EP3:一人の探し人:10年前
晴天の雪原。
よく締まった雪道は、とても歩きやすいのだが、かなり照り返しがまぶしい。
リセは、まぶしさに導く光を何度も見失う。
中天へとのぼる太陽は一切の容赦なくふりそそぎ、雪原がそれを吸い取ってくれることも全くなかった。
「こんなに日差しが強くて、まぶしいなんて……赤とか、ピンクとか、やさしい色がよかったな」
その光がリセを導く先は、もう彼女が知っていたちいさな境界を超えた。
リセの知らない世界がそこにはあった。
鼓動が早くなる。高鳴ったのではなく、ひやりとした不安が胸を締め付けたのだ。
ーーー
ついに足元の影が長くなってきた。
もうずいぶん前からリセの目は痛みつけられ、きれいに物を見れなかった。
ただただ光が進む後に続いて何倍にも膨らんで感じられる足を前へと擦るように進んでいた。
「ここで足を止めたら・・・カアレをとめる気持ちもとまってしまう!」
皮肉にも旅立ちに思ったように、視界はピンクに歪んでいた。夕闇がせまったのか、己が目が狂ったのか、リセにはもうよくわからなかった。
ーーー
少し前から、じっとりとした気配がする。
ーーーきっと振り向いたらこわいものがいる・・・
日の光はやわらかくなり、薄暗く夜の気配をさせる。リセの足跡を追うように、すこしづつ黒い獣たちが集まっているのだ。
それはけっして音をたてない。
するすると忍び寄るのだ。
聞こえないはずのくつくつという嗤いが、リセをおびえさせる。




