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06話 「その貫禄は10代じゃないだろう」

 カランカランカランカラン‼︎


 けたたましく鳴るドアベルの音に、ほらね、と肩を落とす大吉。


「帰ったならすぐ顔出しな‼︎」

「おばちゃん、くるのが早いんだよ!」


 おばちゃんは、大鍋を持ってズンズンとカウンターキッチンの方にやってきて。どっこいせ、と言いながら置いた。


(一体いつ用意したんだよこの鍋の中身⁈ おっちゃんと会ったのついさっきだぞ⁈)


 その様子をお腹を抱えて笑いをこらえているクゥ。


「ん? この子は⁇」


 笑いを必死に堪えているクゥを見ておばちゃんが聞いた。


「はじめまして! 大吉くんの遠い親戚で、アーティファクト関係の仕事してるクゥと申します!」


(親戚で決定してるし。アーティファクト関係の仕事って?)

 と内心でツッコミながらも、楽しそうに応対するクゥを見て、任せることにした。


「しばらくこちらでお世話になることになりましたので、よろしく!」


 疲労した頭の大吉がほうけているうちにもどんどん話は進んでいく。


「クゥちゃんってのか! 若いのにちゃんと挨拶できて、偉いねぇー!

 わたしゃ向かいの金物屋のアヤコってんだ。よろしくね!」


「若いだなんてそんな~! よろしくお願いします」


 仲良く握手してる二人を唖然あぜんと眺める大吉。


 鍋返すのはいつでも良いよ、またくるよー! と言いながらおばちゃんが出ていくのを笑顔で見送るクゥ。


「アーティファクト関係の仕事って? マスターでなく?」

「ここではそう呼ぶの?」

「アーティファクトを扱う仕事をする者で、一からアーティファクトを作れる者、その資格を持つ者のことをマスターと言うんだ。耳につけてるそれ、自分で作ったものなんだろ?」


 世に出回るアーティファクトやレプリカの多くは今の時代、もうほぼ型が決まっている。新しいデザインの物は、よほど遺跡の奥深くまで潜って新たに発掘するか、自作するしかない。


 クゥのつけているそれは、遺跡の奥深くに眠っていたものには見えず、本人も作ったばかりの、と言っていた。


 それに触れたのは、拾って渡した一瞬だったが、大吉はかなり力の強いアーティファクトの気配を感じ取っていた。

 それを作ったのが彼女ならば、そのレベルは間違いなく超一級のマスターだとも。


「大吉くん」


 再び君付けで呼ばれ、やはり何故か寒気がしたのですぐさま提案をする大吉。


「呼び捨てで頼む」

「……なぁに、なんかこだわりでもあるの……?」

「……いや、何となく……」


 言い淀む大吉に対し、クゥは間をおいて言う。


「しょうがないなー。

 じゃ、大吉。もう一度詳しい自己紹介をしましょう」


 もう一度とは。


「あたしの名前は…………まぁもうクゥでいっか。

 よろしくね! クゥってよんで!」


 なんなんだ、その自己紹介は。と思いながらも付き合う大吉。


「よろしく…………」

「歳は三十五、子供は二人、職業は主婦兼ハンドメイダー」

「ちょっと待てくれ」


 さっきもそう言っていたが、どう見ても十四、五歳の少女に二人の子がいるわけはない!! と大吉は口を挟んだ。


「クゥ…………さん。

 君はどう見ても、十代にしか見えないんだが…………?」


 三十五歳だというのがどうしても信じられないが、一応自分よりも歳上だという人物を呼び捨てにするのに抵抗のあった大吉は、さん付けでクゥを呼んだ。


「やだ~も~! そんなお世辞言ったって何も出ないわよ~? 

 若白髪が気になっちゃって、ブラウンのメッシュ入れちゃうくらいには歳よ!

 って言わせないでぇええ‼︎ あと、呼び捨てでいいわよ!」


 そう言いながら右手で自分の三つ編みの先を筆のようにして中空に“の”の字を書く。


 その口調やノリ、貫禄……といったモノは、確かに十代という雰囲気ではない。

 アヤコおばちゃんともいいノリで話していたし。


 大吉は手元にあった金属製の丸い盆を持ってクゥに見せる。


「鏡がわりに、見えるか? 自分の顔」


 少し曲がった盆だけど、そこには黒い艶のある少しウェーブのかかった前髪に、長い髪を一本いっぽんの三つ編みにして右肩から垂らしている、お肌がもちもちぴちぴちの少女が映る。

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