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転生したら災難にあいましたが前世で好きだった人と再会~おまけに凄い力がありそうです  作者: はなまる


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 「お母様、ランフォード様はご無事でしょうか?」

 「何を言ってるんです。無事に決まっています。でもルヴィアナあなたには申し訳ありませんが、彼との結婚は諦めてもらうしかないようです。国王が崩御されたとなれば王の遺言は絶対となります。あなたはきっとディミトリー殿下と結婚することになるはずです」


 ミシェルはそれを避けたかったが、きっともう手遅れだと思った。レイモンドがぽそりと言ったのが聞こえた。王が崩御ということ遺言状があるはずと…

 そうだわ。ニコライはきっと遺言状を書き直す暇もなかったはず。それに彼は結婚はやめないとはっきり言いましたから。

 ならばルヴィアナにも覚悟を決めるように言っておかなければなりません。

 貴族の娘として生まれた以上、やはり自分の好きな人と結婚出来る自由などないのです。



 そして一番大事なことを話しておかなければ…そう思った時ルヴィアナがミシェルの手を握った。

 「お母様、そんなひどいことを言わないで、私はランフォード様と結婚したいのです」

 「ルヴィアナあなたに大切な話があります。さあこんな所では、私の部屋に行きましょう」

 そうミシェルが言った時、ルヴィアナの顔が真っ蒼になって行く。

 「おかあさま…」

 絶句したルヴィアナは気を失ってしまう。


 ミシェルは倒れたルヴィアナに駆け寄った。

 今日ランフォードを助けに行くと言って聞かなかったルヴィアナ。

 呆れてミシェルは先に家に帰ってしまったが、心配で心配で居ても立っても居られなかった。

 そこにレイモンドと一緒にルヴィアナが帰って来たのだ。

 ルヴィアナはランフォードが国王に会いに行ったと泣き通しで、彼をどれほど愛しているかミシェルに話した。


 ミシェルはルヴィアナの背中を優しくさすりながら思い出した。

 かつて自分がどれほどニコライを愛していたか…婚約が決まって幸せの絶頂にいたはずだった。なのにカルバロス国の王女との縁談が決まって、ミシェルとの婚約は泡のように消えてしまった。

 彼への想いは消えることはなかったが、あまりのショックでクーベリーシェ伯爵と結婚してしまった。

 クーベリーシェ伯爵はとても温厚で優しい人でミシェルの傷ついた心は日に日に癒されていった。それにレイモンドはとてもかわいく彼の世話をするのが楽しかった。

 その後しばらくすると子供が欲しくなってミシェルはすぐにでも子供が出来ると思っていたが子供は出来ないうちに夫は怪我で半身麻痺になってしまう。

 ミシェルはまた不幸のどん底に突き落とされる。そしてニコライにすがってしまったのだ。

 ニコライもずっとミシェルの事を忘れられなかったと…

 そんな二人が燃え上がるのに時間はいらなかった。そして妊娠。ルヴィアナはニコライの子供に間違いなかった。

 でもそんな事を公にするわけにはいかずミシェルは夫が怪我をする前に妊娠したことにしてしまった。

 そのことが過ちだったと思ったがもう遅すぎました。

 あなたには私の二の舞はさせたくはなかったのです…


 ミシェルは大きくため息をつく。

 ハッと我に返ると急いでルヴィアナを部屋に運ぶよう侍従に言いつけてルヴィアナは自室のベッドに運ばれた。

 マーサが自分がついていますと言ってくれたのでミシェルは後は任せた。



 きっと兄上は今は王の崩御で大変でしょう。でもルヴィアナがニコライの子供だということはきっとまだニコライしか知らないはず…

 ミシェルはこの話をするべきか迷った。

 ルヴィアナには可哀想だがきっともう間に合わないわ。



 そんなところにレイモンドが帰って来た。

 「ただいま戻りました」

 「レイモンドそれで?」

 「はい、薬師の見立てでは、国王は心の臓の発作で亡くなったとのことで、薬殺などの疑いはないそうです。それで王の国葬は1週間後になるそうです。王の遺言通りディミトリー殿下が次の国王になります。そしてルヴィアナはディミトリー殿下と結婚するようにとのことでした」

 「やっぱり…」

 「それで、これは内々の話なのですが、どうやらシャドドゥール公爵は投獄されたようです。宰相のお考えでは牢を脱獄し、王の死への直接的な関与はないものの国王の心臓発作が起きる要因を作った可能性は大きいと…彼が牢から抜け出し国王に話をしに行った直後発作に見舞われたようでして、宰相もこの事は隠しようもない事実だからと言われており…」

 「それでシャドドゥール公爵はどうなるのです?」

 ミシェルの顔が強張る。呼吸も止めて次の言葉を待つ。


 「はい、それが…シャドドゥール公爵には爵位を返上していただくと、そして我がクーベリーシェ家を新たな公爵家にするつもりだとおっしゃっておりました」

 途端にミシェルがほっとしたように息を吐きだした。

 「では我がクーベリーシェ家が公爵家になると?兄上はおっしゃったのですね」

 「はい、そうです。それでシャドドゥール公爵は領地没収。王都シュターツには今後一切入ることは出来ないようにすると‥でもひどすぎませんか?ランフォードは何にもしていないんですよ!だから国王に話をしに行ってたまたま運悪く王が発作を起こしただけで…いえ、もちろん国王が亡くなったことは悲しいです。でも、私は納得がいきません」

 レイモンドは酷く憤慨して声を荒げる。


 「ええ、もちろん私だってレイモンドの気持ちはわかりますしルヴィアナだってどんなに悲しむか知れない。でもこれはもう決まった事。私たちが口出し出来ることではありません。レイモンドあなたは公爵家の人間としてこれから国政を支えて行かなければなりません。それにルヴィアナは王妃としての責任を果たさなくてはならないのです。しっかりしなくては…さあ、もう休んだ方がいいです。明日から忙しくなりますよ」

 レイモンドは苛立たし気に大きく脚を踏みだすと自室に戻って行った。


 ミシェルは、ちょうど廊下でマーサに会いルヴィアナの様子を聞いた。

 「奥様、ルヴィアナ様は先ほどお目ざめになりました」

 「そう、今夜はもうぐっすり眠れるようにお茶を煎れてやって、明日ゆっくり話をしますから」

 「はい、わかりました奥様」

 ルヴィアナはその日何も知らされることなく眠りについた。



 ***********


 翌日目を覚ましたルヴィアナは、国王が亡くなった事やランフォードがあの後どうなったかを確かめもせず寝てしまった事を思い出す。

 もう、私ったらランフォード様が大変な時に…マーサが着替えさせてくれたのだろう。きちんと寝間着を着ている。

 急いで起き上がると顔を洗い髪をとかして簡単なワンピースドレスに着替えた。

 部屋を出て兄のところに行く。

 「お兄様起きていらっしゃる?」

 「ああ、ルヴィアナか?入ってもいいぞ」

 そう言われてルヴィアナは兄の部屋に入る。

 すぐに兄がまだ起きたばかりだと分かる。

 「お兄さまこんなに朝早くから申し訳ありません。ですが昨日のご様子が知りたくて…」

 「ああ、国王は亡くなった。遺言状によるとディミトリー殿下が国王にルヴィアナお前はディミトリー殿下と結婚しなければならない」

 「そんな!無理です。私にはランフォード様がいます。お兄様もそれはご存知でしょう?」

 「だが、事情が変わってしまった。これは絶対命令だ。これに逆らうことは誰も出来ないんだ。それはわかるだろう?ランフォードだってお前と結婚したいと言ってもそれはもう通らない。それにランフォードは爵位を返上することになった」

 「それはどういうことです?」

 レイモンドは簡単に説明をする。ルヴィアナはそんなはずはないと怒ったが宰相や議会が決めたことをどうすることも出来ない。


 「諦めろルヴィアナ。お前は王妃になるんだ。その覚悟を決めなければならない。私はこれから王宮に出向かなければならないから、今のうちにゆっくり休んでおきなさい。これから忙しくなるはずだから」

 「お兄様、私、王宮に参ります。ランフォード様にお会いして話がしたいのです」

 「彼に会うことは出来ない。一切の面会を禁じられている。いいかルヴィアナもう諦めるんだ。いくら話をしたところでお前は殿下の妃になる身。勝手なことはもう許されない」

 「いやです。殿下と結婚なんか…絶対に嫌ですから…」

 ルヴィアナはレイモンドの部屋から飛び出し自分の部屋に戻った。

 

 泣いても何も変わりはしないとわかってはいても涙はとめどなく流れ出た。

 せめてランフォード様にお会いしたい。

 彼から貰った指輪にそっと口づける。


 不意に頭にランフォードの声が聞こえた気がした。

 「ランフォード様?」

 ”ルヴィアナ…ルヴィアナ。愛しいルヴィアナ。俺は神に誓って何もしてはいない。俺達が部屋に入った時には国王は死んでいた。だが、牢を勝手に出たことで信用を失ってしまった。この国では貴族は国王の命令には逆らうことは出来ない。そう言う運命なんだ。だからルヴィアナ。君がディミトリーと結婚するのは間違いないだろう。そして俺は王都を追われ君とはもう会えないだろう。でもルヴィアナずっと君を愛してる。君に渡した指輪は魔力が込められていて俺の考えていることが伝わるようになっているんだ。でも君は王妃にならなければならない人。俺の事は忘れて幸せになってほしい。だから指輪はもう必要ない。指輪は捨ててくれて構わないから…君とはこれでお別れだ。さようなら愛しいルヴィアナ。”


 「いや!ランフォード様と別れるなんていや…」

 一人言葉が零れる。でもその声はランフォードに届くはずもなくルヴィアナはまた泣き崩れ途方にくれた。



 



 


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