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のこされた ゆいいつのほうほ!?

「ほれ」

「??」


 父は投げやすい大きさに

 千切った手をライラに投げる。



「ひっ!!」


 受け取ってから手だと認識して、

 ライラは思わず投げ飛ばす。


「ああー、僕の手が―!!」


 テーブルの下から激しい

 嘆きの声が聞こえる。

 ああ、この声は……。



「ひ! ひどい……!」

「……っっ!!」


 ライラは悲鳴を上げ、私たちはズルズル

 這い出てきた兄の穴豚姿を目の当たりにする。


 両手両足はモガれ、両目は潰され、歩くたび

 苦痛に顔を歪めながら、4つん這い

 でこちらにズリ寄る。

 ズリリ。

 リ。



「ひいっ!」


 私がこの前サれそうになった未来。

 ―――これからされる現実。

 ……私達は捕え

 らえられた。



 パッタリ

 気を失う。




======




「おや? 片目だけ治ってるぞ?」

「治してくれるなんて、なんて

 いいお友達を持ったの!?」

「潰す楽しみが増えたなっ♪」


 何やら楽しげに話し合う男女。

 目が醒めると、


「幸せに成りたくないの??」

「自分を不幸にすると、周りの

 人も巻き込むことに なるんだぞ??」



 ―――また出会ってしまった。

 またサレてしまうのだろうか。



「や…や…」


 ああ、単純に地獄に舞い戻ってしまった。

 私の人生のすべてを囚われていた家。

 戻りたくて戻ってきたわけじゃない。


 けど一つだけ、前と違うことがあった。

 私の隣には、ソフィアとライラが

 横たわっている。



「あら? お友達が一緒なの?」

「偉い子だ、ちゃんと生贄を持ってきたんだな?」

「そうなの? とっても良い子じゃない……!」

「さあ、お友達を裏切るんだ。今のマチルダには辛いかもしれないが、

 その辛さを乗り越えないと、けっして幸せには辿り着けないよ?」


「「 さあ、早く渡しなさい!!! 」」


 血走った眼差し、理性を奪う怒声。

 ソフィアさんは目を閉じたままだ。


 ……ばればれ だよ?


 けれど、目の端からほおへ涙が流れていて、

 寝たフリをしているのが分かってしまった。

 ちょっと健気な努力が愛おしくて、

 ちょっと かすかに心が微笑む。


 たぶん、私の反応を確かめたいのだろう。

 私の決断を見てみたいのだろう。

 ……それに、今のソフィアでは、

 魔法でも物理でも、私の両親の

 力に勝てるとは思えない。




「ねえ、抵抗しないの?」


 ソフィアに ささやく。

 腕を引っ張っても、力を

 抜いたままでイヤがらない。


「このままだと私はソフィアを差し出

 してしまうかもしれないんだよ??」

「リンが求めることを、私は欲しいよ……?」


 小さい優しいお姉さんは、薄っすらと ふち 目を開けて

 私に微笑み掛ける。このまま引き離されてしまったら、

 もう こうやって二度とソフィアさんに触れて

 いることは出来ないかもしれない。



 ―――だから、手を握って伝え

 たかったことを こそと伝える。



「だいすきだよ、

 ソフィアさん」

「!」


 こんな状況じゃなきゃ、絶対に伝える気はなかった。

 大切な宝石は心の宝箱に大切に仕舞い込んで、

 ―――そんで私一人だけで楽しもうと、

 独り占めしようと企んでたのにぃ……。


 なのに、今のソフィアさん見てると、

 一緒に この奇跡を味わい

 たくなってしまった。


 私の手助けで、この人の魂を

 勇気づけたくなってしまった。




「さあ! 早くしなさいいいい!!」

「これだけ時間かけて、もし、渡せ

 ないとか のたまった日にはあああ」


 逃げ出そうにも、戸締まりは相変わらず厳重だ。

 内側から何重にも釘を打っているから、

 逃げ場はどこにもない。



「リンが望むように

 私はリンを信じる」

「ほんとに私がシたいこと、

 あなたにしていいの??」


 なんか不用心に私を信用して

 きたので、確認を取る。

 ……私は危険な

 女だよぅ?



「ええ……。これは、

 私のバツなんだ……」


 ソフィアさんは頷いて、小声でほとんどかすれて聞こえづらい

 声で認める。

 ―――そして、1つ条件をつけた。



「いいわよう……??」

「当然じゃないかっ!」


 そして、あの(・・)両親

 に許してもらった。


 ―――だから、私は両親に

 ソフィアさんを渡した。

 そうしてソフィアさんは私から引き離されていった。

 ……もう二度と触れ合えないと、覚悟した。


 あの鬼畜父母さえ にっこり許可を くれること。

 ……それは ぜっったいに、

 私のしたくなかったこと。

 でも、それをしなければ私達

 は決して助かることがない。



 ―――そして私たちの運命は、この時

 ゴッソリ カッツリ決定づけられた。




======




「うっぐ!!」


 大切な、掛け替えのない人を売る。

 助かるためでなく、いっときの平穏のため。

 申し訳ないので、同じ拷問を受けさせてもらう。


 爪を一枚ずつ剥がされる。剥がされるのは

 いいけど、針金でグリグリするの止めて欲しい。

 予測できない痛みが来るから、思わず泣いてしまう。


 ほぎゃぎゃー!!

 ……ヘンな悲鳴は

 ギと噛み殺す。



「やだヤダヤダやだー!!

 あ゛あ゛あ゛~~~~!」

「新鮮ですなー、お母さんっ…!」

「掘り出し物ですわねー、お父さんっ!」


 ……ソフィアちゃんはあんまり こういう経験

 がないのか、髪を振り乱し絶叫を上げてた。

 和気あいあいと、テンションが高い両親。

 旅の商人から買い付けるみたいな手軽さ。



「むうううううう~!!」


 ライラさんは ついでといった感じで口かせ

 を噛まされ ガッチリと固定され、足裏を

 真っ赤な石炭にジリジリ焼かれている。


 両親はライラさんのことは最初ハナから眼中にないみたいで、

 この正確な価値の値踏みに、密かに私は おののいていた。




「で、大事なお友達を売った、気持ちは?」

「お友達、このままだと壊れちゃうわよ?」



 ギチチ、

 小休憩。


 連続して痛みを与え続けると、その

 種類の痛みに耐性が できやすいから、

 間隔を開けることで感覚を初期化してる。


 ―――ちょっと時間が空いた

 ので、私に話を振ってくる。 



[ 興奮する、ソフィアちゃんが

 私の知らない姿を見せてくれて]


 ……なんて求められてる言葉なんて、まだ(・・)言わない。

 たぶんこれが両親の望んでいる返事なんだろうけど。



 家出して少し距離を置いてみて気付いたけれど、

 両親は私に家業のあとぐことを

 ガンガン期待してたみたいだ。

 ―――呪物カース作り。


 だから私だけは殺されなかったし、左腕は

 使えなくても、そこそこ五体満足で居られた。



「………!!」

「……まだ余裕ある

 みたいねえええ?」

「じゃ、ちょっと

 飛ばしていくかあ!」



 ソフィアちゃんのトンでた意識が帰ってきて、

 まだ悪夢から醒めないみたいな現実に、

 心がポッキリ折れかけている。

 両親たちの気合が漲ってくる。


 この変態どもがー!



 ……さあ、ここからが本番だ。

 ソフィアちゃん、心を

 しっかり持ってね??




======




「ひゃ……

 ッッッ!!」

「がッ……ハッ!」


 水責め。


 生きることは、

 息を吸って吐くことだ。

 自由に息が出来ることは、

 自由に生きられることだ。


 ―――だから、それを

 チチハハに奪われる。 



「うん、そろそろ効いてきた

 みたいだねええええ?」

「ええ、ぐったりして

 来たわああああ?」


 やばい、虹色アーコ・小剣イーリスがキンキン光ってるのを感じる。

 冬の川の水は体温をバシバシ容赦なく奪う。

 ―――ヤバイ、私でさえギリギリなら、もっとカラダが小さい

 ソフィアちゃんは体力が もっと少ないから、余計キツイはずだ。



「ぜッ…ぜッ…」


 ソフィアちゃんは死にかけている。

 わたしもあと2回サれると

 意識を保てない。



「……じゃ、そろそろかな?」

「……ええ、そろそろよね?」

「え……??」


 2人は私の拘束を解いて、死に掛けて

 いるソフィアちゃんの前に立たせる。

 ……状況が読み込めない?

 ……望んでた状況が来た!




「自分の獲物なんだから、自分で始末なさい?」

「ここでマチルダの頑張りを奪ってしまったら、

 一生恨まれてしまうからな~~……??」


 ニタニタ笑って私を試す、ちちはは。

 ……ああ、一番のタイミングを

 よく分かって いらっしゃる。

 さすがは、私の両親だ?


 …そう、これは我が家の

 呪われた試練……!



 ―――やっと待ち望んでいた

 好機チャンスに、喜びが抑えきれない。


 ―――両親の性格的に、こんな展開が来る可能性が高いと賭けて

 いたけれど、実際に こうして来るまでは不安で仕方なかった。




「ぜい…ぜい…」


 30秒ほど時間が空いたから、ソフィアちゃんの

 体力が ほんの僅かばかり回復しているのを感じる。

 ソフィアの目は虚ろ、焦点は定まってない。


 ……この調子なら、出番が私に変わった

 ことも、あと数分は気付け無いことだろう。



 大好きなソフィアちゃん♪


 ……待っててね? いま だいじな

 おしごと、片付けちゃうからねっ??

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