わたしのたびのさいご……なの??
「?」
暗い所に囚われてる。
ああ、目の前に立っているのは、お母さんだ。
ああ、目の前に立っているのは、お父さんだ。
「どうして家を出たりしたの??」
「どうして家を出たりしたんだ?」
ああ、これは酷いことになる。
恐ろしくて何もされないうちから
―――涙が溢れる、涙が溢れる。
左腕をまた砕かれる。
激痛で意識が飛んで、
激痛で意識が戻される。
「悪い子だ、これはバツなんだよ……?」
「良い子は、ちゃんと耐えられるんだよ」
ああ……、せっかくお姉ちゃんが治してくれたのに、これじゃまた悲しませちゃうね。
反対側に捻じ曲げられ戻らなくなった、左手の指たちを見て、私は悲しい気持ちになり。
自分がどうにかなってしまうより、お姉さんに悲しい顔させてしまう事だけが嫌だった。
「前世で悪いことしたせいね……?」
「良い子に成らなければいけないよ」
必死に許しを請いながら、自虐で薄く笑う。
ああ、あの旅はやっぱり私の夢だったんだ。
幸せで楽しくて、想像したこと無いくらい
出会った人たちは優しくしてくれて。
危険は自分の力で排除できて……。
「ごめんなさい、許して……」
「もちろん! 子を愛さ
ない親はいないよ?」
父は穏やかな笑み浮かべ、
スプーンで右目をくり抜く、
叫んだこと無いほど絶叫する。
「これはお前のためなんだ!!」
「私達だって辛いけど、これを耐えないと
あなたはずっと悪い子のままなの!!」
両親は目の端にシットリ涙を浮かべ、
遠近感を失った視界に仲良く並ぶ。
「あなたは良くない夢を見ていたのよ! ちゃんと現実を見なさい?」
「苦しさを全部耐え切らないと、けっして幸せには成れないんだぞ?」
「そんなの分かってたことでしょ……??」
「幸せは良い子にしか与えられない!!」
「「 幻は忘れてしまいなさい! 」」
!
ソフィアさんとの数日は、
夢だった幻だったと言う。
「ちゃんと、夢を見てごめんなさいと、謝りなさい!!」
「二度と幸せをズルして先取りしないと、誓いなさい!」
「……」
……いやだった。
たとえ夢であっても、たとえ幻であっても、
私は幸せな夢を見た。世界で一番幸せな夢。
優しくしてくれた、ソフィアさんと砦の人たち。
その人たちを否定して無かったことにするのも、
手に入れたお姉さんとの幸せを手放してしまうのも。
あの夜の出来事たち、あの夢の輝きは、私の
生きてきた全てを投げ出してもいいものだった。
例え瞬きの間の夢であったとしても、少なくとも、生まれ育った村と
育てられた両親より、よっぽど大事にしたいものだった。
もう妹も居ないなら、命令を守る必要はない。
「なんだ! その反抗的な態度」
「悪魔が! 乗り移ったのね!」
怒鳴られ続ける。
「それはいけない! 俺達の
愛し方が足りなかったみたいだ」
「悪い子に産んでごめんなさい、お母さん、
あなたを良い子に産めればよかったね?」
こういう責め方をされると、申し訳なくて
消え入りたい気持ちになってしまう。
生まれてきて ごめんなさい…。
「本当に絶望した人は生きてない、
生きてるならまだ耐えられるんだよ?」
「すべての体験は糧になるのよ、まだ愛してあげ
てる私達がちゃんと構ってあげてるんだから
心の底から感謝しなさい??」
そうして私は右目も抉り取られ、
光を 完全に失った。
声は、涸れ果てた。
……ソフィアさんの、
笑顔だけを考えていた。
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「どうしたら もっと私達の
愛を分かってくれるかしら?」
「やっぱり、俺たちは優し
すぎたんじゃないか……?」
両親は計画を話し合ってる、片耳が生きてるのは助かる。
この耳も使えなくなったら、本当に何も分からなくなる。
今は立たされ続けてるだけだ……少し考える余裕がある。
「はっ……はっ」
このままだと私はもう1日も保たないかもしれない。
足元は血の海だ。今もポタポタ腕から垂れ落ちてる。
―――妹との約束は、到底果たせそうにない。
……そうだ、私をソフィアさん
に使ってもらえばいい!
そうしたら、私たちは今度はソフィア
さんと一緒に生きて、ずっと遠くまで行ける♪
―――この地獄に嵌まり込む前の、最後の会話。
『そう、命あるものは必ずこの
魂石を持っているんだよ?』
そうお姉さんは言っていた。
死んで時間が経つと消えてしまう。
―――生きたままだと取り出せる。
……だから、私自身を
魂石に変えてしまえばいい!
幸い やり方は、昨日友だちになった、
虹色小剣の小さな明かり達が教えてくれる。
最悪、あの剣士ライラさんか、もう近くに居なくなってたら、
旅人かケモノに私の石を山の向こうまで運んでもらえばいい。
時間の感覚も失われてるから、どの
くらい経っているのかも分からない。
あの2人は あのまま私が居なくなったのに気付かず先に
進み続けて、今ごろは山越えを果たしているんだろうか?
……だとしたら羨ましい。私も、両親に捕まってなけ
れば、今ごろは妹との約束を果てせていたということに成るのだから。
……ああ、最後は一番素敵だった記憶
思い出しながら終わらせることにしよう!
そうしたら少し、勇気が湧いてきた☆
僅かな余裕が出て、激痛の中少し
だけ、笑うことが出来た。
父母が、2人話しながら
近づく足音が響いた。
「穴豚ね……、仕方ないわね。ちゃんと
ノコギリの準備もできたわっ!」
「安心なさい。お前のお兄さんは
これ一回でいい子に成れたぞ!」
……その代わり、3日しない
うちに死んじゃったけどね?
―――穴豚で見つかったら、ソフィアさんは私を直せるんだろうか?
失ったものだけは戻せないんだろうか? ……だとしたら、やだな。
「お母さんたち、あなたがすっごく悪い子だと
気づかずに、今まで少し優しくしすぎたわ。
言えば分かると思ってほんのちょっと
手加減しちゃった♪ ごめんなさい?」
謝るくらいならソフィアさんの元に返して欲しい
けど、それは決して出来ない相談なんだろうなー。
「優しく躾ければ分かってくれて、すぐ良い子になってくれると
思ってたんだがな。思い違いだったようだな……。これからは
厳しいが、これもマチルダに幸せになって欲しいからなんだぞ?」
……嘘だ!
「ほんとうよ! 親は子を愛するものだし、そもそも
あなたは、私がお腹を痛めて産んだ子なのよ?」
「お母さんはせっかく好意で言ってくれてるんだ
からな? 気にかけてもらえる内が、花だぞ?」
………遠慮します。お願いです、
もう二度と構わないでください。
「反省で心を入れ替え、頑張りなさい!」
「ちゃんと全て、耐え切りなさい……?」
………絶対、イヤだ。
結果なんて見えてる。
絶対反省なんてしない!
したいことを、やった!
後悔なんて、してない!
ああ、ソフィアさんと仲直り
だけはしときたかったな……。
……残された選択肢。
やることはただ、
ひとつだった。
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「えいっ!」
あとは妖精さんにお願いする。
自分の体が薄く融けていく感覚。
私の人生で一番素敵だったのは、
ソフィアさんに[ 尊敬 ]するって
言われた時だったかな……??
えっと……、一字一句正確に思い出す。
『尊敬、してるんだよ??
リンのこと、ソフィアは』
そう、今だに思い出すだけで
ニヤけてしまう。いけない!
最後くらい真面目な表情で
伝承のヒロインみたく
悲劇でないとっ!!
「……だめっ、
笑っちゃう!」
続いてた痛みが消えた。
体の重みが 徐々に
抜けてく感覚。
出来れば、ソフィアさんに優しく殺して欲しかったなぁ……。
あの夜に白虎のままのソフィアさんに食い殺されてたら、
そうしたらこんな想いしなくて済んだのかな……??
悔しくて、悲しくて、
嬉しくて、幸せで、
でもちょっぴり、
寂しくて……。
「ソフィア、もう一度
だけ、会いたいよ……」
そう願って、私の意識
は永遠に幕を閉じた。
……ハズだったのだー!!☆
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