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【5】
勝利と遙香が部活棟の雑然とした廊下を歩き、到着したのは文化部ブロックにある写真部だ。どうやらここが目的地らしい。この学校に都市伝説部とかオカルト部がないのなら、彼女にとって次の候補は、多分ここなのだろう。
遙香に続いて部屋の中に入ると、現像液のツンとした臭気が鼻に刺さる。
部室内は、スチール製の棚に詰まった大量のアルバム、印画紙のダンボール箱や現像用の薬品の瓶、ガラス戸つきの棚に飾られたトロフィー、壁の上の方には額装された賞状が何枚も飾られている。そして、窓際の流しの所には、干物のようにヒモから吊された大量の現像済みのフィルム。部屋の隅には暗幕で囲った簡易現像室もあって、いかにも一昔前の写真部ってカンジだ。
「やっぱり不思議? ……よね。今どき写真は、みんなデジタルだもんね。アナログにこだわるのは顧問のポリシーでもあるし、部の伝統でもあるし、ってところかな」
「ねえ、他には部員いないの?」勝利は手短な椅子に腰掛けて彼女に訊いた。
彼は、室内が蒸し暑いのでブレザーを脱ぎ、椅子の背もたれに掛けた。脇のホルスターが丸見えだが、急に人が入って来ることもなさそうだから、問題はないだろう。
「私以外はみんな受験だから、実質ひとり」
そう言うと、遙香は窓をかたっぱしから全開にして換気を始めた。少し酸っぱくて蒸された空気は徐々に排出され、室温も下がっていく。そして彼女は、流し台の端に掛けてあった雑巾を濡らして、白くほこりの積もった会議テーブルの上を水拭きしはじめた。
「そっか……大変だな」
勝利は、雑巾がけをしてゆらゆらと揺れる遙香の髪を、なんとなく眺めていた。それだけで、少し不安や恐怖が薄くなっていく気がした。




