28 最終更新 2015/10/24
【28】
「今日は無理せず休んでいてもいいんだぞ」
シスターベロニカは心配そうに言った。
勝利はそれに応えず、自室のベッドの上で黙々と全身の包帯を外している。サージカルテープで貼り付けた幾枚ものガーゼをピリピリと剥がす度、彼は顔をしかめた。多少カサブタが剥がれたものの、あらかたの傷は既に塞がっていた。
「ほっとけば、また今夜も誰かが死ぬんだ。俺が全ての獣を狩り尽くすまで、死人は出続ける。行かないわけにゃいかないだろ」
「今夜は私が――」
「その足で、どうする気なのさ。また、残った手足を食われたいの」
ベロニカは二の句を告げられず、ただ歯噛みするしかなかった。
勝利の言うとおりなのだ。今の彼女では、たとえ武器が充実していたとしても、囲まれたらお終いだ。現在装着している義手と義足は、最低限身を守るためにパワー重視のセッティングとなっている。五体満足な頃のように機敏な動きは出来ない。
「……分かっている。だが、今お前が無理をすると……」
シスターベロニカは、珍しく口ごもった。普段は明瞭簡潔な物言いをする女なのだが。
「大丈夫。もう、あんなみっともないマネなしない。ケガも全部治っている。大丈夫。いつも通りに狩りをすればいい。でしょ」
「しょうがないヤツだな。今日は軽めの区画にするんだぞ」
「分かってる。それと……」
「なんだ?」
勝利はニヤリと笑って言った。
「小遣い増やして。…………ダメ?」
「ああ、検討しておく」ベロニカは呆れ顔で応えた。




