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乙女よ。その扉を開け  作者: 雪桃
最終決戦編
161/164

縁の憎悪

残り三話。短め

 縁の体は文字通り、頭の頂点から爪先まで左半身全てが闇に包まれている。


「……縁っ?」


 引きつったような声が舞姫の口から出る。紫も声こそ出さないものの身動きもできない。


「どれだけ私の願いを踏みにじれば気が済む。里子と言い紫と言い……。まさか舞姫に裏切られるとは思わなかったけど」


 縁は紫を睨む。紫が守りに入るよりも先に縁の異能が繰り出される。異能をモロに喰らった紫の腹はよじれそうになり、壁にまで吹き飛ばされる。


「がはっ! ゲホッゲホッ!!」


 紫はたまらず血を吐く。舞姫はすかさず紫の元へ行こうとするが


「どこに行く気?」


 縁の力によって動きを封じられてしまう。縁は闇に包まれた左手で舞姫の首を背後から掴む。


「部屋にいろと言ったはずよ。まあいい。あいつを殺してくるからそこで待ってなさい」


 縁は息を整えるのに必死な紫の元へ歩いていく。


「はあ……はあ……」

「破壊神のせいで元の体に戻り、禁忌の代償を一気に負うことになった」


 縁は自分の体に触れる。闇の部分は(けが)れとでも言うのだろうか。


「痛みも苦しみもない。ただ虚無だけ」


 紫の前髪を掴んで引き上げ、自分の顔と近づかせる。右手には光線を構える。


「お前はもう用済み。探偵社の奴らと一緒にあの世に堕ちてしまえ」


 縁が心臓に光線を放とうとしたその時だった。


「駄目!!」


 舞姫が力任せに叫ぶと何もない所から黒く禍々しい獣が現れ、縁を引き飛ばす。それによって舞姫を封じていた力も解け、紫の元へ行けるようになった。


「大丈夫?」

「は、はい。何とか」


 舞姫の肩を借りて立ち上がる。縁は黒獣をいとも簡単に消し去ってこちらを一層強く睨んでくる。


「……紫。ここにいて」

「え? でも」


 舞姫は縁の方へ歩いていく。縁はじっと待つ。


「縁、もうやめよう。一緒に死のう」


 何を言うかと思えば心中の話。紫は息を飲んで止めようとするが舞姫に来るなと手で牽制(けんせい)されてしまう。


「百年の間で何が起こったのか。どうして私を生き返らせようとしたのか」

「……」

「どうせ教えてくれないのでしょ? そこは出会ってから一度も変わらない」

「だから?」

「もう私達を知っている人達はいない。縁と私が分かち合うことはこの先一生ないわ。でも死んでしまえば全て水に流れる。そもそも私達は死んでいてもおかしくないの。自然に従いましょう」


 舞姫は縁に向かって手を差し伸べる。縁はその手を見て呆れたように笑い、一つ息を吐いてから舞姫に歩み寄る。


「ねえ舞姫」


 縁も手を伸ばそうとする。


「あなたが誰にでも優しかったから」


 手は舞姫の差し出された手を越えて。


「全員殺されたのよ」


 舞姫の心臓を貫いた。


「ど、して」

「いつまで空想の世界にいるつもりなの。一緒に死ぬ? そんなのただ存在がなくなるだけ。念は残る。そんな甘えた根性してるから子どもも妹も守れないのよ」


 縁が手を抜くと舞姫は呻きながら倒れた。


「死にはしない。でないと私の計画が全て無意味になるから」


 縁は舞姫にそう告げると次なる標的へと目線を移した。呆然とそこに突っ立っている紫を見て鼻で笑う。


「随分惚けた顔をしてるね紫。今からもう一回死ぬっていうのに」

「なんで」

「は?」

「なんであなたはそこまで人を蹴落とせるの? こんなに人を殺して、昔の友達を苦しめて。こんなの人間のすることじゃない!」


 激昴(げっこう)する紫を一瞬ポカンとした顔で見た後、縁は腹を抱えて笑い出した。


「何がおかしいの!」

「お前はまだ私のことを人間だと思っていたのかい。悪いね。人間はもうやめてるんだ。百年前に」


 事態が飲み込めない紫に自分の珠を見せる。


「私は守護神の力をわざと飲み込んで本当の神になったんだよ。こんな風に」


 縁は自分の珠を飲み込んだ。

「ゆかり」が二人いるせいで話がややこしくなる。もう二度と話に同じ名前使わねぇ!ヽ(`Д´)ノ

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