29
【29】
その夜、近場の現場に出動し、ものの三十分もしないうちに勝利は教会に戻ってきた。
「た、ただいま……」
非常にバツの悪そうな顔で控え室のドアを開ける勝利。室内で装備品の手入れをしていたシスターベロニカが、やっぱり、という顔で勝利を見上げた。
「だから言ったじゃないか」
「………………チッ」
ジロリ、と恨めしげな目を保護者に投げると、勝利は舌打ちした。
剛胆な保護者は気にも留めず、
「いいから早く脱いで風呂に入れ」と言った。
出戻りハンターは返事もせず、その場で装備品を外し、バラバラと床の上に落としていく。足下は、彼の全身から滴る水でびちゃびちゃになってしまった。
「で、一体どうしたんだ?」
勝利は苦虫を噛み潰したような顔でしばし間を置き、
「電柱の上から足踏み外して、川に落ちた」と言った。
「いい加減自分の調子くらい……いや、とにかく早く風呂に入れ。風邪をひく」
「今――」彼の目が鋭くベロニカを射貫いた。
「ん?」
「何を言おうとしたんだ? こないだも、何かを言いかけてやめた。ハッキリ言ってくれよ、頼むから」
彼の声音に、わずかに悲壮な色が混ざっていたのにベロニカは気付いていた。だが、今の彼に全てを語ることは出来なかった。
「別に何もない。疲れているのに、ついお前に厳しい事を言いそうになって、やめただけだ。気にすることはない。体を温めて、今日は休め。いいな?」
彼は、ふー、と大きくため息をつくと、「もういいよ」とつぶやき部屋を出て行った。




