10
【10】
勝利とベロニカの二人が教会裏の駐車場に出ると、ワンボックスカーにシスターたちが弾薬などを積み込んでいる最中だった。
「お疲れ様です。まもなく積み込みが終わりますので、もう少し待っていてくださいね」
二人に気付いたシスターの一人が声を掛ける。
この教会には、戦闘訓練を受けた職員はほぼいないと言っていい。異界獣と接触することを想定されている、ゲート観測員のシスターアンジェリカのみが、教団本部で基本的な訓練を受けているに過ぎなかった。いま作業をしているシスターたちでは、せいぜい荷物番や通信係が関の山で、駆除作業の実務においては、勝利とベロニカの二人でほとんどを賄わなければならない。
「今夜も騒々しいですね」もう一人のシスターが呟く。
夜の街に緊急車両のサイレンが響き、湿度を伴った風が、災いを予感させる。
「諸君はあくまで非戦闘員だ。くれぐれも無謀なマネはしないでくれ」
初めての実戦で高揚する二人に、ベロニカが釘を刺した。
市民には、極力不要不急の夜間外出は避けるよう、行政から指示が出ているのだが、徹底するのは難しい。毎晩どこかしらで、誰かが異界獣の餌食になっているが、いつ市民がパニックを起こしてもおかしくない状況になりつつある。
そんな中を、ひとり無邪気に撮影して歩いていた遙香を思うと、勝利は苦笑せざるを得なかった。
「こんな時に言う話じゃないとは思うんだけど……」
勝利はベロニカに話しかけた。




