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能力の開花

よろしくお願いします。

 私がパーティーを去ってから一年の月日が流れた。


 相変わらず、アルソーは私の家を訪れて来る。昼間はパーティーと塔の探索、夕方は私の家に来るのが、彼のルーティーンらしい。


 家の庭の弓の練習場へと、私は彼を連れて行く。アルソーに私の弓の腕を披露したかったからだ。


「アルソー、ちょっと見ててよ」

 横にいる彼にそう言って、私は十メートル先にある的を睨む。


「どれくらい腕が上がったか見物だな」

 アルソーはニヤリと笑って、私と的を交互に見ている。


 私は三本の矢を手に取ると、その三本を同時に弓で放つ。三本の矢は風を切りながら、的に吸い込まれる様に突き刺さる。


「三本同時かよ。しかも全部当たってる。スゲェな」

 アルソーは舌を巻いて、私を見ている。


「今度はこれを投げて」

 手の平に乗るくらいのボールを私はアルソーに渡す。


「何だよ、これ? まさか、これを投げたのを射るのか?」

 

 アルソーは驚いてボールを受け取る。私は無言で頷く。そして、弓矢を構える。


 彼は理解した顔を浮かべ、ボールを放り投げる。遥か彼方上空までボールは舞い上がる。天高く舞い上がったボールは、まるでこの距離は射抜けまいと私に挑戦してるみたいだ。


「かなり張り切って投げてくれたわね」


 私はニコリと笑顔を見せ、上空に向け弓矢を構える。そして、矢を放つ。


 矢は風切り音を轟かせ、上空へと昇って行く。そして、ボールの中心を捉える。矢はボールの真ん中を貫通し、地面へと落下する。


「当てやがった。ホントかよ? まさにスナイパーだな」


 アルソーは感心した表情で私を見ている。私も満更ではない顔を彼に見せる。


「言ったでしょ。貴方達のパーティーに必ず復帰してみせるって。本職の回復役の方も万全よ。薬学もかなり勉強したもの。だから、私をパーティーに戻してよ」


 精一杯アルソーに自分のスキルを私はアピールする。この一年間、ずっと努力して来た。毎日、毎日、弓の練習をして、薬学の勉強をして来た。努力がやっと報われる、そんな気がして来たところなのだ。アルソーの目をじっと見つめて、私は返事を待つ。


「回復役は既にいるからな。この間もそう言ったろ。クレアラが戻りたいと言っても無理だと思うぞ。そのメンバーに申し訳ないし、ハインリヒトが許可を出さないと思うし」


 アルソーは困った表情で私に返す。私はアルソーに街での出来事を話していなかった。話すと余計にパーティーに戻れないと思ったからだ。しかし、私は確認したい事があった為、敢えて話を切り出す。


「この間、街でハインリヒトとアイリさんが二人で歩いているのを見たのよ。イチャイチャしながら。あの二人って、ひょっとして付き合ってるの?」


 私の質問に対し、アルソーは驚きの顔を見せる。


「え、そうなのか? でも、おかしいな。最近、あの二人は何かよそよそしい感じだし。逆に喧嘩して、仲が悪そうな雰囲気だけどな。付き合ってないと思うけど。いつ見たんだよ?」


「二ヶ月くらい前よ」


 アルソーは眉根を寄せて考え込んでいる。思い当たる様な、無いような、そんな複雑な顔をしている。


「アルソーはハインリヒトから何も聞いてないの?」


「何も聞いてないよ。アイツ、誰かと付き合っていても俺に言わないんだよな。昔から、そういう所がある。親友なのにな」


 ハインリヒトは恋愛タイプ回避型だ。付き合っていても、周りに隠す傾向がある。それは、恋人同士と言うカテゴリーに縛られたくない性質があるからだ。


 私はアルソーの話にナルホドと納得する。


 かつての私とハインリヒトの恋愛の事を、私は思い出していた。アルソーの話から推測すると、どうやらハインリヒトとアイリの恋愛も、同じ様に上手くいっていない状態ではないだろうか。


「アイリさんは最近、どんな顔をしてたの? 楽しそうだったとか、辛そうだったとか?」


「どんな顔って、何か思い詰めた様な、悩んでいる様な、そんな感じかな? アイリに何かあったのかって聞いても、何も教えてくれないんだよ。ハインリヒトと喧嘩してるのが原因かなって俺は思ってたんだけど」


 アルソーは頭を搔きながら答える。彼なりに心配をして仲を取持とうとしてたみたいだ。相変わらずアルソーは優しいなと私は少し微笑む。


「ありがとう、アルソー。私、アイリさんと話してみる」


「え、え、どういう事だよ? 何でお前がアイリと? 訳が分からねえよ」


 アルソーは困った表情で私を見ている。そんな彼を私は放っておいて考え始める。


 アイリさんと話をして、私自身の気持ちの確信を得たい。恐らく、彼女も誰かに自分の気持ちを分かって貰いたい、そう思っているはずだ。


 あの時の私がそうだった。彼女と私はスゴく似ている。


 アイリさんと話をしなければならない。私はそう思い、行動に移した。



   *   *   *   *



 かつて自分が泊まっていた宿屋を私は訪れる。アイリさんがここで泊まっている、アルソーからそう聞いていた私は彼女が出て来るのを待った。


 宿屋に行けば、もちろん彼女にすぐに会えるだろう。しかし、ハインリヒトに会うのは絶対に避けたい。ハインリヒトもここで泊まっているのだ。


 だから、私はアルソーに彼女との仲介役を買って出て貰った。私と言う存在を明かし、彼女と話したい意思を伝えて貰った。彼女は私と会う事を了承してくれた。会う日時はアルソーから聞いた。


 アイリさんが宿屋から出て来る。かなり疲れた顔をしている。私は宿屋から少し離れた路地で彼女に声を掛けた。


 





 


 





 




 





 




読んで頂きありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。

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