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八握の檻  作者: 田鰻
一部
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1月:探偵少女 - 1

深夜の工事現場には、季節に関わらず独特の冷たい空気がある。


土地は邪魔な草木の大半が取り除かれ、剥き出しの土を晒した空き地となっていた。


すぐ側に道路が走っているが、この時間では通る人も車も無い。


月の隠れた夜である。


申しわけ程度に置かれた背の低いフェンスの下を、どこからか這い出してきたネズミがちょろりと潜った。


――と。


がたん、と音がして、フェンスのひとつが崩れる。


アルミ製のフェンスは、中央からふたつに切断されていた。


ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ


軽い音が鳴る度に、大きめの石や、誰かが投げ捨てていった空き缶などが次々と真っ二つになっていく。


どこにも人影らしきものは見えない。


いや、仮に人影があったとして、人にこのような真似が出来たかどうか。


初めの音に立ち上がって警戒していたネズミが、間近に飛んできた石の欠片に慌てて逃げ出す。


ごどん


重い金属が土に受け止められる音。


遅れて、その金属に後から落ちてきた金属がぶつかる鈍い音。


現場に置かれたままになっていた軽トラックが、荷台部分を横一文字に切断され、バランスを失って傾いている。


奇妙なオブジェを完成させたのを最後に、その現象は止まった。


辺りに、再び静寂が戻る。


遠くの方でバイクの低い排気音が迫り、すぐに去った。


月が僅かに顔を覗かせては、また隠れる。


思い出したように、「ご迷惑をおかけしております」の看板の、上半分が宙に飛んだ。


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