24
【24】
「おはようございます、多島君いますか?」
鎮痛剤を飲んで、やっと自室で眠りについたばかりの勝利は、往来で自分の名を呼ばれて目を覚ました。億劫そうに身を起こし、指先でカーテンを少し開けると、門の前に遙香の姿が見えた。
「……うぅ。タジマくんはいません」
ばたり、と寝床に倒れ込む。相手が想い人だったとしても、眠いものは眠い。寝入りばなで起こされれば、誰だってイヤだ。
無視を決め込んでいると、シスターの誰かが応対し始めたようだ。
(すまん、ハルカさん。寝かせてくれ……)
布団を被って二度寝を決め込んだ。
……廊下をバタバタと歩く音がする。朝っぱらから随分と慌ただしい。
ううん、と寝返りを打って、うっかり傷に体重を掛けてしまい涙目になる。
痛みをこらえ、今度こそ本気で寝ようと思った、が。
――バンバンッ、とドアを乱暴に叩く音で飛び起きた。
「ショウくん、朝だよー。起きてー」
声の主は、遙香だった。
(ゲッ、誰だよ、中に入れたの!)
「いません……ショウくんはいません……」掛け布団の中で念仏のように唱える。
さらにドアを連打する遙香。
「いませんいませんいません、タジマくんはいません、眠りの世界に旅だったのです」
布団の中でさらに小さく丸まっていく勝利。ただただ、災害が通り過ぎるのを、息を殺して待っている。
「ウラぁっ!!」
かけ声とともに、ドカンと扉が蹴り開けられた。遙香は勢いよく室内に侵入して来た。
「おきろってば!!」
バサッと、勝利の掛け布団を剥がす遙香。だが、次の瞬間、彼女は絶句した。
「やあ。おはよ」
眠そうな顔で無理やり笑顔を作り、片手を上げて遙香に挨拶をする。だが、遙香は布団をめくった時の姿のままで固まっていた。
勝利は下着一枚でベッドに転がっていたのだ。
「……どうした? 自分で男の布団をはぎ取ったんだから、覚悟くらいしてんだろ?」
彼に声を掛けられて、ようよう遙香は一言だけ言葉を発した。
「…………なによ、それ……」
パンツ一枚の勝利。だが、問題はそこではなかった。




