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 ルヴィアナはレイモンドと一緒にクーベリーシェ家の屋敷に帰って来た。

 ミシェルは大喜びしたがショックで寝込んだままだった。

 「お母様、具合はいかがですか?」

 「ルヴィアナ?ああ…ルヴィアナあなたなの?顔を見せて頂戴…」

 ミシェルは頬がこけて痩せていた。

 ルヴィアナはやっぱり母を心配させたことを深く反省した。

 「お母様心配をかけてごめんなさい。どこか痛いところはないですか?」

 「大丈夫ですよ。あなたが帰って来たんだから…」

 ミシェルは起き上がるとルヴィアナを抱きしめた。

 でも、お腹の調子が悪いらしくすぐにまた横になった。

 「まあ、大変。お母様じっとしてて下さい」

 ルヴィアナはすぐに母のお腹に手をかざす。力を込めて痛みを取り除くように念じる。


 ミシェルは何をするのかとルヴィアナを見つめた。

 驚くことに次第にお腹の痛みが引いて行ってしまいにはすっかり痛みがなくなった。

 「ルヴィアナ。あなたそんな力どこで…」驚きで言葉が出てこない。

 「修道院の診療施設で出来るようになったのよ。私、女性ももっとこの力を使うべきだと思うの。お母様にだってその力があるはずでしょう?ただ、使えないと思い込んでいるだけで…王族の方々のほとんどの女性が魔源の力を無駄にしていると思うの」

 「だめ!ルヴィアナ。その力は子供を産む時に必要なのよ。あなたの子供に魔源の力がなかったらどうするつもりです?」

 「それは…」

 そんなこと考えていなかった。でも、魔源の力って限界があるものなの?車のガソリンじゃないんです…燃料切れって?

 「いいですかルヴィアナ。こんな事二度としないで、あなたは王妃になるのですよ。王太子に魔源の力がなかったらどうするつもり?」

 「そんなことどうしてわかるのです?」

 「瞳を見れば一目でわかるわ。金色やアメジストは力のある証拠ですもの」

 「でも、ディミトリーは違いますわ。彼は力がなくても王太子だったではありませんか」

 「だからランフォードに変わったではありませんか。きっと魔源の力が運命さえも変えたのかもしれません。それほど絶大な力を持っているのです。だからその力を無駄にするなど絶対にあってはならないのです」


 無駄になんか!そう言いたかったが、心配をかけた母にルヴィアナは何も言えなくなった。

 「わかりました。では、お母様、私は部屋に戻ります」

 「ええ、あんなところではゆっくりも出来なかったでしょう。ゆっくりしなさい」

 「はい、お母様」

 ”とんでもありませんわ。私すごく楽しくてここに来て一番有意義な時間でしたわ。”と心の中でつぶやく。

 まあこれ以上母と言い合っても仕方がないと黙って部屋を後にした。


 それにしてもジルファンはそんな事言ってなかったわ。

 魔源の力は使えば使うほど増幅して行くって言ってたのに。だから私の力だって日に日にたくさんの人に仕えるようになって行ったのに…お母様は間違ってるわ。


 その翌日だった。

 いきなりシャドドゥール公爵が尋ねてきた。

 「ルヴィアナ嬢にお会いしたい」

 「これはシャドドゥール公爵様、すぐに」

 侍女はまず奥様に話をした。ミシェルはすぐにシャドドゥール公爵を出迎えに入り口に向かった。

 「まあ、シャドドゥール公爵様。いつお戻りになられたのです?」

 「たった今です。他の者はまだですが、私は一足先に帰って来たところでして…それと言うのも、すでに結婚のお話はお聞きと思いますが」

 「ええ、もちろんです。次期国王おめでとうございます。それにルヴィアナの事よろしくお願いいたします」

 ミシェルは改めてシャドドゥール公爵に挨拶をした。

 「まあ、こんな所ではお話も出来ませんわ。さあ、どうぞ中にお入りになって下さい」


 シャドドゥール公爵をリビングルームに通す。

 そしてルヴィアナにも支度をして下りてくるように伝える。


 「失礼します」

 ルヴィアナは美しいブルーのドレスでリビングルームに入った。

 そこにはランフォードが…彼はルヴィアナを見たとたんに立ち上がった。

 「ルヴィアナ嬢…何ともお美しい」

 はぁ…と感慨のため息を漏らす。

 はちみつ色の髪はきれいに結い上げられて、ひと房の髪が耳元で揺れている。デコルテからは鎖骨がくっきりと見えてこぼれるような胸元と腰までのラインは見惚れるほど締まっている。

 「ランフォード様、ご心配しておりました。ご無事で何よりでした」

 「ありがとうございます。あなたこそ修道院に行かれていたとか…そこまでされるにはよほどディミトリーの事が?」


 「まあ、ふたりとも、さあ座って、今お茶が来ます。話はゆっくりできますから」

 ミシェルはその話は避けたかった。修道院に行っていたことがもう彼に知れているとは…

 ふたりはソファーに向かい合わせに座る。

 

 「ああ、そうでした。すみません。この話はローランから聞いたのです。ローランとは手紙のやり取りをしていて、それでついルヴィアナ嬢が心配で余計なことを言いました」

 ルヴィアナはランフォードの優しさにうれしくなったがディミトリーの事はルヴィアナ自身の事で、転移して来た杏奈にはあまり関係ない事で…とも言えず。

 「いいえ、私が安易に勝手なことをして心配をかけたのです。ディミトリー様があまりにひどいことをおっしゃって…あっ、でも、もう気にしていません。あの方も罰を受けられたみたいですし」

 「では、もうディミトリーの事は気にしていないと?」

 「はい、大丈夫ですわランフォード様」

 ルヴィアナはランフォードを見つめた。

 彼の心配そうな金色の瞳が自分に優しく向けられているのを見て体温がぐっと上がった気がする。

 ああ…ランフォード様やはり素敵です。

 あんなにロッキーが好きだと思っていた気持ちは、今やランフォード命とでも思うほど彼が好きになっていた。


 「ルヴィアナ本当ね?シャドドゥール公爵となら問題なく結婚できそうなのですね?」

 「もう、お母様…」

 ルヴィアナは本心を見透かされて耳から首のあたりまで真っ赤になった。


 「これは…話が早い。私もそのことをいつ切り出そうかと思っていたところで…」

 「それは…どういう?」

 「私もルヴィアナ嬢、あなたと結婚出来るのがうれしいです。実はあなたは殿下の婚約者だとずっと言い聞かせて来ました。まさかこんな事になるとは夢にも思っていませんでしたから」

 「それは本当ですか?」

 「もちろんです。あなたを妻に出来るなんて本当にうれしい」

 ランフォードはたまらなくなって、前かがみに立つとルヴィアナの手をぐっと握りしめた。


 その時だった。

 彼の今までの人生が脳内に流れ込んできた。


 小さなころから公爵の跡取りとして厳しい教育を受けて来たこと、年の離れた妹を可愛がっていた事、ご両親が事故で亡くなって公爵家を継いだこと、そして魔獣征伐に出かけて大けがを負って死にそうになった。

 「ウソ…うそでしょ」

 その後広がった映像に身体が強張る。

 ロッキーが父親と一緒に現れる。父がロッキーと名付けた人。どうして…ええ?まさかこの人ランフォードだったの?

 ロッキーがランフォードって事?でもどうして…記憶が混乱してまともに考えがまとまらない。

 ランフォード様が死にそうになった時転移したって事?

 でも、顔が違う、確かに似ているけど違う。

 それはあの日父の車でひかれた人の中に転移してしまったからって事?

 そして1年近くも私(杏奈)のそばで暮らして?

 そして命を落とすと同時に元のこの世界に戻って来たってっこと?

 ランフォードがロッキーでロッキーがランフォード。ふたりは同じ人…


 脳内で次々に謎を解明していく。まるで名探偵みたいに…

 どういう事なの?これは…







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