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乙女よ。その扉を開け  作者: 雪桃
第二幕
40/164

百目VS阿修羅王

ここで止めないと長くなるので今回は短めです

 ひよに近づけば近づく程目の量が増えてくる。


「秦!」

「え……うわあ!」


 続け様に起こる爆発を全て防げる訳でも無く、あやの皮膚は火傷や爆発でできた大理石の破片による切り傷で覆われている。


「異能者だって人間なんだよ百目ぇ……痛い痛い」


 それでも普通の人間――()異能者と言う――であれば即死なものを何度も食らっているところはどう見たって人間とは思えないが。


「……あや」

「何から姉。てか何で傷そんな浅いのよ」


 見たところ頬に切り傷が一筋できているだけだ。


「ひよは私が倒すから目を潰していきなさい。多分力も弱まるわ……多分」

「断定して!」


 一応(・・)上司の真由美には合わせるが里奈も含めてこの二人は情報を詳しく伝えてくれないことがよくある。


「はあ、もう仕方ないなあ。異能・(りょう)(げん)の火」


 火の玉をいくつか作り出して目だけに当たる。

 焼いたところから血が吹き出して来る為、気は滅入(めい)ってくるが。


「よし。それじゃあ」


 真由美は百目と向き合い長剣を取り出す。


「あら。人間が妖と戦うの?」

百目(あなた)から見ればそうでしょうけどその体は生身の人間よ。それにあなたが戦うのは人間じゃないわ」


 異能・()(しゅ)()(おう)


 その光景を見て誰もが畏れただろう。鬼の――(いにしえ)から人々の脅威となってきた鬼の本当の姿を見たのだから。

 真由美の(まと)っているその気配は誰がどう見ても物の怪と言い表すしか無くて、紫は夢の中に出てきたあの破壊神を思い出した。


(どうして? どうしてから姉があんな化け物のように見えるの?)


 しかし同じ妖である百目は余裕綽々(しゃくしゃく)に真由美を見据えている。


「それで? その鋭利な刃でこんな(もろ)い体を斬ってしまうの? 私はこの子の魂にくっ付いてるだけ。あんたが殺すのは私じゃなくて日和じゃないの?」


 確かにその剣は爆弾さえも容易に切れてしまう程だ。ひよなんて打ち所が悪ければ死んでしまうだろう。

 それでも思うところがあるのか真由美は切っ先を逸らさない。


『自身を守れない者を傍に置く訳にはいかない』


 それともまさか本当に言葉通りひよを――。


「……日和を守れるのは私だけよ。あんた達みたいな大人の醜い野望に私の日和は渡さない!」


 未だ消されていない目が謎の淡い光を持つ。


「私の目よ……全員殺してしまいなさい!」


 目はそのまま光を凝縮(ぎょうしゅく)し、四方八方へ光線を放ち続けた。その威力は頑丈な壁をも貫通する程だ。


「目からビーム……」

「上手いこと言ってないで対抗してくださいよあや!」


 異能を使えないが為にそこら辺に転がっていたフォークやらナイフやらで目をぶっ刺している紫が吐き気を(こら)えながらあやに叫ぶ。


「それに……」


 紫は後ろに隠れている――というより紫が立たせずに引きずっているだけだが――その男性を見下ろす。


(千鶴さんの話で行くとひよちゃんはこの人のことを)


 今は百目に乗っ取られてしまっているがもしかしたらひよ自身が精神的に衝撃を受ければ支配権を戻す鍵になるかもしれない。


(でもから姉は何してるんだろう。さっきから動かずに百目と対峙してるだけで)


 鬼の力でなのか光線は当たる前に消失されている。だが目を潰すわけでも百目を倒すわけでも無くただ剣を構えているだけ。

 百目も訝しみ、顔を(しか)めている。


「私を斬る気でも無い。それなのに剣はしまわず私に立ち向かっている。一体何がしたいの?」

「……」


 (しま)いには黙り込んでしまった。


「……いらいらする。あんたも妖を憑けてるから見逃してやろうとも考えてみたけど……何をする気でも無いなら死んでしまえ!」


 百目自身が真由美の首をかっ切ろうと身を近づけたその時。


「見えた」


 剣は綺麗な弧を描き、ひよの右肩から心臓にかけて大きく切り裂いた。

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