七話:その罪の力
力は使うからこそ価値がある。
冒険者ギルドを出た後。自分と鹿部さんは怪物達を倒す為に、外に出た。
「詳しくは見てませんが、あの怠惰のギルドスタッフ曰く魔法が得意みたいですし、今日の宿代稼ぎついでに一つ一つ確認しましょうか」
と彼女に言いつつ、近場の怪物を探す。
「自分は怪物を誘きだすので、その間にカードを再度確認してください」
と声をかけて、見える範囲にいないので離れますと言い怪物を探す。
(静かだ)
外にいるのに回りに音がしない…町にいたときと違った雰囲気を感じながらも手頃な怪物を探すが見つからない。
(何故だ?外には怪物は何処でもいるのに未だに遭遇しないのは…)
と思いながらも、ふと気付く。
(10分程度体感では歩いたが…彼女に見える距離に戻ってきたか)
はぁ~仕方がないとため息をつきながら鹿部さんに近づくと遠くから音が聞こえた。
(なんの音だ!?)
始めて聴いた音だが明らかにこちらに向かっているのが分かる。
「鹿部さん、逃げますよ!!」
そう言ったが、どうやら遅かったようで自分の後ろにそいつは現れた。
そいつは自分の元いた世界では存在せず、だがこんな世界には必ず存在する強者、そう自分達の前にはドラゴンが現れた。
(なんでこんな場所に!?)
そう思いながらも剣を抜く、正直にいうと勝てる気がしない、でも。
(彼女を逃がす事は出来る筈だ)
運が良ければ助けが来るかもしれない、なんて都合のいい考えをするが…多分だが自分は死ぬだろう。
「鹿部さん、あなた一人で…」
も逃げて下さいと言おうとして彼女の顔を見ると、俺に顔をむけて微笑んでいた。
そしてドラゴンに目をむけると表情を変える、それはまるで気に入らない物を見た時のようで、とてもとても最初に出会った時に不安を感じてた人にな見えなかった。
「大丈夫ですよ、あんなトカゲ私一人で倒せますから」
安心して下さいと言い自分の前に出る彼女を止める事が出来ず、自分は彼女の行動を見つめる事しか出来ない。
「さてと、最初に言わせて下さいトカゲ、貴方の声が気に入らない」
彼女はそう言うと警戒してたのかすぐに襲いにかからず唸り声を上げてたドラゴンが苦しみ出した、何か彼女がしたのだろう。ドラゴンからは鳴き声が聞こえなくなっていた。
「その見下すような目線が気に入らない」
続けて彼女は言う、そうするとドラゴンの目に火が現れる、その火は黒く禍々しい物だった。
「私達の声を聞いて反撃しようとするのが気に入らない」
今度は耳だと思われる場所が黒い火に燃える、ドラゴンは翼を広げるが…。
「たかがトカゲの癖に空を飛ぼうなんて気に入らない」
また、黒い火がつき翼を燃やす。
「最後に貴方が私達の命を狙うのが気に入らない」
ドラゴンが現れて、何分たっただろう、短い間にはかわりないだろうが俺と彼女は生きている、そしてドラゴンは彼女の最後の言葉で死に素材とGとなった。
(…なんて声をかければいいのか)
と分からなかった、だがとりあえず彼女に近づくとふらついて倒れそうになったため支える。
イレギュラーな事があったために自分は鹿部さんをおんぶしながら町に戻る事にした。
「うん、まぁ色々と言いたい事はあるけど…ありがとう、君のおかげで生き残れたよ」
と町が見え始めた時にそんな言葉を言うと。
「…どういたしまして」
そう彼女は言い返してくれた。