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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
四章 腭<アギト>に喰われる者
73/134

25

【25】


「どうしたの……そのケガ……」

 遙香は真っ青な顔で、ベッドの上の彼氏(仮)に訊ねた。

 見れば、勝利はパンツ一丁だったが、体中に包帯を巻かれ、肌が露出しているのは、手足の先と首から上だけだったのだ。ところどころ、青く血が滲んで痛々しい。

「仕事。朝までやってた。だから寝かせて」

 それだけ言うと、勝利は遙香から掛け布団を奪い返し、頭から被った。


 傷だらけで仕事を終えた勝利は、現場から真っ直ぐ教団直営の病院へ運ばれ、手当を受けた。本来なら数ヶ月は入院が必要な程の重傷だったが、応急処置だけで教会に戻ってきたのだ。大きな負傷個所は医療用テープでむりやり皮膚を寄せてくっつけて、止血してある。雑な処置のように思えるが、勝利の治癒力をもってすれば、半日程度で表面の傷はおおむね塞がってしまうからだ。


「ショウくん……あの……。今日、学校は?」

 布団の上から、遙香の心配そうな声が降ってくる。さっきまでの威勢の良さはすっかり消え失せてしまっていた。

「今晩も仕事だから、今日は休む。教会から学校に電話入れるから心配しなくていい」

 遙香が布団の上から、自分の体を優しくさすっている。傷は痛まないが、胸が痛い。

 邪険にしていることが、ただ心苦しい。しかし、今は一人にして欲しかった。

「………………あの……ショウくん……」

「お前が何かを言いたげなのは分かる。でも、今の俺には、構っている精神的肉体的余裕は全くないんだ。俺はこの街に仕事で来てる。分かっているだろ」

「うん。……でも……」

「出てってくれ。じゃないと人を呼ぶぞ」

「ごめん……。放課後また来るね」

「ん。おやすみ」

 遙香はとぼとぼと部屋を出て行った。

 あのまま粘られでもしたら、キレて怒鳴ってしまいそうだった。

 今の自分は『普通じゃない』のだから。


 罪悪感にかられ、カーテンの隙間から外を見ると、肩を落とした遙香が出てきた。だが、どのみち今の自分には何も出来ない。罪滅ぼしをするにしろ、傷を治すのが先決だ。そう思って、勝利は眠りについた。


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