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転生したら災難にあいましたが前世で好きだった人と再会~おまけに凄い力がありそうです  作者: はなまる


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 「あの神父様は?」

 騒々しい声が部屋まで聞こえたのだろう。

 ミシェルが出て来た。

 「マダム。ルヴィアナ様には何も憑依してはおりませんでした。ですが一応厄祓いしておきました。では私はこれで失礼します」

 「それでは、ルヴィアナはもう大丈夫なのですね?」

 「それは神にしかわかりません。では失礼」

 アルドはそう言うとこれまた疾風のごとく宿から立ち去った。



 「ランフォード様一体どういうことです?あの方本当に神父様なのですか?あんないい加減な」

 ミシェルはかなり怒っている。神にしかわからないと言われれば無理もない。

 「それが…ルヴィアナは生きる気力を失っているのだと、何かルヴィアナが求めている事とか、喜ぶことはわかりませんか?」

 ランフォードは真剣な面持ちでミシェルに尋ねる。


 ミシェルはしばらくランフォードを疑わし気に見ていたが、次第に眉にしわを寄せて行く。

 「まっ!ランフォード様にはわかりませんの?ルヴィアナが何を求めているかですって?そんなの…もちろんあなたに決まっていますわ。ずっとずっとランフォード様を慕っていると言い続けていましたもの。でもニコライが亡くなってあなたは牢に入れられてルヴィアナがどれほど心を痛めたか。どれほど失意の底にいたか。それでもあなたを助けようとしたり、兄のところに話をしようとしていたところにあのクレアが…あぁぁぁぁ。もうほんとに!」

 ミシェルはイライラして地団太を踏む。


 「もう、ほんとに男ってどうしてこんなに!ルヴィアナを愛していると俺が君を守るからとどうして言えないのです?えっ?あなたルヴィアナを愛してるんでしょう?結婚まで申し込んでおきながら…まさかあれは嘘でしたの?」

 ミシェルはランフォードを睨みつける。


 ランフォードは胸にぐさりとミシェルの言葉が突き刺さった。

 「母上、何をおっしゃる。私は嘘など付くわけがありません。彼女を愛してます。結婚したいです。出来る事ならすぐにでもそうしたいです。でも、出来ないんです!」

 出来るわけないじゃないですか。

 俺は魔獣になる男なんですよ。

 彼女を傷つけるかも知れないんです。

 そんな男がルヴィアナを幸せに出来るはずがないじゃないですか!


 ランフォードの心は嵐が吹き荒れる。

 ルヴィアナを愛している。

 一度は本気で結婚しようと思った。

 でもこんな事になってしまったんだ。

 こんな俺でもいいのかとこの腕に抱きしめて彼女に愛を乞いたい。

 でもそんな事していいはずがないじゃないか。

 無理だ。無、無理なんだ。



 「あら、それはどういうことですの?」

 ミシェルは不思議そうにランフォードの顔を見た。

 言えるわけがないですから。

 「とにかく無理なんです」

 「やっぱり、ニコライもそうでした。ここでと言うときになると男って意気地がないんですね。はぁ…もう結構ですわ。ルヴィアナは連れて帰ります」

 「いえ、それは待って下さい!ルヴィアナは私が助けます」

 「いいえ、結構よ。誰が貴方なんかに」

 ミシェルとランフォードが言い合いをしているところにダミアンが駆け込んできた。



 「隊長、力を貸してください。お願いします。カルバロス国軍が国境を超えてしまいました。もうすぐルベンになだれ込んできます。このままでは…」

 「ダミアンそれは本当か?待ってろ!すぐに行く」

 ランフォードはたちまち騎士の顔になる。

 「とにかくここは危険です。すぐに馬の手配をしてルヴィアナを連れて逃げて下さい。私は騎士隊と合流します。ジルファン、ルヴィアナを頼む」

 「任せろ。ルヴィアナは俺が必ず守る」

 「ああ、頼む。ダミアン行くぞ。カルバロス軍を押し出すんだ」

 騎士としてのランフォードは自信にあふれていた。

 だがルヴィアナの相手となるとまったく自信のない男だった。


 **********


 ランフォードはミシェルにジルファンが逃げるのを手伝うことを手伝うと告げると行ってしまった。

 ジルファンは簡単に挨拶をするとすぐに準備をし始めた。

 「奥様、マーサ。私が馬車を探してくるまでここにいて下さい。何があろうとルヴィアナは私が助けますので安心して下さい」

 「ええ、あのジルファン様と言われましたか。私が乗って来た馬車をまだ留めてありますわ。私、ルヴィアナを連れて帰るつもりでしたので」

 「それは助かる。ではすぐにここから避難しましょう。それで馬車は何処に?」

 ミシェルは馬車の居場所をジルファンに告げる。

 「御車イアンにこちらに来るよう伝えて下さい」

 ジルファンは急いで外に出た。

 宿の外は皆カルバロス軍がやって来ると聞いて逃げようとする人たちが駆けまわっていた。

 宿の主人も客たちに避難するよう声を掛け始めた。

 ジルファンは、こんな夜中に動けないルヴィアナを連れて逃げるのは容易ではないと判断する。

 そしてジルファンはルヴィアナたちを魔族の森に連れて行くことにする。

 運よくミシェルが乗って来たクーベリーシェ家の馬車がまだいてくれたのもよかった。

 今は馬車を探すなど到底無理な事だった。


 馬車の御車イアンに頼んで宿の前に来てもらう。馬車の中を少しいじってルヴィアナが寝転べる場所を作るとジルファンは急いでルヴィアナたちを迎えに行った。

 「さあ、急ぎましょう。ルヴィアナは私が連れて行きます」

 「はい、奥様一緒に」マーサが言う。

 「ええ、それでジルファン様あなたは一体どちらの方なのです?一緒に行くことは仕方がないとしても私はあなたを全く知りませんので、申し訳ないけど教えていただけませんか?」

 「奥様、今はその様なことを言っている場合ではありません。ジルファン様はお嬢様が修道院で知り合われた方です。お嬢様はそれはもうジルファン様に良くしていただいたとおっしゃられていましたので心配はいりません」

 「まあ、そうでしたの。それは失礼しましたわ。ではよろしくお願いいたします」

 ミシェルはそう聞いて安心したらしい。


 真っ暗な闇の中、ルヴィアナたちを乗せた馬車は走り出した。

 周りの景色など何も見えないしそんな状態でもなかった。

 ジルファンは馬車に乗る前にふたりにお茶を進めた。その中にはすぐには効かないが眠り薬が入っていた。

 魔族の森に行くとなるとっと反対するだろうし騒がれても困ると思ったからだ。

 ミシェルやマーサは喜んでお茶を飲んだ。

 ふたりはジルファンが魔族の森に馬車を走らせているとは思ってもいないだろう。 



 ジルファンは森の入り口まで来るとイアンに行ってその場で待機するように頼んだ。

 ミシェル達はすでに頭が朦朧とし始めているらしくジルファンが言う通りにした。

 そして彼は森の中に入って行った。

 ジルファンは瞬足で走りアルドにルヴィアナを預かってほしいと頼む。

 そして迎えについてきたのはランフォードの妹のコレットだった。

 「奥様、今夜はもう遅いので我が家で一晩お過ごしになられますようにとジルファン様から言いつかりました。屋敷まで案内しますのでどうぞこちらに」

 魔素の力で森の入り口からアルドの屋敷まで道が開けて外灯が揺らめいている様が目に移った。

 だが、これはアルドが見せている幻影だったが、ミシェル達はもう夢か現実かの境もわからないほどになっていた。

 言われるままにふらふらと屋敷に歩いていく。

 部屋はコレットの部屋を使わせてもらうことになった。

 「急な事ですのでベッドも足りず申し訳ありません」

 身重のコレットが親切に寝具などを持って来てくれる。

 ミシェルは眠いらしく何度もあくびをこらえている。

 「とんでもありませんわ。こちらこそご無理を言わせていただいて…ルヴィアナをベッドに運んでください。私たちはソファーで寝ます」


 コレットの部屋はアルドが貴族のような部屋にと調度品を整えた部屋だったのでミシェル達は怪しむこともなく用意された部屋を使うことに何の疑いもない。

 眠気がしてもうそんな事を考える事すらできなかった。

 マーサは床にミシェルが長椅子で寝ることになった。

 ルヴィアナはふかふかのベッドに横たわって変わりない様子を見るとふたりは安堵したらしくぐっすり眠り始めた。



 「アルド突然すまなかった」

 「いいんだ。ジルファン俺達は兄弟なんだ。これからは遠慮なくいつでも頼ってほしい」

 「ああ、ありがとう。実はお前に話をしたがもう一度言っておく。子供は決して人間に渡すんじゃないぞ」

 「ああ、もうわかってるさ。人間も魔族の力が欲しいからって無理やりそんな事をしていたなんて信じられん」

 「いざとなるとなぁ…それとランフォードの事なんだが…おいつは俺の息子なんだ。俺はランフォードの母親を好きになったがでも向こうは人妻だった。妊娠したと分かると彼女とは会えなくなった。まあ考えれば子供がいると分かっていたはずだが、今まではそんな事は俺に取ったら関係のない事だった。でもルヴィアナと知り合って目が覚めたんだ。すると色々なことが起こってな。ルヴィアナとランフォードは結婚の約束までしていたらしい。おまけにコレットとは兄妹なんだろう?驚くよな。まったく」

 「ああ、不思議だよな。人間が嫌いだったがコレットを知ってからいい人間もいるってわかったんだ」

 「ああ、俺もだ。人間に散々ひどい目にあわされた俺がこんな事をするのもおかしい気もするが、ルヴィアナを助けてやりたい。ランフォードと幸せになってほしいって思うんだ」

 「ああ、そのためならどんな協力もしたい」

 ふたりはその夜こんな話をした。

 ほんと、信じられないよな。









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