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はじめての ひとりよる、なかま!!

 シンシン、

 森の夜――。


 山を越えるには、黒い森を抜けなきゃいけない。

 決して入ってはいけないと言いつけられていた。

 村の大人たちは、決して入っていかなかった。

 

「さむい……ぃ!」

 

 家に帰る選択肢は無かったにしても、

 せめて厚着の服だけは持ってくるの

 だったと、早くもジワ後悔が始まる。



 禁忌の森にいるザワザワ罪悪感と、

 選択間違えたかもしれないジリジリ焦燥感と、

 これから知らない土地に行ける かもしれない

 妹の約束を叶えられるかもしれないウルウル期待感が、


 ―――胸で ぐるる渦巻い

 て、くうう! 悶絶する。

 


 ヴオーン!!

 ヴオーン!!



 遠くで魔物の群れ

 の、ガウガウ咆哮さけび


 ビックリして、動揺して。慌てて唇をペロ舐め、

 妹の味を思い出して、不敵な笑みを

 ニヒヒ作ろうとするも、


 ―――ギコチなく

 半分しか笑えない。


 

 不安だし、寒いし。

 おなか減ったし。

 クライクライし。

 余裕なかった。

 



 ザク。



 

 大型の獣が土を

 踏みしめる音。


 ビクッ固まり、心臓バックバク。

 真っ暗闇で目を凝らすけど、

 なんにもわかんない。


 双子の三日月の明かりだけじゃ、

 夜の森は人間には優しくない。

 向こうはこちらの様子を

 うかがっている気配。



「ブギャウ!」



 飛び掛かられ、押し掛かられる。

 爪が肩に激しく食い込み、

 痛みが這い回る。

 

「ああ、ここで

 終わるのかな?」


 ―――そんな終わりの予感がした。

 いもうとは鳥に食べられて、


 私が食べて、

 私も食べられて、

 最後に似合ってる。



 悔やむべきは、あの時鳥さんに、わたしも

 一緒に食べられなかったことだろうか?

 鳥さんに食べられたなら、妹と完全に

 ひとつ、鳥さんの血肉となって、


 簡単にあの山の向こうに

 だって、ひとっ飛びできたろうに。



 ……まあでも、妹は私に【 生きて 】あの山の向こうに

 行くことを希望してたっぽいから、私は私に

 出来る全力を出せたんじゃないだろうか?



 ―――もう後悔はしてない、

 ただ、悔しくて しかたなかった。


 たったひとつの妹の願いさえ

 守れない自分に。力の無さに。


 ごめんね、山の向こうに一緒に

 行く約束 守れなかったよ……。


 

「ひぐっ……」



 なんか、妹を失ってから、

 ずっと泣いてる気がするぅ。


 ……そして願った、



 力が、欲しい!



 一瞬 大切にしてきた石が、光り輝いた気がした。

 ……ああ そういえば、この石だけ

 は失っていなかったね。



 そうして私はパッタリ気を失い、

 のんのん無事に、朝を迎えた。

 



======




「……あれ??」


 チュンチュン。

 穏やかな森達


 

 どうやらカラダは新しく傷ついて

 ないし、手足もちゃんとある。


 ガサッ!

 ……!!



「居た!」



 昨日私を襲ったモノ。

 4つ足で白くて、

 かっこいい。

 しっぽ!

 

 目の前に くわえた

 木の実と くだものを

 置き、私の方に押しやる。


 キラキラ

 してる!!



「くれるの??」


 賢そうな瞳で頷く。

 くぅぅ……。

 お腹が鳴く。

 

「ありがと!」


 むしゃぶりつく、

 おいしい♪


 何回か往復して、満足するまで食べさせてくれた。

 満腹はいつぶりだろう?(妹はノーカンだから!)

 ……あれ、記憶にないや。


 満足すると、傍に近寄って来て、ふかふかの毛並み。

 抱きしめると、暖かくて やわらかくて。

 しっぽ! しっぽ! しっぽ!


 張ってた気持ちが緩んで、

 安心して泣いてしまう。

 


 このひとになら、食べられてもいいや。

 でも、その前にお腹いっぱいにしてくれて、

 とってもしあわせだった!


「ありがとね……」


 お礼をいうと目を細めて嬉しそうにする。

 このひとは、獲物の気遣いも出来る、

 やさしーひとなんだ!



「……しっぽ?」


 おかしい、何も起きない。

 ……なにか、おもって

 たのと違う!




======



 

「……てかあなた、

 わたしを食べないの??」 

 


 心外というふうに

 ブンブン首を振る。


「えー! まじですかー!」


 ちゃんと食べてもらえると思ってただけに、

 ちょっとショック!

 

「ほら、ちゃんとお肉なんだよっ??

 きっとあなたのキバで食べやすいんだよ~?」


 胸の前をはだけて無い胸で誘惑してみるけど、

 興味なさそうにそっぽを向く。


 ぜんぜん

 効いてない!



 ……さいですか。


「あ! 分かった!」 


 わたしガリガリだから ちゃんと太らせて、

 油乗った上等のお肉を食べたいんだ!


「そーいうことですかー

 わたしはあなたのものなんですねー!!」

 

 一瞬ものすごく不本意そうな表情を浮かべたけど、

 もうそれでいいや みたいな感じで、

 適当に首をブンブン上下に振る。


「そっかー、そう

 だったのかー」


 

 なんだかんだ森を抜けるまで

 脇を歩いて付き添ってくれた。

 結局、このヒトは優しかった。




 ―――森を抜けると、道が出てきた。

 大人の人間の三人組が、テケケ待ち構えていた。

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