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【1】
「ただいま……」
教会の脇にある居住棟の玄関を開け、勝利が力なく帰宅を告げると、数人のシスターが彼を待ち構えていた。
たったあれだけの道程なのに、教会に着いたら疲労感がどっと出て来た。それに加えてこの彼女たちときたら、余計にぐったりせざるを得ない。
「ショウくんおかえりなさーい!」
「今日はごちそうよ! 昨日から仕込んでたんだから全部食べてね!」
「明日は私の番なんだから! やっとショウくんが来てくれたんだものー」
「ねえさっきの可愛い子、彼女なの? もう彼女作ってショウくんたらモテモテねえ」
全員がハイテンションで姦しく同時に話しかけてくるので、
(うああ、やめてえ……脳に刺さるぅぅ)
今のコンディションでは、ごっそりとSAN値が削られる。
みな若くて綺麗な女性ばかりなのが、かえってリアリティを失わせる。
でも、存在そのものが虚構なこの教会には、そんな彼女たちはお似合いだろう。
「ああ、どうも……」
勝利はキャッキャとまとわりつくシスターたちに力なく片手を上げると、そそくさと逃げるように自室に入った。
こうやってシスターたちが彼をもてなすのは珍しいことではない。
彼が教団本部から各地の教会に派遣されると、初めはどこでもこんな風に姦しく歓待されるので、別に驚きもしない。
ただ自分が、他のハンターよりも少々『彼女たちに喜ばれている』らしい、というのは耳に入っている。……理由については考えたくもない。
異界獣の駆除作業で街にやってきたハンターを手厚く接待するのは、教団の昔からの習いであり、命がけの任務に当たる彼等への、教団からのせめてもの心遣いなのである。
プロだって、奴らに食いつかれて手足を失ったりすることもある。
――勝利の師、シスターベロニカのように。




