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乙女よ。その扉を開け  作者: 雪桃
第三幕
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約束したこと

めっちゃ短し

「にゃああぁぁぁぁぁ!!」


 ずべしゃあ! としゃちほこのように紫はあやの方へ突進していって二人揃って倒れ込んだ。


「せ、背骨が」

「治ってないんじゃないやっぱり」

「普通無理だってば」

「じゃあなんで歩けるの」


 紫に押し倒されたあやは起き上がろうと頭を上げた。


「ん? ねえゆか」

「はい……ってきゃあ!」


 あやが紫のあるかもわからない谷間を直視する。スポブラさえつけないくらい小さいので丸見えだ。


「私だって凝視したことないのに」

「ひな、そこじゃない」


 里奈がツッコむ。


「なな何するんですかスケベ緋髪」

「ああごめ……何そのあだ名!?」

「紫のセンスは宇宙一悪い」

「確かに」

「で、急にどうしたのあや。ゆかの体に何かあったの?」

「え? あ、うん。なんか鎖骨の下あたりに」




「赤い刺青?」

「赤なのか青なのかわからなくなるわよその言い方だと」


 服を一回脱いでもらうと確かにひよの額に浮かぶ刺青のような赤く縦に長い宝石のネックレスのような紋が紫の鎖骨と胸の真ん中に浮かんでいた。


「これってやっぱり山梨で狂った時からだよね」

「ゆか。あなた確か学校にあったネックレスを体に埋め込まれたのよね」

「埋め込まれたというより魔力がそこから流れ込んで来たって感じでしょうか」


 紫が小さくくしゃみをしたので服は戻してやった。流石に冷えた体を羽で覆う。毛は生えていないから暖は取れていない気がするが。


「封印されていた力。もしかしてゆかが操れなかったのは膨大だったからじゃなくてあまりにも少な過ぎたから? でもそれならどうしてフェリスの微量な魔力で」

「里奈。里奈ー」


 一人考え込む里奈を真由美は覗き込んで引き戻す。


「戻ろう。寒さは傷に響くよ」

「そうね」


 後ろ髪を引かれながらも里奈は一度心の中に留めておいた。




「何かコウモリみたいね」


 戻ってきた紫の羽を見てあさはぼやく。


「歪な曲がり方と黒の羽っていかにも悪魔ですって感じだね」

「尻尾とか生えてないのか」

「二次元じゃあるまいし」

「え? ここって二次」

「「黙れゆか」」


 一喝された紫はしょんぼりとする。その時に羽も一緒に下がった。


「ていうか寝てなくていいんですか」

「だって普通に耐えられるし……ゆか、触らない」


 骨折している腕を触ろうとしてあさに止められた。そのすぐ側で里奈は紫の事情を話していた。


「私も子どもが異能者だからと言う理由で調べていましたので詳しくは。でもそのマフィアの方には紋がないのでしょうか」


 魔姫のことだろう。里奈とは古くからの知り合いだと恵子は思っている。間違いではないのだがあまり踏み込まれたくはない。


「これで害がなければいいのだけど。またこんなことがあったらあの子達の身体も持つか分からないし」


 何せ異能者同士の戦いなんて一人でヤクザの所へ乗り込むようなものだ。昔はよく命知らずの戦とも呼ばれた。神であれば尚更だ。

 今は平気な顔をしている彼らも魔力を使い続けていけばキャパオーバーを起こし数年と経たない内に死を招くだろう。


(ゆかだって例外じゃない。気づいていないようだけど九月から二ヶ月であの子の使った魔力は尋常じゃないわ。治癒速度だって遅くなっている)


 一番死に近いのは紫だろうと里奈は思う。


(もしゆかがあの人と同じようになったら)

「社長見て見て!」

「へ!? な、なに」


 隣の部屋から連れ出してきた寝ているひよを紫の羽に乗せて揺り籠のようにしている。更に、器用に羽の先でひよの頭を数回撫でている。


「重くないんだね」

「何でそれで飛べないの?」

「原理が違い過ぎるよから姉」


 人の気も知らず、呑気な人達だ。


「全く」


 今は里奈が守ればいい。そう約束したのだ。彼らと共に。

よおし迷走になるぞぉ

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