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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
一章 記憶にない少女
7/134

4(挿絵あり)

挿絵(By みてみん)

絵:東雲飛鶴


【4】


「おい! 聞こえないのか転校生。そいつは俺のモンだ。早く下ろせよこのタコ!」

 DQNが唾を飛び散らかしながらバカ丸出しでわめく。

「やれやれ……」

 勝利は肩に担ぎ上げた遙香を一旦下に降ろすと、彼女に自分のカバンを渡した。

 彼女は「うん」とうなづいて数メートル後方に下がった。

 思ったよりも察しのいい女の子のようだ。


 転校生と呼ばれた少年は、ナナメに構えて半眼で見下ろしながら、

「YOU!」

 ビシッと高利貸しの息子を指さした。

「日本語が通じねぇ奴は、駆除してやるじゃん」

 呆気にとられるDQN。だが意味が理解出来る暇も与えず、勝利は軽く床を蹴ると一瞬でヤツの前まで距離を詰めた。

「ふぁ、はわッ!?」

 いきなり勝利が消えて沸いたので、バカが泡食ってるところに軽く腹パンチ三発。

(顔は目立つから傷をつけないほうがいい、ってシスターの誰かが言ってたな)

 声にもならない嗚咽を漏らしながら、バカなDQNが腹を抱え背中を丸めている。足下がおぼつかなくなり、今にも膝から崩れ落ちそうだ。

「おっとっと、大丈夫か?」と勝利はニヤリと笑いながら、DQNに声をかける。

 近くを誰か通りかかったので、とりあえず肩を貸してるフリしてやり過ごした。

 こんな誤魔化し方も、教団のシスターが見ていたギャング映画を参考にした。

(ちょっとマズったかな……。人目のある場所で『やさしい』駆除なんて。でも――)

「うぐっぇえぉ」

 勝利は、通行人が遠ざかったのを見計らい、怯えきったDQNの喉頸を掴み、壁に軽く押しつけた。彼が本気で壁に叩きつけようものなら、人間など原型を止めずに潰れてしまう。だから、DQNをそっとやさしく押しつけてあげる。

「ヒッ、ヒッ」

 壁に押しつけられる度に、小さく悲鳴を上げる高利貸しのお坊ちゃん。さらに数回繰り返すと、後の方はもうあんまり声を上げなくなった。

「もう終いか? もっと鳴けよ。ハルカが楽しめないだろ?」

 さらに壁にガンガン押しつける。ヤツは絞り出すように、ヒィヒィと裏声で鳴いた。

「そろそろ自分のやらかした事の自覚は出来たか? ん?」

 DQNは顔を引きつらせたまま、涙や鼻水を垂らしはじめた。

(んー…………。お仕置きって、どの程度やればいいんだろう?)

 日頃、発見即デストロイな生活を送っている勝利にとって、手加減など無縁だった。

 加減の分からない勝利は、掴んだDQNの喉頸を壁に押しつけたまま、ぐぐーっと上に持ち上げた。

 苦しんだ奴は、彼の手を必死に両手で引き剥がそうとし、足はブラブラバタバタしている。DQNがスネを何度も蹴るのでイラっとした勝利は、その場でパッと手を放した。

 重力に従いベシャっと床に崩れ落ちたDQNが、喉を押さえてゲホゲホと咳き込んでいる。

「無様だな」冷ややかに見下ろす勝利。微塵の憐憫もない。

(まったくもって面白くない。こんな手ぬるい拷問。

 俺はあまり、誰かにお仕置きをした経験がないんだ。

 だって、いつも『必ず殺せ』って言われてるから。

 そりゃそうだよね。確実に殺さなければ『駆除』にならないから)


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