を指定された色で塗るような奴じゃなくて、自分の色で塗るようにしっかりと混ぜて欲しい。




「あ、ありがとうございます!!」



 


 もうやめだ。こんなんじゃ私は本当にいつも通り死ぬ。


 世界が変わっていくんだ。ならば、それを私が直させない。強制力なんて壊してやる。せっかく世界の方から変わったんだから。



 だから……



 

 まずは、アイルミを救わなきゃね。


 


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