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【4】
――万一教団クビになったら、ヤクザになるのも悪くないかなあ、と思ったけど、最近はヤクザも肩身が狭いので、シスターベロニカみたいに外国で傭兵とかするのもカッコイイかなあ――
タケノコも居残り勉強を終えて帰宅してしまい、話し相手もなくなって暇をもてあました勝利は、万一の際の身の振り方をぼんやり考えていた。
その彼がいいかげん待つのに飽きたころ、遙香が教室に戻ってきた。
「おまたせおまたせぇ~~」
「お待たされだよ。ったく鍵取りに行くだけでどんだけかかってんの」
「だってぇ、緊急職員会議で先生がいなかったんだもん。しょうがないじゃない」
「そっか。じゃ、しゃあねえな」
「んじゃ、いきましょ」
勝利が遙香に連れられていった先は、部活棟だった。
もちろんその位置は把握している。
だが、さすがにここだけは学校ごとに違う気がした。いくら部の配列がある程度同じだったとしても、廊下に積み上げられている荷物や壁のポスターまでは、さすがに同じにはならない。
(よかった……。ここは、違う場所なんだ)
自分が存在しているのは、あくまでも現実であってゲームのサーバー内なんかじゃない。だから、箱が同じでも中身の人間は全部違う。細かいところまで一緒にはならない。
この事実を目の当たりにして、彼はとてもホっとした。
何故なら、急に自分のいた場所が異常な空間だと認識してしまったら、気がおかしくなりそうに思うのは、当たり前じゃないか。
勝利は、すごく恐かった。ホントに恐かった。
なんでこんな恐ろしいことに今まで気付かなかったのか……。
その事実そのものが、彼には恐ろしかった。




