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1:生きている僕達

 

・・・25世紀。人類たちの科学的な進歩は停滞を見せ、また急激な気温の低下による死傷者の発生により人類の繁栄は終わったかに見えた。



 そんな人類が遂に手を出したのは、「人間の遺伝子操作」であった。禁忌とされた実験であったが氷河期へともう一度突入されると予測されていた当時、「人間自体に防寒能力を与える」という名目のもと、その研究は続行された。



 そして25世紀終わり頃。

 当時この研究の最先端にいた「黒羽(くろばね)永戸(ながと)」がついに遺伝子操作により、人間に耐寒性を持たせることに成功させたのであった。

 この技術により人類の少数ではあるが、身体に耐寒性を得ることになった。


 また、別に行われていた氷河期対策技術に対しても、「黒羽永戸」が後に[エレメント]と呼称されることになる新エネルギーを発見したことにより、開発を続々と成功させ、人類は無事に氷河期を乗り切ったのであった。

 

 その後「黒羽永戸」はその姿を忽然と消した。彼は後の人々から「救済者」と呼ばれることとなる。



 しかし、ここである問題が起こる。遺伝子操作が行われた人間の間で産まれた子供のうち、ごく一部の者が特殊な能力を持つようになったのだ・・・。


_______________________


「ここまでが基本的な「旧人類」の歴史となる。・・・お前ら確かにこれは650年も前の話だが、お前たちのご先祖様の話だぞ?もう少し真面目に聞け。」


「だって先生~。[旧人類]の話長すぎませんか~?」

「そうですよせんせー。長すぎまーす。」


 数多くの机が並び、そこに多くの若者達が座っている。その全員の前では一人の大人が人類の歴史について語っている。

 

 ここは[教室]で今は[授業中]。[旧人類]の頃から変わらない[教育]の場だ。


「はぁ、全く。[能力]を持たなかった旧人類は、持っている貧弱な技術のみで人類の危機を脱したんだぞ?尊敬すべきだし、興味深いことも多いだろう。」


「えー?第三次世界大戦の方がまだましですよー。」


 騒がしい教室。その中で一人の男子生徒が笑う。 

「あー。でもせんせー。[旧人類]ってこの教室にもいますよねー。ほら、皆尊敬しないと!」

 

 彼が指し示したのは一人の男子生徒。教室中の生徒がそれを聞いて嗤う。

 先生だけが困り果て、悲しそうな顔をする。

 

「こら!やめろよ。次同じようなことしたら、反省文だからな!!」

「へーい。」


 嗤われた生徒。彼のことを全員が

 

 哀れみ、蔑み、嘲る。

 

 そのような視線を向けた。



 その目線を受けている生徒。


 それが僕、「糸切(いときり) ユート」だ。



 そして、誰もが[能力]を持ち、[能力]を使い生計を立て、[能力]によって人生が決まる。



 それが、今だ。


_______________________


~5年後~

「おーい!ユートーー!」

「うるさい聞こえてるから!ガルフ!」

 

 僕達は16才となり、学校を卒業しそれぞれの道へと進んだ。教師になるもの、食料生産者になるもの。

 そして今目の前にいる長年の友達。「ガルフ・オーリア」のように[傭兵]になるもの。

 皆がどこかに進んで行った。

 

「今日はなんなんだよ。鎧もリフレクターも先週整備しただろ?」

「今日はガトリング!よろしくなー!」

「ええ・・・?あれ凄く整備面倒くさいんだけど・・・。いつまでにやっとけばいいの?」

「明日。」

「バカなの!?」


 僕が進んだのは、[傭兵]や[軍人]の武器や防具を整備する、[整備士]だった。この職についた理由は・・・


「で、どうよ?[整備士]の仕事には慣れたのか?」

「うん、慣れてきたよー。どっかの誰かさんが武器とか防具とか大量に壊してくれるおかげでね。」

「お、おう。なんかすまん。」

「はぁ。もうちょっと大事に使えっていってるのに・・・。あー。うん。仕事にはだいぶ慣れてきたと思うよ。ここでは[能力]は大きく関係してこないからね。」

「ん。そうか・・・。」


 そう、これが理由だ。

 僕達が職業につくには基本的に[能力系統]、つまり能力の大まかな種類が大きく関係してくる。例えば農業だったら、水が出せる能力とか気温を操作する能力とか。

 他にもいろんな能力があって、それぞれ細かく系統で分けられている。そして、その系統によって大まかに向いている職。向いていない職が分けられるのだ。


 例えばガルフの能力は[獣化系統]と言われる系統能力で、獣の持つ力をそのまま人間大に当てはめて使用できるようになる系統だ。

 ガルフに関しては[鷹]への変化が出来る。この能力によって空を飛び、敵を偵察したり空襲を仕掛ける役割を傭兵で活かしている訳だ。




 そして僕の持っている能力は



 [未来視系統]・・・・・・・のはずなんだ。

  



 系統は基本的に赤児の頃に行われる遺伝子検査によって判別されるから、間違ってはないはずなんだけど・・・。

 

 僕は今まで生きてきた中で、一度も能力が発動したことがない。

 その前兆もだ。


 だから、子供の頃はかなり虐められた。強力な[未来視系統]の能力を持っている、ということで期待されていただけ、余計に。

 [傭兵団]の隊長を務めるほどに強い父に、森まで連れていかれ、死にそうな状況にまで追い込まれたりもしたが・・・遂に能力が出ることはなかった。


 だから、職業の中でも[能力系統]があまり関係ない、[整備士]になることにしたのだ。

 まあ、人の生き死にも少なく平和な最近ではあまりよくない職業なのだが。


「まぁ、普通[未来視系統]って言うのは[傭兵]か[軍人]になるものだからなぁ・・・。」

「そうなんだよね。そのせいで職業適性がほとんどダメだったんだから。せめて[身体強化系統]とかだったらよかったのに。」

「あー。あの系統は、別の能力系統のやつでも頑張って鍛えれば、人によっては何とか追いつける能力だからなぁ。」

「そーなんだよねー。折角体滅茶苦茶鍛えたのに、「系統が違うのでこの職業は無理です」って・・・どんなお役所仕事だよ。」


 今まで、能力系統ごとの割り振りで完璧に社会が回ってただけあって、お役所の臨機応変さもゼロだった。

 まぁ、機械の整備は好きだからもういいけどさ。


 

「とりあえず、明日までに何とか終わらせるよ。」

「おう!頼むぜ!!」

「今日は徹夜かなぁ。」

「ほんとすまん・・・。」


 今の世界において、[傭兵]や[軍人]は必要不可欠だ。ガルフがしょっちゅう武器の整備を頼んでくるのも、それだけ厳しい訓練と依頼をこなしているからだろう。


「お金はいつもと同じでいいから。」

「あいよ。あー、ちょっと色をつけとく。」

「え!気にしなくていいのに、仕事なんだから。」

「いいんだよ!大変な仕事だしな!」


 こうやってガルフは何かと気を遣ってくれる。色々とがさつな奴だが、根は良いやつだ。だから、こんな僕にも話しかけてくれる。僕の一番仲のいい友達だろう。

 だが・・・。


「だからって、作業場で寛ぎ始めるのはどうなんだ・・・?」

「まあまあ、細かいことは気にすんな!」

「それ、僕のカレーパンなんだけど。」

「・・・細かいこと気にすんな!!」

「細かくないだろ!!」


 そんなやりとりをしながら、ガルフの武器を整備していく。傷がひどいせいで一回分解しないと・・・。


「なー、ユート。」

「なに?」

「[死の傭兵団]って知ってるか?」

「知らない。なにそれ?」


 [傭兵]はなぜ必要なのか。それは今の世界状況に原因がある。


 今、この世界は2つに分けられている。

 80年前。第5次世界大戦があったあと、残った国は2つだけになった。今、僕達がいる国。[エルセート帝国]。そして、もう一つの国[ガルマニア皇国]。どちらも[旧人類]から[新人類]への移り変わりの途中で産まれた国だった。

 現在、2つの国は現在南北に大きく伸ばされた前線で小競り合いを続けながらにらみ合っている。


 その原因は主に[エレメント]の量にある。


 [エルセート帝国]は島が多く、豊富な海洋資源、そして現在の

主なエネルギーである[エレメント]を作ることが出来る。[エレメント溜まり]が大量に存在している。

 [ガルマニア皇国]は大陸部が多く、その点[帝国]よりも多くの人間が住んでいるが、その分[エレメント溜まり]が少なく、半永久的に出力を保ち続けるのが[エレメント]である以上、その国力の差は倍以上とも言えるだろう。

 それだけ[エレメント]は大きく影響を与えるものなのだ。


 だからこそ[皇国]は[帝国]に攻撃を続けるのだろう。



「そして、皇国が帝国に対抗するため、生み出した生体兵器、それが[魔獣]。」

「それを、帝国から退けるのが[傭兵]の主な役割な訳だ!」



 [魔獣]は様々な動物の細胞や遺伝子から生み出された兵器で、大きな体格、尽きない体力、強力な力を持つ。

 そのため一般兵では対処が難しく、[魔獣退治]を専門とした人達が必要だったわけだ。

 で、その人達が[傭兵]と呼ばれていて、[傭兵]が組んでいるチームが[傭兵団]と呼称されている。


「で、[死の傭兵団]ってなに?」

「噂なんだけどな?その傭兵団はメンバー全員がAランク能力者!一人一人が一騎当千![傭兵団]が通った後には魔獣も皇国兵も生き残れない!だそうだ!!」

「へー。」

「凄いだろ!!」

「ああ、凄いな。()()()()()()。」

「ちぇっ。ユートは夢がないなぁ。」

「夢がないんじゃなくて、お前のせいで余裕がないんだよ。」


 実際いたら凄いだろう。ランクというのは、能力の格付けだ。その基準は[能力危険度]。その能力者が敵対した際、どれだけ危険な相手かということだ。

 上からA、B、C・・・と並び最低がGだ。まぁGランクって言うのは無能力者のことだから実際はいないんだけど。

 いや、僕が近いところにいるけど。


「あのなぁ、Aランクって言うのは、個人と軍で戦ったとしても負ける可能性が高いってことだからな?そんなのが傭兵団で活動してたら噂程度じゃすまないし、まず軍に所属してるだろう。」

「あ、そうだったな。」

 自分が[傭兵]なのにそんなのも分かんないのか?


「そんなのポコポコいてたまるか。というかさぁ・・・。」

「なんだ?」

「ここ!何でこんなにボロボロなんだよ!?中遠距離武器だろう!?」

「いやー。つい近づいて近接に使っちゃうんだよね。」

「バカなの!?というか武器もう変えろ!!」

「えー?だってそれが一番威力高いんだろ?」

「中遠距離で使うならな!近接で使うもんじゃないの!」

「えー?じゃあ作り替えてくれ。」

「[整備士]の仕事じゃないわ!!」



 僕達は生きている。


 世界がどれだけ死に満ちているか、知らず。

 

 世界がどれだけ黒く染まっているか、知らず。


 その魔の手が。近くまで来ていることも・・・。

 こちら、新作となります。


 が!!正直不定期更新になると思います。というかなります。

 

 もう一つの作品の制作に筆者が「飽きた(`・д・´)」となったとき書こうと思いますので、更新はゆっくりとお待ち下さい!


よろしくお願いします!!(*´∀`*)

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