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『編集長!近いですっ!』 ぽっちゃりOLの私、美容雑誌に異動したらイケメン上司の溺愛が止まりません。  作者: 間宮芽衣


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19/21

【第十九話】新しい扉―― 胸を張って、貴方の隣に。


 ――今日はベルシア本社の会議室で、打合せのあとに広告チームの皆さんと速水社長、そして蒼さんと美波と私で打ち上げである。


 会議室のテーブルにはケータリングのオードブルや大きな紙皿に出したポテチなどのスナック菓子。


 それにビールやチューハイ、ジュース、紙皿や紙コップなどが並んでいる。


「それでは、ますます商売繁盛することを願いまして…。乾杯っ!!」


山下さんが乾杯の音頭を取ると、皆が紙コップを掲げた。


「いやー…。それにしても一時はどうなることかと思ったけれど。無事解決できて良かったよ。


 蒼、餅田さん、橘さん。本当にありがとう。」


速水社長がニッコリと笑った。


「ベルシアの皆さんこそ、迅速に行動してくれてありがとう。


 おかげでこちらでもスムーズに動くことが出来た。


 結局は両社とも売上げもかなり上がったし。


 な?圭吾。」


言いながら、蒼さんがニヤリと笑った。


「ああ。既に新しく発売予定のオーガニックコスメにめちゃくちゃ予約が入っていてね。


 こちらとしては嬉しい悲鳴だね。」


答える速水社長も嬉しそうだ。


「クリスマスの限定商品の予約もバンバン入ってきているんですよ。来月JOURの広告で紹介されるのが楽しみです!」


山下さんも嬉しそうにしている。


 ――打ち上げは和やかに終わり、会議室をみんなで片付けて撤収となった。


 すると、速水社長が広告チームの皆さんが退出して行った後、声をかけてきた。


「ねぇ、3人ともこの後予定ある?」


「ない。というか、…今酒飲んでただろ。」


思わずといった様子で高峰さんが吹き出す。


「ははっ、それもそっか。ねぇ、それなら良かったらこの後4人で二次会しない?


 …餅田さんも橘さんもそれでいい?」


速水社長が誘ってくださったので、私達も頷く。


(ふふっ。速水社長、電話では美波のこと『美波ちゃん』って言ってたのに。


 さすがに私と蒼さんの前でも、まだ『橘さん』なんだな。)


私は思わずニンマリしそうになるのだった。


◇◇


 4人での二次会は、速水社長のおすすめだという海沿いのダイニングバーだった。


 夜の海を背景に、ライトアップされた白壁の建物が凄くオシャレである。


 エントランス部分にはサーフボードが飾ってあった。


(わあ、素敵!まるでハワイに来たみたい!)


 潮風が入ってきて、ヤシの木の葉がさわさわと揺れている。


「せっかくだからテラス席にしよっか。すみません、ここ、空いてますか?」


速水社長が尋ねると、アロハシャツの店員さんが案内してくれた。


 テラス席はウッドデッキになっていて、波の音が聞こえる。


「あーなんか、落ち着く…」


蒼さんがリラックスした様子で木製のソファに寄りかかった。


「でしょ?たまにここに来て読書とかしてるんだよね。クリエイティブになれそうでしょ。」


速水社長はそう言って、口の端を上げる。


 蒼さんと速水社長はビール、美波はピニャコラーダ、私はモヒートを注文した。


 ガーリックシュリンプもロミロミサーモンも美味しくて、幸せな気分になった。


「いやー、こんな風に蒼とまた、気軽に話せるようになれるなんて思わなかったなー。」


「だな。大学の時はよくつるんで、バカなこともしてたけど。」


静かに波の音を聞きながら、蒼さんと速水社長は物思いにふけっている。


「あの、蒼さんって大学の時ってどんな感じだったんですか?」


私は好奇心を刺激されて尋ねてみた。


「んー、今とあんまり変わんないかな。


 ストイックで、でも人の事を放っておけない優しさもある。」


速水社長の言葉に私は深く頷く。


「あ、なんかわかります。一見怖いのに話すとめちゃくちゃ優しいんですよねぇ。


 話も遮らずにきちんと聞いてくれるし。そう言うところが素敵ですよね。」


私は出会ったばかりの頃の蒼さんを思い出して、思わず吹き出す。


 すると蒼さんが何故か耳まで真っ赤になっているのを見て、速水社長が吹き出す。


「ははっ。蒼のそんな顔初めて見た。」


その様子を黙って見ていた美波が、意を決したように切り出した。


「あ、あのっ!速水社長はどんな感じだったんですか?」


その質問に、何故か蒼さんが少しだけ微妙な顔をした。


(…え、今の顔なに?!)


私が頭の中に疑問符を浮かべる中、速水社長が圧を感じる笑顔で


「…知りたい?」

と妖しい色気を出しながら言った。


 その顔を見て、美波はなんだか挙動不審になっていた…。


「――圭吾。中途半端な気持ちで、手を出さないでくれよ…。」


と蒼さんが言うと、速水社長は、

「中途半端じゃないから、大丈夫だよ。」

とふわっと笑ったのだった。


(…え?!何今の!!どういうこと?!)


そんな私を尻目に、美波は顔を真っ赤にするのだった。


――1時間後。


「ねぇ、せっかくだから海の方に行ってみない?」


速水社長の提案で、私達は4人で海沿いを散歩していた。


 私と美波はハイヒールとストッキングを脱いで素足である。


「蒼さんっ!はまぐりっ!蛤をゲットしましたよっ!これ、高級料亭で出てきそうじゃないですか!?」


そう言って私はコンビニの袋によくわからない貝を目一杯入れまくっていた。


 すると、蒼さんが慌てて止めてくる。


「やめろっ!貝毒に当たったらやばいぞっ。」


そんなことを言いながら水をかけあってふざけていたら、気がついたら美波と速水社長がいなくなっていた。


(あれ?どこに行ったのかな?)


そう思いふっと少し離れたヤシの木の陰を見ると、なんと2人がキスをしていた。


(ぎゃあぁあ!!)


思わず赤面した私を見て、蒼さんがニヤッとする。


「…行こうか。まだまどかと一緒に、見たい景色が沢山ある。」


「…はいっ!」


私はスマホで美波に先に退散することを伝えると、蒼さんと夜の浜辺を歩いて行くのだった。


 ――帰りは足が砂だらけになったので、蒼さんがコンビニでお水を買ってきてくれた。


 足を洗っている間、彼がずっと横抱きにしていてくれた。


 ふわっと香るいつもの彼の匂いにドキドキする。


(恥ずかしい…。でも重たいままだと蒼さん、普通に私のこと持てなかったかも…。

 ダイエットしておいて良かった…。)


――私の脳裏にラーメン10杯食べていた頃の私を、頑張って担ごうとする蒼さんが脳裏に浮かぶ。


『だ、大丈夫ですか?』

太った私が蒼さんに申し訳なさそうに眉を下げる。


『大丈夫っ!まどかのためならこのくらい…。』

そう言いながら蒼さんが私を持ち上げようとするのだが。


『…っごめん、やっぱきつい!』

そう言って2人で倒れ込んで海の方に転がって行く。


『あーれー。』

 どぼん…。


 ――こうして私達は海に落ちて行った。




(いやいやいやいや!!!!)


「…まどか?どうした?」

気がつくと蒼さんが心配そうに私を覗き込んでいた。


「な、なんでもありません。」


(よ、よかった!!今なら少なくとも海に落ちることはなさそうっ。)


その後、2人で仲良く手を繋いでスーパー銭湯に行った。


 お風呂上がりに一緒に併設のゲームセンターでゲームする。


――そして、蒼さんがめちゃくちゃ大きな、もちうさちゃんのぬいぐるみを取ってくれた。


「凄ーい!!蒼さんっ!クレーンゲームめちゃくちゃ上手ですねっ。」

 

もちうさちゃんを抱っこしてはしゃぐ私を見て、蒼さんが目を細める。


「…もう1人まどかがいるみたいでなんだか嬉しいな。

 じゃ、帰ろうか。」


もちうさちゃんを抱えて歩く私の横で、蒼さんがそっと手を繋いできた。


 あったかい手に、胸の奥までじんわりと満たされていく。


――こうして我が家に『もちうさちゃん』という、新しい仲間が加わったのだった。



◇◇


 ――二日後。


 朝から人事部長に蒼さんが呼ばれていた。


「高峰さん、まさか異動?」

「えー、困るっ。」

「それか、案外他の人の異動について話してるとか?」


編集部のメンバーが心配そうにヒソヒソと話している。


 ――戻ってきた蒼さんは少しだけ険しい顔をしていた。


(…蒼さん、何を言われたのかな。でも、大事なことなら話してくれるはず。


 取り敢えず目の前の仕事をしよう…。)


 私はモヤモヤを誤魔化すように、原稿を作成するのだった。


 ――昼休みになると、少しもじもじした美波にランチに誘われた。


「…まどか。実は報告したいことがあって。」


その言葉に私はピンときた。


(…もしかして!)


 私達はいつも内緒話で使っているホテルのレストランに直行するのだった。


「――で、報告したいことって何?」


私は美味しそうなロールキャベツ越しに、美波を見つめる。


 すると、美波が少し顔を赤らめて報告してくれた。


「実は、圭吾さんと正式に付き合うことになりました…。」


その言葉に、私は目を輝かせる。


「…よかったじゃんっ!美波!」


「…うん。なんだかまだ実感湧かないけど。あの日ね、その…圭吾さんがちゃんと付き合おうって言ってくれて。」


そう言って、美波は蕩けるような笑顔になった。


(うわ、美波が女の子の顔してる…。可愛いー!!)


私は親友の嬉しい報告に胸が躍るのだった。



 ――その日は蒼さんといつものスーパーで待ち合わせをして、食材を買って帰った。


「「頂きまーす。」」


 今日は蒼さんの好きな豚汁とお刺身である。


 ちなみに豚バラを一度下茹でしてから作ったヘルシー仕様である。


「うまい。やっぱりまどかの料理はホッとするな。」


そう言って蒼さんは目を綻ばせた。


「蒼さん。そういえば。


 …もう本人から聞いてるかもしれないですけど、美波と速水社長、付き合うことになったみたいです。」


私の言葉に蒼さんが頷く。


「ああ、圭吾から聞いた。


 あいつが俺を飲みに誘ってきた時、まどかに振られたのに妙にスッキリした顔をしていたから何かあると思ってたんだが。


 まさか、橘と付き合うとはな…。


 でも。――2人とも幸せそうで良かった。」


「…はい。私『JOURジュール』に異動してきてから美波にいっぱい…、いっぱい助けて貰ったんです。だから絶対幸せになって欲しいです。」


私の言葉に蒼さんは真剣な顔になる。


「…きっと、大丈夫だ。あいつらも、俺達も。」


その後、蒼さんは何か物思いに耽っているようだった。


(…蒼さん?やっぱり何かあったのかな。)


食後少しモヤモヤした気持ちで、2人でソファで寛いでいる時だった。


「――まどか。実は、まだ内緒にして欲しいんだが。


 『JOURジュール』が一つのメディアとして。


 グループ会社として『ヒトトナリ社』から独立する事になりそうなんだ。


 …俺には社長を任せたい、と今朝言われた。


 どう思う?」


その言葉に私は目を見開く。


「しゃ、社長ですか?!」


「…ああ。」


――すると、私の脳裏に農民になっている蒼さん、もとい蒼どんと、村娘になっている自分が見える。


『蒼どん!すげぇだっ!!

 ついに農民から社長、天下人となっただぁ!!!』


『…金の寺、建てるどーーー!!!』


後ろでリサ姫がクルクルと踊り、くノ一美波が10人くらいに分身して狂喜乱舞している。


――私は目を輝かせて答える。


「蒼どん、すげぇだっ!!」

「…は?あおいどん?」


(あ、やっちゃった…!!思わず声に出してしまった。)


沈黙のあと、彼はふっと肩を揺らして笑い出した。


「…まどかって本当にたまに変なこと言うよな。」

「わ、忘れてくださいっ!」

私は恥ずかしくて赤面してしまう。


「いや、そういうところが好きだ。」


そう言った後、すぐに真剣な顔で見つめてきた。


「…なあ、まどか。ついてきてくれるか?」


その言葉に、私はまっすぐに彼を見つめ返す。


「蒼さん。


 異動したばかりの時、バーで私が自分がいなくても『UMAMIウマミ』で仕事が何事もなく回っているのを目の当たりにして落ち込んだって話をしましたよね。


 ――その時、蒼さんがこう言ってくれたのを覚えてますか?


 『自分がいなくちゃ駄目なんだ』じゃなくてさ。『自分がその仕事じゃなきゃダメな理由』を見つけろよって。」


その言葉に蒼さんは目を細める。


「――ああ。そんな事もあったな。」


「私、やっと見つけました。


 …貴方の隣できちんと胸を張っていたいから、じゃだめですか?」


私の言葉に蒼さんが目を見開いてから、少し泣きそうな顔をする。


「…だめじゃない。


 ――ありがとう。


 っ、ありがとう、まどか。」


そう言って蒼さんがぎゅっと私は抱き締めてくる。


 ――私達は顔を見合わせると、やがて笑い合う。そして、だんだん顔が近づいて…。


「んっ、蒼さん…。」

「まどか…。」


…優しい口付をしたのだった。


 私が変われたのは、蒼さんがそばにいてくれたから。


 ――今の私なら、胸を張って蒼さんの隣に立てる気がする。


 …だからこれからも、ずっと隣で一緒に歩いて行きたい。



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