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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
四章 腭<アギト>に喰われる者
77/134

29

【29】


 その夜、近場の現場に出動し、ものの三十分もしないうちに勝利は教会に戻ってきた。


「た、ただいま……」

 非常にバツの悪そうな顔で控え室のドアを開ける勝利。室内で装備品の手入れをしていたシスターベロニカが、やっぱり、という顔で勝利を見上げた。

「だから言ったじゃないか」

「………………チッ」

 ジロリ、と恨めしげな目を保護者に投げると、勝利は舌打ちした。

 剛胆な保護者は気にも留めず、

「いいから早く脱いで風呂に入れ」と言った。

 出戻りハンターは返事もせず、その場で装備品を外し、バラバラと床の上に落としていく。足下は、彼の全身から滴る水でびちゃびちゃになってしまった。

「で、一体どうしたんだ?」

 勝利は苦虫を噛み潰したような顔でしばし間を置き、

「電柱の上から足踏み外して、川に落ちた」と言った。

「いい加減自分の調子くらい……いや、とにかく早く風呂に入れ。風邪をひく」

「今――」彼の目が鋭くベロニカを射貫いた。

「ん?」

「何を言おうとしたんだ? こないだも、何かを言いかけてやめた。ハッキリ言ってくれよ、頼むから」

 彼の声音に、わずかに悲壮な色が混ざっていたのにベロニカは気付いていた。だが、今の彼に全てを語ることは出来なかった。

「別に何もない。疲れているのに、ついお前に厳しい事を言いそうになって、やめただけだ。気にすることはない。体を温めて、今日は休め。いいな?」

 彼は、ふー、と大きくため息をつくと、「もういいよ」とつぶやき部屋を出て行った。


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