プロローグ 四度目の異世界人生
二年位前から書いときながら全然ストックが無い作品。思い切って投稿。細かいことは気にしないでください。
side:???
この世界の学生服を着た幼馴染のアリスが使い魔召喚の呪文を唱える。
この大きめの部屋に3つある内の1つ、アリスの使用している使い魔召喚の魔法陣が光輝き始める。そして、その魔法陣の中心に光の粒子が集まり1つの形を形成する。
至ってよくあることだ、その光の形が人型をしてなければ、だが。
それは何故か、人型の使い魔はとっても希少なのである。基本、使い魔は例外を除き知能が人並みか人未満であるが、人型の使い魔は知能が高い上に考え方も人に近いものになる。そして、人型は他の型に比べ全般的に能力が高い。
使い魔というものはこの世界のどこかや、使い魔達の世界、さらには天界、魔界等と言った場所に暮らしている生き物に呼び掛けて使い魔になって下さいと頼み込み、喚んでるのである。
人が頼まれただけで他人の従者のようなものになるだろうか、下手したら奴隷である。
自由な環境から人に従わなければならない環境へ行くだろうか。それも、自分で生きる術を持つ者が。
答えは否。
真っ当な感性の持ち主なら、なるわけがない。
だからこそ、そのことを十全と理解に至れる人型の使い魔はとても少ないのである。
しかし、ここで問題が生じる。そのような理由であれば、人型ではない使い魔も本能的なもの、またはその高くはない、けれども低くもない知能で呼び掛けに応じてくれないのではないか、ということだ。
確かに人型ではない使い魔も強く、賢い者はいる。というより、使い魔は基本普通の生き物よりある程度強いし、知能も高い。でなければ、使い魔は求められないし、人並みの知能を持つとは言われない。
しかし、それを解決することが出来る方法がまずひとつ。使い魔より術者が強ければいいのだ。戦って使い魔に勝てば使い魔を従わせることが可能であるからだ。まさに自然界の掟。
こういうところは使い魔が気の毒だと思うかも知れないが戦う前にそのような主旨の契約を相互同意の上で結び、勝負となるのである。つまり、使い魔がその主人の実力を見抜けなかった、分からなかったということなので自業自得である。
次に使い魔側からの申し出である。つまりは、自ら使い魔になってくれる者達だ。これは本能的なものらしく、故に基本的に使い魔の世界に生ける者達に限る。しかし、呼び出せる使い魔は先の理由からほとんど彼らであるため、使い魔召喚の儀における流れはこの場合が一般的である。
また、使い魔の世界の生き物ではないのもいるが、それは本当に少ない。変わり種である。
また、普通に会話での交渉も、向こうが最低限の知能を持ち合わせている場合に限るが、可能である。
さて、話を戻すが人型の使い魔についてである。使い魔の可能性の内、それで呼び出せるのは天使や悪魔、加えて神々といった方々である。他には高位の精霊や妖精、過去の英雄ぐらいである。
そこから、戦ったり交渉したりの始まりだ。これらは使い魔の世界で行うため完全にこの世界に使い魔が現れる前に呼び出した本人、つまり術者で主人になる人は今まさに本来ならこの世界から意識を持っていかれる、のだが……。
今の状況はというとアリスは驚きながらも、意識をしっかりと保ち、魔法陣をその大きく開いた目で見つめている。内心、気持ち的な意識は飛んでいるかも知れないが。
つまり、アリスは人型の使い魔を戦闘や交渉もなく召喚したのである。使い魔側がアリスの使い魔になることを承諾したということである。ただ単に使い魔自身が弱すぎて抵抗する術が無かった可能性もあるが……。
このことを見て、周りの教師やクラスメイト、護衛と術の補佐者はとても驚いている。アリスと同じように呆然としながらだ。まぁ、中には口も開けて涎を垂らしている気の弱い奴もいるが……仕方ないであろう。
私もこうなることを知らなければ、彼らと同じようにマヌケな姿を皆に見せたであろう。使い魔に関してある程度の知識を修めている者であれば、尋常ではないことだというのは、疑問に思う余地すらない光景なのだから。まぁ、私のことなど誰も注目していないと思うが。
まぁ、とにかく使い魔召喚は最終段階を終え、遂に光は収まりその人型の姿を曝け出す。
そこに居たのは天使?
しかし、その答えは否。
では悪魔?
それも否。
なら妖精? いや違う、ましては精霊でも過去の英雄でも神でもない。
そこに居たのは科学技術が発達し、魔法は存在しない世界からこの魔法のある世界へやって来た高校生、そしていきなり使い魔になる不運な少年。
白崎 蒼太である。
見た目は黒い懐かしい学生服を着ており、黒髪のイケメンである。しかし、その整った顔は一度大きく目を開き、驚いた後には状況がいまいち把握出来ないのかとても不安といった表情が浮かんでいる。
それはそうだ。周りの人達が興味津々に蒼太のことを見ているのだから。しかも、蒼太から見れば、いきなり知らないところへ連れてこられたのである。
加えて、向こうの、自身の常識に従えば、謎のコスプレ集団といったところだろうか、ある種の画面の向こう側でしかお目にかかれないようなものを身に纏う者達の、数々の目が自分を見ているのだ。その気持ちもひとしおであろう。
まぁ、その謎のコスプレ集団こと彼らの気持ちもまた推して知るべし。凄いのが来ると思ったら特に凄そうにも見えない謎の服を着た一人の少年、教師等大人達から見れば教え子と同じぐらい、生徒から見れば同じ年ぐらいなのだから。
まぁ、元々は只の人間だが彼はこの世界に来るときに強力な力、祝福ギフトは貰っているから充分強力な使い魔ではある。
んー? そんなことより気になることがある?
あぁ、そろそろ気になるかも知れないと思っていたよ。
私は誰かって? 何故蒼太自身が話しても無いことを知っているのか。何故、こんな冷静にしていられるのか、こうなることを知らなければ、とはどういうことなのか。
それは───
私はこの場面を見るのは四度目だからである。
もう一度言おう、
私、ユキ・トア・ミケルトはこの場面を見るのが四度目だからである。
ふふふ、そろそろ私自身の自己紹介が必要なようだ。
私もそこの呆然としている蒼太君と同じ世界からこちらの世界、『アストラル』へ来たのである。違う所を言えば私は『転生』というところだろうか。彼は『召喚』だが、それも使い魔な。
彼は私の幼馴染、アリス・トア・ネメシスの従者または奴隷が一生約束されているのだ。まぁ、精々頑張ってくれたまえ蒼太少年。
さて、私の四度目とはどういう意味か。
それは私がループと言った能力。いや、祝福ギフトを受けていたからだ。まぁ、転生した時のチートといったところだ。
まぁ最初はそれも分からなかったが、生れたのは大国トネミスア王国の三大貴族の1つ、『幻想』と呼ばれて有名な『原初』の力を持つミケルト侯爵家。
ミケルト侯爵家の祖先は初代トネミスア・トクルア王の時代まで遡る。ちなみにトクルアは王族の姓である。初代の名は……今は置いておこう。
私の祖先は他の二人、流星のネメシス侯爵家と虚無のステイル侯爵家の祖先と一緒に初代トネミスア・トクルア王に仕え、トネミスア王国建国を支えた人なのである。
建国という大事業の失敗を恐れずに王達と建国とその前後の激動の時代を過ごした人である。建国前は『幻想』を生かし、王の文字通り手となり、足となり、建国後は今にも伝わるその頭脳の明晰さを活かし政治を司った。
この国、いや世界中でその名を、四人を知らぬ者はいない。そして、この四人の死後もこの国は栄え、大国となり今に至る。大分省いているが、いつか詳しく語られる日が来るであろう。
そして、『原初』の力と呼ばれる能力。これはとても強力な能力で世界を変える力を持っているとされている。この世界にその存在は数えられる程度と言われ、始まりは定かではないものの、幾つかの家系に、先祖代々様々な形の差異はあれど、受け継がれるものだ。
トネミスア王国にはこの能力を持つ家系が4つある。そう、今出てきた『幻想』のミケルト侯爵家、『流星』のネメシス侯爵家、『虚無』のステイル侯爵家のトネミスア三大貴族、そして『時空』のトネミスア・トクルア王家である。
この4つの原初が揃ったからこのトネミスア王国を建国出来たと言っても過言ではない。そして、大国として繁栄出来たのも。
そして、このミケルト侯爵家が持つ、文字通り王の手となり、足となれる『幻想』の力はとても素晴らしかった。否、素晴らしいと思っていた。
幻を見せることができ、それを現実のものへと変化させることができる。それには小規模という条件がつくが。まぁ、幻だけなら大規模に出来る。実を言えば条件がもっと細かいのだが、それ満たせば実体化を大規模にすることも可能だ。
まぁ、これで攻撃手段にもなる。勿論、普通の魔法だって使える。
変身が出来る、これは自分が見たことあるもの、記憶しているもの、そして性転換である。
一応自分が知らない、記憶していないもの出来るのだが高い想像力が必要だ。そのため、出来ないという括りで良い。
また、変身するとその姿によるがいろいろと制限がかかることがある。どういうことかと言うと能力、スペックの低い生物に変身するとその生物が実際に行うことが出来る動作は楽に出来るのだが、できないことをその姿のまましようとするとその行動に適切な姿、本来の姿でやるときの倍以上体力を消耗したり、できなかったりする。
そして性転換だが……これは基本的なスペックはそのままで性別が変わるだけで特に困ったことは無い。いや、あるにはあるのだが……今は良い。
そもそも変身全てにおいて言えるが、『幻想』の幻の能力で姿をそのように見せれば変身する必要は無いようなもんなのでこの変身という能力のデメリットはあまり気にならないが……勿論、使うだけのメリットもある。つまりは、場面に応じて適宜選択である。
そして、最後にミケルト侯爵家の人間自体の能力、先祖からしっかり受け継いでいるのか頭の出来が非常に良い。なんというか、遺伝子に感謝しかない。そんなわけで聡明叡智を地で行く現当主は、父親は宰相を務めている。
それでまぁ、そんな良い環境に私は転生をしたわけだったから私は最高と思った訳だ。
順風満帆な幼少期、学生時代をすごし、1つの創作物の主人公のような素晴らしい未来が待っていると思った。
いや、別に主人公じゃなくても良い、些細な登場人物のようでもよいから、ただただ幸せな人生が過ごしたかった。早死した前世より長く生きたい。幸せに過ごしたい。そんな、思いを胸に抱き生きていた。
しかし、その素晴らしい未来はこの学園で今まさに行われている使い魔召喚から……いや、少し前の出来事から破滅の未来へと進んだ。本当に終わる寸前までは順調だったから尚更気付かなかった。この使い魔召喚の異常はそれが原因である。
この後も順調だと思っていた。しかし、実際は違った。それは何故か。
実は使い魔召喚の少し前、王城では各国で順番に行われる五聖勇者召喚の儀が行われていたのだ、世界の脅威と呼ばれるものを感じとって。
王族の『時空』の力で行う勇者召喚。五聖勇者は全員『希望』と呼ばれる原初の力を持つ。たまに新しい原初を持つらしいのだがそれは置いておく。さて、このトネミスア王国で召喚された勇者だが。
名を榊原 翔
使い魔蒼太君と同じ年で異世界へと拉致られたイケメンな高校生。とても正義感に溢れており、己への危険を顧みず世界を救うことを誓った少年。
この少年もこの世界を学ぶという名目でお忍びではあるものの、この学園へとやってくる。そして、いずれこの世界を救うために五聖勇者の一人、剣の勇者として旅立つ。
しかし、この少年によって私の人生計画は大いに狂った。
いや、この少年自体は一先ず問題ではない、この世界に勇者が召喚されたことが問題なのだ。
カケルがたまたまその勇者に選ばれただけ。
別にカケルではなくても問題である。
それは、どう問題なのかというと……。
世界には『世界の宿命』というのがある。
これは一度決まったら例え、過去に戻っても同じ未来が待っている。というより、そのようにする強制力が働く。まぁ、これは過去に戻った時、新たな平行世界にでも移動してれば大丈夫らしいが。
そして、私はループという能力を持っていると説明したと思う。死んだら人生の最初からやり直し出来る能力だ、……いや違うな。
これは同じ世界でやり直しをしてるらしい。平行世界には行ってないようだ。
さっきも言ったが『世界の宿命』というのがある。
つまり、同じ未来が待ってるということだ。そのようにする強制力が働く。
まぁ、簡単に言うと私のループという能力はやり直してはいない。同じ人生、手順を繰り返すだけ。はっきり言って私の場合『拷問』だ。
それは何故かって? 普通、幸せな人生が何度も味わえると思うだろ? そんな、人生幸せには最初からなれないなんて自分に厳しい考えをしてる人は少ないはずだ。
これの何が問題なのか、それは────
私が『世界の宿命』において『脇役』だったということだ。
それだけでは分からないだろう、
死ぬ運命の『脇役』という役割だったのだ。
脇役というのはどんな『物語』にもいるやつだ。これが私の置かれた境遇を説明するのであれば、驚くほどぴったりなので使う。
つまり、言ってしまえば私の幸せに長生きしたいという夢は達成出来なくなった。主人公という幸せな人生が確定している役ではなく、『世界の宿命』に関係なく生きられる端役としてでもなく、死ぬ運命の『脇役』になったから。
何故かって? 誰だっていつか死ぬだろう? そう思うかも知れないが違った。
それは私の一回目の異世界人生、ループを自分が持ってるというのも知らない時だ。私はそれで寿命ではなく、殺されて死んだ。
それがこの世界の『世界の宿命』と世界に、『星の記録』として記録された。
そう、この時から運命の歯車は狂い始めた。
この世界には異世界からの勇者という1人の主人公が現れた。それに、使い魔君という第2の主人公も居る。
私はその時、勇者の仲間という役割が決まった。家柄、立場、年齢等々ちょうどよかったのだろう。
主人公の仲間、『脇役』に確定。その後、死亡。
私は最初は主人公達のサポートキャラ、後は物語沸かせ役、物語を進めるための死亡というところだろうか。そんな脇役が確定したのだ。
所詮、『原初』でも『幻想』では主人公にはなれなかった。死なない脇役にもなれなかった。
まぁ、幻を見せたり、変身したりして攻撃できるぐらいである。そして、王国の未来の宰相。その未来は来ないが、確かに素晴らしかったであろう、はず。
だが、比べる対象が悪かった。向こうは異世界からの二人、その内原初持ちが1人居る。転生、原初だとは言え、『世界の宿命』は現地人を主人公にはしなかった。
私が夢に見た素晴らしい未来は来ない。異世界に来て尚、寿命をまっとうすることは出来なかったのだ。今までの人生、四回殺される感覚……。
どの人生も──────
私が幸せになれる結末にはならなかったのだ。
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