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空土 海

バカは仲間がほしい?

――ああ、平穏はいいな~

少年は高校の一室で、窓の外を眺めていた。外は快晴で高くない太陽の光に目を細める。髪は短く、顔はこれといって特徴がない。良くて普通、悪くて平凡と言いえる。性格でも平穏を求めていることから普通だが、苦労性なのだろう。そう彼、菅田(すがた) 恵助(けいすけ)の平穏な時はいつも長く続かない。それは――

「よう! なあなあ聞いてくれよ。家にさ新しい家族ができたんだ!」

「……いつもいつも騒がしいな。少しは落ち着こうよ」

 勢いよくやってきたのは、髪は適当にされボサボサ。見るからにバカそうな顔つきの郁札(くにふだ) 結城(ゆうき)、少し運動ができるぐらいで、いつも元気しか取えがない少年だ。

「でっ、家族ってどうしたのさ?」

聞き返さなければ余計騒ぎ出すだろう。菅田の表情からはうんざり、めんどくさいといったい感じが読み取れる。いつも騒いでいる人間の対応は、慣れても疲れるようだ。

しかし菅田は、嫌な汗が少し出るのを感じた。だが首を傾げただけだった。

「犬がきたんだ! 犬!」

「犬かーいいよね、種類は?」

 動物が好きな菅田にとって興味がある話だった。

「えーと、なんだろ、こうなんというか……黒いやつかな」

 郁札は妙な動きで言葉を探したが、結局みつからなかったよで色しか出てこなかった。

「黒か……甲斐犬ぐらいしか思いつかないな」

 動物が好きでも詳しいわけではない上に、ヒントが少なすぎた。

「じゃあそれかな~拾ったからわかんないや」

「拾った? 首輪とかはついてなかったよね?」

てっきり買ったのだと思っていた菅田は驚きと心配が生まれた。

「なかったと思うけどな~まあいいじゃん、もう飼うって決めたんだし」

「親はどうしたの?」

「そういや今朝、いなかったような」

「……そうか」

郁札の軽いもの言いに疲れを示し話を切ろうとするも虚しく、話は続いた。結果、放課後に郁札の家に行くことになった。


           ◆


「へーここが」

「そ、まあ入れよ」

郁札の家先で立ち止まっている菅田を玄関を開けながら促す。

「そこらへんに荷物置いていいよ」

「ああ」

 中に入れば少し見覚えがあるような気がする、ただ単に家の作りが一般的なのか?

リビングで荷物を置いた後、裏手にある小さな庭に犬が居るようだ。

「よし、じゃミケに会いにいくか!」

「……犬だよね」

 猫を連想させ、本当に犬に会いに行くのかわからなくなる名前だ。

「そうだけど」

「ミケでいいの?」

「え? いいじゃん」

 その返答に呆れつつも、いつものやりとりだ。

 ガラガラ

「ほら、ミケだ」

「………………もう一度聞くけど犬?」

「あたりまえじゃん」

目の前に居るそれは、確かに黒い。しかし大きさは大人と同じくらいの大きさ。たぶん四つん這いで立っているようだ。

「……いや、よくみえないんだけど?」

それもそのはず、その生き物のようなものにはモザイクのようなものがかかっているのだ。

「あー、そうかもね、でも四本足だし犬だろ」

「いやいやいや、四本足=犬の式はどこからきた? その前になんであんなの拾ってきた?」

「なにを慌ててんだよ、だって可哀想じゃん。箱に入れられ川を渡ってたし」

「川――」

 菅田は想像した。どこかの子犬のようにダンボールに入る謎の生き物(犬?)を、しかしそれはすぐに否定され、箱は札の貼られた木箱になった。

「は、箱には、なんも貼られてなかったよね?」

 まさかそんなはずがないと凄む菅田に対し郁札は落ち着いていた。

「え? よく分かったな、紫の箱にびっしり貼られてたぜ」

郁札の指さす部屋の隅には蜜柑箱程度の大きさの箱があった。その色は紫だが灰色の札が大量に貼ってあった。開いている箱の口には、札を切った跡がある。

「いやいや、あ、あんなのに、入ってたわけないだろ?」

 顔は青ざめながら落ち着こうとする菅田に対して、郁札は――

「ああ、最初は小さかったんだけど、朝になったら今のサイズになってたぜ。成長早いよな~」

「成長ってレベルじゃないだろ! 気づけよ」

「うるさいなーどうしたんだ? 菅田らしくないぞ、ん? あれ」

 郁札は謎の生き物(犬?)の近くに銀色の光るものを見つけた。

「これは、親父のケータイだな、なんでこんなとこに、このサンダルも、なんでだ」

 携帯電話の近くには片方だけのサンダルが転がっていた。

「ま、まさか……」

 その話を聞いて菅田は真っ青になった。彼の中で最悪の想像が組みあがっていた。人を食うバケモノと……

「こ、こういうときどうすれば……警察消防? お寺かお坊さん? 保健所かいや死んだふりか?」

 菅田は混乱したようだ。無駄に多くのコマンドが出現した。

「さっきからどうしたんだ?」

「お、お前は、どうしてそんなに落ち着いてんだ!」

菅田はしゃがみ込んだ。現実を逃避するようにぶつぶつと呟く。

「これは夢だ、きっとそうだ、早く起きろ大好きな平凡な日常が……」

「おちつ――」

 郁札の声が不意に途切れたのを耳にして、ゆっくりと菅田は顔を上げた。そこには郁札の頭がスッポリとモザイクがかかったようになっている。そう食われているのだ。

「く、くにふ、だ」

 菅田は茫然としていた。目で見ている情報を整理できずに。

「こら! ミケだめだろ」

キャン

 そんな菅田を呼び戻したのは郁札の声と犬の鳴き声だった。彼の左手の指には一枚の札が挟まれていた。そしてそれは怪しく光りを出している。

「まったく、ほら謝れ」

 頭がちゃんとついている郁札は、お座りしていると思われる謎の生き物(犬?)を叱りつけていた。

「すんません、いや~狙い時かなっと思って」

 その野太い声は、謎の生き物(犬?)から発せられたように聞こえた。

「まったく、ちゃんと躾ないとな~」

「え? いや、ほら、実害はなかったわけだし……」

「術がなければ死んでるっての」

 謎の生き物(犬?)は郁札の強烈な蹴りを下腹にくらい、ひっくり返る。

 菅田は目を点にしながら見ていた。開いた口がふさがらないといったところだろう。

「えっと、なにそれ?」

 振り絞った言葉はそれだけだった。

「あ、悪い悪い、驚いた? まあ俺も少し驚いたし、ちゃんと躾なきゃだめだな」

「いや……そうじゃなくて、その持ってるものとかその生き物とか」

「ああ、この札? これはなっていうか札だ、こっちは霊的なやつ」

「……札に、霊? 幽霊か?」

 いろいろな疑問でいっぱいの菅田の脳には余裕がないようだ。

「まあ、ちょっと違った気もするけど、まあそんな感じ、術とかは家業的な?」

「……」

 菅田は納得も理解もうまくいっていないようだ。

「まあ、いいじゃん。反応う――」

「おい!」

 その場に聞いたことのない声が響く。声の先には険しい顔付きでスーツ姿で七三、メガネといった絵に描いたようなサ ラリーマン風の四十前半だろう男が居た。

「かってに見せたり、教えるなといってるだろ、まあどうせ言葉も意味も理解が薄いだろうがな」

「お、親父。お早いお帰りで……」

「携帯を忘れてな」

漠然と眺めていた菅田の後ろで足音がした。振りかえろうとしたときに額に指が置かれた。そして倒れ込むのを支えて防いだのは、三十後半に見える女がだった。

「まったく、この子菅田君でしょこれで二度目よ、効き目薄いかも」

 ため息をつきながらも菅田の額に手を置いている。手と額の隙間からは光がこぼれている。

「しょうがない、記憶の封印なんて何度もかければ薄くなる、前に言ったよな、もう連れてくるなと言っただろ」

 咎めるように息子を睨んでいる。

「あれ~そうだっけ? それにいいじゃん。才能あるんだし、教えて同年代の友達を――ぐへ」

 いつの間にか郁札と父親の距離は近くになっていて、郁札は父親の拳が左頬へとめり込み、トリプルアクセル並のジャンプを見せ、動かなくなった。


         ◆


次の日。

「よう!」

「おは――どうしたんだその顔?」

 郁札はいつもどおりの声だが、顔はミイラ男並みに包帯が巻かれていいた。

「いや、親父とな~」

「そ、そうか」

「それはいいとして、今度家に来ない?」

「いや、犬がいるからいい」

 その返答に郁札は不敵な笑みを浮かべた。

「そっか、じゃいいや。諦めないし」

「なにを?」

「こっちのことだ」

 菅田は郁札がいつもより変だなと首を傾げていた。

漫画研究会の方に退出した原作となる小説です。

まあ実際には書き手が間に合わなくてボツになってしまいましたが……

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