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(旧)闇夜に踊る  作者: 東雲飛鶴
四章 腭<アギト>に喰われる者
67/134

19

【19】


「勝利さん、こちらがマガジンパックです。ドリンクのお代わりは?」

「ああ、下さい。それとチョコバーも、もう一本」

 東側の区画の駆除を終えて、補給地点Aに来た勝利は、待っていたシスターから弾薬の補給を受けつつ休息を取っていた。

「それにしても、どうしたんです? そんなに泥んこになって。大変だったんですねぇ」と、スポーツドリンクを紙コップに注ぎながら、呑気に言うシスター。

「うっ……ちょ、ちょっとね」

「じゃ、ウェットティッシュも出しますね」

 死闘の末、と言えれば格好はいいが、実際には、さんざん自分で転びまくって汚れただけだった。つまり、自爆。花壇に突っ込んだり、ぬかるみに足を取られたり、異界獣の返り血をモロに浴びたり等々。普段なら、こんなに汚れることはない。そもそも、異界獣は勝利の体に触れることすら出来ないのだから。

 シスターの用意した、キャンプ用折りたたみ椅子に腰掛け、深いため息をつく。

(ああ…………。なんで。どうして。ホワイ? こんなみっともない事になってんの)

 仕事だけはなんとかこなしているものの、まるでルーキーの時のようにドジだらけだ。

「勝利さん、顔上げて」

「んあ……?」

 しょんぼり項垂れていると、シスターがウェットティッシュで顔の汚れを拭ってくれた。

「一人でこんな広い場所を駆除するなんて、大変ですよね。これ食べて、頑張って」

 彼女はエプロンのポケットからチョコバーを出して、勝利に差し出した。

「ありがとう……」

「よほど疲れているのね。私たちが役に立てればいいのだけど……ごめんなさい」

「いや、一般職の方に、そんな無理させられないですよ。これで十分。それに、そんなに疲れているわけじゃないから大丈夫……」

「心配事?」

 ぎくり。

 勝利はチョコバーの包みを、手元から落としそうになった。

「いや……あの……」

「彼女さんのこと?」

「へあッ、いや、その……」

「あ、ごめんなさい、余計なこと言って。お仕事に差し支えちゃいますね」

「あ、あはははは……」

 勝利は力なく笑った。やはり女の人は騙せないようだ。

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