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第2話 人生の第一関門

誤字が無いといいですが。


 トネミスア王国私立魔法学園はトネミスア王国、いや世界屈指の魔法学教育機関と言っても間違いないだろう。

 もちろん、魔法学以外でも最高レベルであることには違いない。それは各学科に合った設備、様々な施設、個性豊かな教師陣にて裏付けされている。

 また、森の中に位置するが、その分自然にも触れ合える上に人が居るところでは出来ない実験も可能である。ちなみに王都から馬車で約一時間半の場所である。

 そのため、寮もしっかりとある。ほとんどの生徒は貴族であるが、寮による共同生活を楽しんでいるようだ。まぁ、部屋は一人部屋だが。ブルジョワめ。

 

 さて、そんな学園であるが、貴族しか行けないような金の掛かる学校であるため貴族の子女が多いのに対して平民の生徒は非常に少ない。商人の子か、特待生か、その位ものである。それ以外で学園にいる平民は使用人程度である。これはそこそこの人数だが。


  また、ご想像は付くだろうがいくら学生で協調性が大人より高い貴族のこどもであっても、平民の生徒と貴族の生徒の間の仲は決して良くない。

 幸い、ここでは正式な役職を持ってないうえに生徒であるため平等とされているので殺傷事件等の最悪の事態は起きないが、その分些細な事から大きな事まで日々争いが絶えない。

 

 そんな争いというのは様々な形で起こる。ただの喧嘩から決闘。武力だけでなく、言葉を使う争い、口論……舌戦。

 まぁ、聞こえが良かったりしても所詮は子どもの争いであるが。

 

 そんな争いであるが、本日の争いは貴族と平民の争いというわけでもない。しいて言えば貴族同士、されど平民同士の争いである。もっとも、正しいのは異世界人同士なのであるが。

 

 

  

 

 

 

 

 

 side:ユキ・トア・ミケルト

 

 

 

 

  どうも皆さんこんにちは。いや、もしかしたら「おはよう」や「こんばんは」かもしれないね。まぁ、誰に話してるかは分からないが。

 

  さて、私の目の前では二人の少年が対峙している。他には野次馬しかいない。

 

 片方は剣を手に持つ転入生、もう片方は使用人の服を身に纏う拳を構える少年。

 

 つまり、主人公二人である。彼らは何故か、本当に何故か決闘と呼ばれる貴族の伝統ある闘いをすることになった。いや、騎士の伝統かもしれないが。

 

 

「で……本当にいいの?」

「む、無理です! 僕にはこんなこと出来ません!!」

「てっ言ってるけど、ご主人様?」 


 

 慌てるソウタ君、ため息を吐くカケル君、対照的な二人である。


  

「何言ってるの! 貴方はやるしかないのよ! 使い魔は使い魔らしく戦いなさい!」

「だから戦えないですってば!」

 

 

 何故、アリスがこの時決闘をさせたのか。これは後日聞いたことであるがなんでも、カケル君がソウタ君に似てるかららしい。まぁ、それはどちらも日本人で黒髪なので納得。それに加えてカケル君がソウタ君より強いと感じたからだとか。

 意味が分からないが自身の使い魔の方が下だというのが気に障ったから、らしい。こんなので争いを起こすのが貴族という生き物です。ちなみに本日のループで初めて知ったこと。

 

 その後も言い合いは続くが、「わかりました、やればいいんでしょ!」と結局ソウタ君が折れる。

 なんか、ソウタ君の性格の変化を毎回ここで感じるんだよね。物理的に干されると敬語が取れる、主人と仲良くなるんですね、1つ賢くなりました私。

 

 さて、冗談はその辺にしといてと。大きな声で。


 

「では始め!!」


  

 真面目な話この決闘の審判を任されてる以上しっかりせねば。 掛け声と共に動き出す両者と思いきや、カケル君だけが動き出す。ソウタ君はその場に立ったままだ。

 

 

「ふんっ」

「あわわわっ!」

 

 

 カケル君が大して力も入れずに振った剣を慌てて大袈裟に避けるソウタ君。見て分かる通りまったく戦いに慣れていない。しかし、それを見逃す剣の勇者であるカケル君でもない。

 ダルそうにしながらも直ぐ様追撃を放つ。それをまたもやなんとか避けるソウタ君。あ、今思ったけどこれ真剣だね。刃引き無しの剣っぽい。 いや、正しくは勇者の剣か。当たったら不味いから頑張れソウタ君。

 

 

「これでなら……!!」

 

 

 勇者君の追撃が止まると同時に体勢を直し、拳を振るう使い魔君。

 しかし、それは余裕の表情で受け止められる。カケル君にとって殴られるのは予想内で追撃を止めたのはわざとということだ。

 それでも、何度も何度も拳を振るうソウタ君。しかし、軌道を変えようが速度を変えようがその攻撃は毎回剣の腹で受け止められる。

 

 

「やはり、止めといた方がいいんじゃないか?」 

「止めたら明日にはあの世だよ! 多分だけど!」

 

 

 自分の後方……主人の方から感じられるマイナスのオーラを感じとったソウタ君は勇者君の慈悲に対して再度拳を振るうという選択をする。

 やばいな……アリスが怖すぎる件。こちらにもその感情が飛び火しているように感じる。それは置いといて、と。

 

 しかし、その拳はまたもや余裕の表情で受け止められる。それはさながら演劇の如く、それがあるべき姿だと正しく決められているかのように。

 

 これが異世界の一般人と召喚されし異世界の一般人の差である。まぁ、勇者は元から一芸に長けている者が召喚されるらしいが。ちなみにこのことは白ローブから与えられた知識にあった。なんでこんなことを知っているのか。奴は本当に何者なのか気になるところである。

 

 

「お前も苦労しているんだな」

「お前は苦労してなさそうだねっと!」

 

 

 そんなやり取りを続けながらソウタ君は拳を、時には蹴りを混ぜながら振るうがその全ての攻撃は勇者の剣によって止められる。完全にソウタ君は遊ばれているようだ。

 また、拳と剣を合わせたところで両者の動きが再度止まる。 


 

「いや、俺だって城での対応に苦労したわ……まぁ、いい。この辺にしとくか」

「どういうことさ?」

 

 

 カケル君の言葉に疑問を持つソウタ君。しかし、その答えは身をもって理解することになる。

 

 

「こういうことだよ」

「っ!」

 


 カケル君が今までとは明らかに違う、力の込めた一撃を放つ。幸い剣の刃には当たらないようにしてくれたらしい。声にならない叫びを上げながら野次馬の囲いギリギリまで吹き飛ばされるソウタ君。それに会わせて広がる野次馬の輪。その痛々しい姿に対して打撲とかすり傷以外の傷は見当たらない。


  

「うぅぅぅ……」

「諦めたらどうだ。あんな暴君に従う義理は無いだろう。あんたがどう足掻こうが結果は変わらない。そして、俺には勝てない。負けることしか出来ないんだよ」

 


 この理不尽な事態に、実力の差に、身体中の痛みに顔を俯かせるソウタ君にカケル君は一歩一歩ゆっくりとした足取りで近付いて行きながら話す。

 

 確かに、ソウタ君にここで踏ん張る義理はない。けれども、その選択しか残されていないのだ。使い魔であるからこそご主人様という拠り所がいるが、使い魔でなくなってしまえば身を寄せる場所は無くなってしまう。異世界に来てまだ二日目。右も左も分からない状況なのだ。

 しかし、そのことをカケル君は知らない。同郷の人間だということすらも気付いていない。顔付きだろうとなんだろうと気にしていないのだ。ソウタ君は自己紹介で気付いてるかもしれないが。

 ただ、カケル君にしてみればアホ貴族が勝負を仕掛けてきて、使用人に戦わせてるようにしか見えないのだ。異世界モノのテンプレ的な1イベントに過ぎない。

 

  もし、ソウタ君が紅茶を溢さなければ使用人の服を借りることは無かったのだから、カケル君も学生服ということで気付いたかもしれない。

 

 全ての出来事に意味が無くはない。どんなことでも少しは、雀の涙ほどには意味があるのだ。例え、偶然からでも必然に繋がる要素の可能性を秘めていることになる。これ程厄介な事は無いだろう。


  

「───っ!」

 

 

 悔しさからか、弱りきったその拳から出血することを構わずドンッと地面に叩きつけるソウタ君。あの、激しい性格をしたご主人様のお許しが無い限り止めることは許されない。

 きっと、使い魔になったことを後悔しているであろう。そもそも、そのことに関して言えばどうしようも無いのだけれど。まぁ、それもそろそろ変わるはず。

 

 

「何やってんのよ! あんた使い魔の癖に負けてるんじゃないわよ! しゃきっとしなさい!」

「アイツ……この状態でまだ言うか。救いようの無い主人だな。お前もなんか言ってやったらどうだ」

 

 

 外からソウタ君に激励するアリス。それに対して呟く剣の勇者カケル君。そこ手に持つ剣は座り込むソウタ君を守るように下げてられており、弱者を守ろうとするその姿はまさに勇者である。……散々痛めつけた後だけどね。

 

 

「……いえ、いいご主人様なんです」

「なに?」

 

 

 聞いた事に対して、その意外な答えに思わず信じられないといった顔付きでカケル君は問い返す。

 その対象となったソウタ君は先程までの傷が嘘だったかのように立ち上がる。事実、その身体からは傷が少しずつ無くなっていっている。そして、全身が輝いていた。これは魔法が使われた時の状態に似ている。何らかの干渉が行われたのは明らかだ。

 

 しかし、そのことはカケル君はまだ知らない。魔法に触れた事が無い異世界人に分かるはずがない。けれども、外からの干渉を受けたこと自体は理解出来ないはずがない。

 

 

「っ! これは……傷が治っている……。明らかに外部からだ、審判!」

「確かに、この場にいる誰かがやったのだろう。決闘に第三者が介入することは好ましくないね」

「そんな……」

 

 

 問われた以上、審判を任された限りしっかりと答えなければならない。確かに第三者が介入することは好ましくないどころか違反だ。反則である。

 でも、例外というのは存在する。だから、野次馬は黙っているのだ。そんなに心配そうな顔をしなくてもいいのだよソウタ君。

 

 

「けれども、これは第三者の行いではない。つまり、当事者がやったことだ。何も問題はないよ」

「なっ! どういうことだ! どう考えてもコイツがやったはずは無い。ほぼアイツだろう!」

 

 

 ビシッとアリスの方を指差すカケル君。うん、君も分かってるじゃないか。だから、当事者がやったことなんだよ。

 

 

「君は決闘のルールについてあまりにも詳しく無いのかな? 彼女も当事者であり、彼も当事者なんだよ」

「それはこの決闘問題についてならそうだろうな。けれども、今はこの決闘自体においてだ」

 

 

 そんなこと分かってるさ。まぁ、召喚されてまだ約一週間の未教育勇者様には元から期待していないけどね。

 これは説明するしか無さそうだ。

 


「うんうん、分かってないね。いや、これを分かっていると求めるのは酷いというものかな? 実はさ、彼は使い魔なんだよね。使い魔というのは主人の一生のパートナーとも言える存在。そんな存在が一人で戦う? そんなの馬鹿げた話しさ」

「なに!? 使い魔だと? どう見ても人間じゃないか! ……いや、どちらにしろ関係ない。それに馬鹿げたことだと?」

「あぁ、そうさ。馬鹿げたことだよ。本来使い魔というのは主人の力が有ってこそ成り立つもの。それが主人無しに戦う? あり得ない、使い魔は主人と合わせてやっと1つの戦力となるんだ。ならば、決闘においてそれが考慮されてなければ可笑しいだろ?」

 

 

 そこまで言い切り、カケル君を見つめ直す。この子は決して馬鹿じゃない。ここまで言えば分かるはずである。

 

 

「それは……つまり、まさか……」

「うん、ご想像の通りだと思うよ。使い魔の決闘において当事者は使い魔のみならずその主人も含む。これは先に言っておかなければ覆らない。決闘における掟さ。つまり、君は使い魔と主人の二人を倒さなければならない」

「っ!」

 

 

 今度はカケル君が悔しそうに剣を地面に突き刺す。勢いよく振り下ろしたためか、将又(はたまた)勇者の剣であるためか、予想より深く刺さる。少し砂が飛んできた気がするが気にしないことにする。

 しかし、それでも正しくに物事を判断出来るのがカケル君の良いところ。特に癇癪を起こすこともなく突き刺した剣の方から顔を上げ口を開く。

 

 

「……そうか、理解した。教えてくれてありがとう。では、また始めようか!」

 

 

 言った瞬間アリスの方へと走り出すカケル君。その顔にはすでに悔しさ等消えており、ただひとつの獲物を狩ろうとする狩人そのものの表情である。


 

「あ、あんた! つ、使い魔なんだから私を守りなさい!」

「は、はい!!」

 

  

 その獲物となったアリスはそれを見て自分がどのような立場に置かれてるのかを把握。自分が接近戦になっては勝ち目は無いと理解出来てるアリスは直ぐ様ソウタ君へと指示を出す。慌てているからか、恐怖心からか噛みまくりだが。

 

 その命令に対して急いで対応するソウタ君。しかし、既に走り出しているカケル君に間に合うはずが無い。

 

 走りながらも剣を上に上げ始めるカケル君。そして、間合いに入った瞬間勝ちを確信して降ろす。

 

「残念だったな、これで終わりだ!」

「まだだわ、『再召喚』!!」

 

 

 カンッと剣が弾かれる音。剣を降ろした場所は白色に輝いている。それに防がれたと察したカケル君は反射的に一歩下がる。一部の空間等に干渉する特殊な魔法を発動した場合、一瞬の間その魔力の発生した場は干渉不可能な場所となる。それを今回防御として利用したのだ。

 

 その特殊な魔法である『再召喚』。ただ、魔力と引き換えに使い魔を自分の元へと召喚出来る魔法である。だから、カケル君はこの魔法自体に警戒する必要は無い。ちなみに連続使用は不可。一定時間のクールタイムが必要だ。

 

 

「また魔法か!」

「ただの『再召喚』よ、行きなさいソウタ!」

「任されました!」

 

 

 白い光が晴れた後にはその場に何も無く、既にソウタ君は前に移動している。そして、カケル君へと拳を突き出し、手を開く。

 


「さっきの、回復されただけじゃないんです。おかげで自分の中に何かがあることを感じられたんですよ。使い方は自然と分かりました───『流水』!!」

「くっ!?」

 

 

 ソウタ君の祝福(ギフト)として授かった水魔法の一種が発動する。

 

 『流水』──名前の通り流れる水を生み出す魔法である。威力は人を流せる位にはある。見たこと無いので分からないが鉄砲水と呼ばれるもの位だろうか。量は術者の魔力や裁量次第である。


 基本、魔法は杖等の媒体が無い限り、手の平から放たれる。体内の魔力を放出する器官がそこにあるからだ。他の所からも出せるが高い技術が必要だ。

 

 よって、ソウタ君の発動した魔法は極単純にその開いた手から放たれる。その先にはカケル君。

 考えて欲しい。人は鉄砲水に耐えられるか。答えは否。勿論、不可能だ。耐えられるのならばそんな名称はつかない。

 


「ガハッ……」

 

 

 放たれた水はカケル君の胸骨を圧迫し、挙げ句身体中を包み込みながら野次馬の囲いギリギリまで押し流す。

 そして、周辺へと広がった、その生み出された水はその場所に溜まるため泥となり、動きを鈍くさせる。

 

 

「決まったわ……よくやったわねソウタ。褒めて遣わすわ」

「ありがとうございます? なんか上から目線な気が」

「事実よ。あんたは使い魔、私はご主人様なのよ? 当たり前でしょ」

 

 

 この後、「そーですね。僕はやっぱり使い魔ですよ」と不貞腐れたようなソウタ君の言葉を聞いて終わるかと思われたこの戦い。

 


「ユキ、もう勝負は着いたでしょ? 私達の勝利を宣言して頂戴」

「……いや、それはまだ早いかな?」

 

 

 審判としてその判断まだ下せない。何故ならばカケル君はこんなもので負けたりはしないからだ。

 

 

「そうだよね、カケル君?」

「──そうさ、よく分かってるじゃないか審判!!」

「「!?」」

 

 

 押し流された場所から激流に苦しんだ人間とは思えない程の動きで驚きを隠せない二人に近付いていく。

 

 

「俺はこの程度じゃ負けない!!」

 

 

 そして、剣を横に構える。輝き出す刀身、その輝きはカケル君の手、腕までを覆う。

 

 

「喰らえ、『光の剣』!!」

「『光の盾』!!」

「わっ!?」

 

 

 光の刃が二人に襲いかかるが、アリスの唱えた魔法で事なきを得る。しかし、カケル君は諦めない。盾を切り裂こうと力を込める。それに対抗して魔力を更に込めるアリス。そして、初めての魔法で疲れ果てながらもそれを見守るソウタ君。

 

 さてさて、この鍔迫り合い。

 未来を知っている者から言わせて貰うとはっきり言って終わらない。千日手である。

 最終的にはどちらも肉体と精神の疲労で同時に事切れるのだ。気絶の方ね。死ぬ訳ではないなから。そろそろじゃないだろうか。

 

 剣の勇者はまだまだ数日特訓しただけの勝負など初心者の剣士。騎士団長直々に手解きされたからここまで戦えてるだけである。

 片や本来戦うはずも無い貴族の侯爵令嬢。ただ、その家系的遺伝の膨大なる魔力に物を言わせて、そして、家の名誉にかけて後は気力で踏ん張っているのだ。

 

 何故、こんな二人の争いが長続きし得よう。この場に戦い等に慣れてるやつはいない。決闘と言えど命を落とす可能性はあるのだ。どこの世界に命のやり取りに慣れてる学生が居るのだ。え? 騎士学校? 士官学校? そんなの別ですよ。


 

「「うぅっ……」」

「え」 

  

 そして、実際に今同時に倒れる。まぁ、肉体と精神の疲労と言っても魔力切れが一番の原因だが。残ったソウタ君の慌てようは凄い。

 

 

「あわわわ……うっ」

 

 

 そして、ソウタ君も混乱と疲れにより気を失う。どれだけ気が弱いんだと思うかも知れないがそれがソウタ君なのである。どこのどいつだ、この子をこんな世界に喚んだ奴は。……一応魔力切れでもあるのだけどね。

 

 えっ? アリスだって? いや、違うさ。彼女はただ召喚術を唱えただけ。選んだ奴の話だよ。それは分からないって? 確かにそうだ。本当に誰なんだろうね。

 

 

「ユキ、もういいんじゃない?」

 

 

 今まで一切口を開かなかったエレナがこの惨状を見て声をかけて来る。確かに、もう勝負の行方はハッキリとした。

 

 此方を見てる野次馬のためにも、倒れている三人のためにも言わなければならないね。

 

 

「この勝負、両者気絶により引き分けとする!!」

 

 

 結局この勝負、両者の思惑をどちらもが破り、どちらもが目標を達成出来なかったという、何とも言えない引き分けという結果に落ち着いた。

 

 では、この決闘に意味が無かったのかと問われるとそんなことは決して無い。まず第一にこれが無いと勇者PTは出来ないのだ。アリスとソウタ君の関係は微妙なままになるし、自分達三人+ソウタ君とカケル君の仲はあっさりしたものになる。切っ掛けは重要だよ? ちなみに三度目の時の経験より。第二に、分かったと思うがこれが無いと私は殺される。 

 

 つまり、この決闘。発生した時点で私の思惑は半分達成したということ。ちなみにどちらかが勝って、もう片方が負けたりしても駄目っぽい。なんでかは分からない。ただ、その事だけは白ローブ知識にある。本当にアイツは何者だ。あの自称神め。(二度目。

 

 だから、引き分けになった時点で私の思惑のもう半分も達成し、この決闘についてひとまず安心出来るのだ。

 

 

 

 つまり、私の完全勝利と言えよう!

 

 

 

 小さくガッツポーズしているとエレナに変な目で見られたのはどうしてでしょうか。こちとら人生掛かっているんだよ!

 

 

 

 

 

 

細かいことは気にしないで下さい(二度目?



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