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乙女よ。その扉を開け  作者: 雪桃
第三幕
66/164

マフィアの刺客

きりがいいので短めです

 とりあえず全員逃げないように合わせてロープで縛る。


「さて。何でこんなことになったかはわかってるね」


 紫程では無いにせよ探偵であるあや達も対応は早い方である。


「これに懲りたらもう魚で遊ばないことね」

「俺達がこんなことで負けると思ってるのか!」


 そうだそうだ。と子供たちが野次(やじ)を飛ばす。


「仕方ない。なら探偵部流の拷問と行こうか。やま」

「俺かよ」


 ゴー。とあやが親指でたけしと言うリーダーの男の子を指す。


「拷問?」

「子ども限定だけどね」


 やまはしゃがんでたけしの脇に両手を突っ込みそのままくすぐる。たけしはくすぐりに弱いようでジタバタし始めた。


「子どもに言う事聞かせるのに一番手っ取り早いでしょ。やまはくすぐるのが特技だしね」

「特技ではない」


 事情を聞くと、彼らは両親が共働きのせいで寂しくて誰かに構って欲しいが為に魚を奪い捨てたらしい。やり方はいけないことだが気持ちがわからないでも無い。


「なら毎日じゃなくてもゆかが構ってあげれば?」

「私だけですか?」

「だってあんた以外体力持たないし」


 五人引きずっても息が上がっていないのなら思う存分遊べるだろう。運動神経もいいから子ども達も楽しいだろうし。


「わかりました」


 子ども達も遊んでくれるならいたずらをしないと約束した。ついでにもう遅いという訳で途中まで送った。


「ちゃんと約束守れよゆか! でないとまたいたずらするからな!」


 あや達と話しているところからジャージ女ではなくゆかと呼ばれていた。


「わかってる。じゃあね」


 その後、魚屋から盗みが入ることもなく店主も娘も困る必要は無くなった。




「日和ちゃんバイバーイ!」

「バイバイ莉子ちゃん」


 同じクラスで仲のいい莉子という少女と途中まで一緒に下校したひよは暗くなってきた家路を急いだ。


(あや達は無事に事件を解決できたでしょうか)


 紫に作戦があったらしいから悪い方向へは行っていないと感じる。


「ままぁ……ままぁ……」


 ひよの耳に子どもの泣き声が聞こえてきた。


(こんな遅い時間に……迷子でしょうか)


 その子を助けては帰る時刻が遅くなってしまうが探偵としては放っておけない。


(から姉に報告すればいいよね)


 声のする方へ小走りに近づく。その小さな子は(うずくま)るように何かを手探りで探していた。


「どうしたんですか? お姉ちゃんも一緒に探しましょうか?」

「グスッ……ないの……みえないの」


 眼鏡だろうか。今時幼子がかけていても珍しくはない。正直すぐに見つかると思うが子どもの視界と大人とでは違うのだろう。


「おねえちゃんみえないよぉ……」


 そんなに目が悪いのだろうか。もしかしたら目にゴミでも入ったんじゃないか?


「僕。少しこちらを向いてくださいな」


 子どもと目を合わせようとした――。


「え?」


 目にゴミは入っていないし涙も流れていなかった。だって――目が無いんだから。


「引っ掛かった」

「むぐ!」


 悲鳴を上げさせない為に腕で口を押さえられる。


「さてと、こっちに来てもらおうか」

(いやだ!)


 ひよは男の腕を噛み、怯んだ腕から抜け出す。


(誰なの……不審者!?)


 全速力で走ろうとするが何かが足に絡まってころんでしまう。


「鎖!?」

「小さいのにすげえなお前。流石百目の持ち主」


 鎖を引っ張られて男の腕の中に入る。


「は、離して!」

「まあまあそう暴れんなって。どうせ助けなんて来ねえんだから」


 男によってひよは首に鎖を巻かれる。


「異能・悪虐非道(あくぎゃくひどう)




 男はひよのバッグを(あさ)ってみるがそのまま放り投げる。


「百目だから何か情報を持ってるかと思ったが」


 赤く染まったセーラー服、肢体、そして二つに結わいていた長い髪はズタボロに切り裂かれてショートカットのように短くなり、ひよの可愛らしいその顔は血で覆われていた。


「じゃあな。せいぜい失血死しないことを願えよ」


 男は笑い、人のいない路地裏を後にする。


「……ね、ちゃ」


 後に残されたのは血だらけのひよだけだった。

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