勇者パーティを追放された男は喜び故郷の村へと帰った
「お前はパーティにはもういらん、追放だ」
その言葉を聞いた瞬間、俺は即座に言葉を発した。
「じゃあ故郷に帰っていいんですね!!!」
たぶんここ数か月で一番の笑顔を見せていたであろう。
「はあ?お前重大さをわかってるのか?追放だぞ追放、この勇者様のパーティから」
「ええわかってますよ。つまり、帰っていいってことでしょ、故郷に」
勇者様は顔を歪ませる。どうやら俺の反応が思っていたものと違うようだ。だが、正直興味はない。今の俺にとって大事なのは故郷に帰れるって一点だけだ。
「貴様、俺を馬鹿にしてるのか?」
「いえ、そんなことないです。正直そっちから言ってくれてよかったです。なんかこういうの言い出しづらくて」
勇者様のイラつきが伝わってくる。だが、それでも俺はご機嫌とりなどをしようとしない。もう必要ないのだから。
そもそも、俺は故郷の村で平凡だが幸せに暮らしていた。だが、村を勇者様に救われたとき、俺が一番村で有能だったため、勇者パーティに恩返ししてこいと言われてついていくことになったのだ。
だが田舎の村で有能なやつがついていったところで、何かできるわけじゃない。だから、ついていくことになってから数か月大した活躍はしていない。むしろ戦闘にはほとんど参加せず荷物持ちをしていたくらいだ。しかも勇者様は外面はいいが、正直性格は面倒であった。プライドは高く、すぐに感情的になる。周りに人がいなければグチグチと俺に文句も言ってきた。
だからこそ、正直早く故郷の村に帰りたかったが、事情が事情でこちらから言い出しづらかったのだ。そこで勇者様からの追放の言葉。俺にとっては望みの言葉であった。
「ああもういい、さっさと俺の前から消えろ」
どうやら面倒になった勇者様はその一言を言い放つとその場から去っていった。
「今までありがとうございました」
と、一応のお礼の言葉を言って、俺は自分の荷物を持って、勇者様のもとを離れた。
そうして、俺は故郷の村に戻った。故郷の村では色々と聞かれた。どうして帰ってきたのか?とか勇者様との冒険はどうだったのか?と。
俺は勇者様の品位を損ねないように嘘を交えながら、村の人々に話をした。村の人々の勇者様への憧れをなくしたくなかったのだ。
そして、俺は故郷の村でまたいつもの平凡で幸せな生活へと戻った。その後しばらくして、勇者様が魔王を倒したという情報がきた。そして、勇者様が魔王と相打ちになって亡くなってしまったとも。
俺は勇者様のために、死者への祈りをささげた。魔王を倒した感謝をこめて。あと勇者パーティでの生活は嫌なことも多かったが、亡くなったと聞いたときには普通に涙が出た。なんだかんだあの人を尊敬していたところもあるのかもしれない。
俺はそのまま平凡に暮らしていった。子どもたちには勇者パーティに一時期いたんだとか自慢しながら。そして、勇者様の功績を後世に伝えられるようにしていった。別に勇者様の良くないところを言う必要もなかったからだ。それに誰も明かしていなかったようだし。
そして、俺は最後まで勇者様を称えるようにしていった。
勇者は最後まで勇者らしかった人物としてこのあとの歴史では伝えれられていったのである・・・