勇者
前のお話の親友クンです。
お前、あの話マジもんだったんだなぁ。
疑って悪かったよ。・・・ってイテェだろ、コラ。
叩くなよ、ゴメンって・・・わわ、待て待てそれ止めろ!
アイス持ったまま叩くな、クリームが垂れるだろ!
ああ? 疑う方が悪いって? そりゃそうだけどよ。
うん。あの後行ったんだ、そのアパート。スゲェとこにあんのな、あれ。
途中何度か帰りかけた。
気分わりぃな、虫の山盛りってのは。思わず叫んじまったよ。
まあでも、ここまで来たら目にしてやるかと。覚悟を決めて突っ込んだ。
そしたらさ・・・確かにあったな、剣の刺さった岩が。
正直、どうしてあるんだって思ったよ。これはないって。
え? どういう意味かって? う~ん・・・それなぁ。
聞いたらお前、笑うだろずぇったい。
・・・まあいいや。
あれな、あの剣。オレが使ってたやつだった。
うん? ほれ、この前の休みにさ、オレいなかっただろ? カラオケ誘いに来てくれたんだってな。
あん時、呼出し喰らってさぁ。異世界に。
毎度毎度こっちの都合なんてまるっと無視しやがるんだ、あいつら。
『異世界のお方、魔王を倒すためお力を!』言葉までおんなじ。
魔王城へは転送陣でパパッと飛べるんだぜ、嘘だろって突っ込んじまったよ。
ならてめぇらで行ってこいやぁっ!
・・・ああ、悪い。少し壊れた。思い出したら腹立ってきてさ。
うん。そのまま魔王城に飛んで、決闘してきた。
決着、は・・・どうなんだろ?
待て、怒るな、手を振り回すんじゃない! アイス食っちまえ、さっさと! わかってる、ちゃんと説明するから落ち着けって!
ふう・・・あのさ。
オレの体質、知ってるだろ、お前? ああ、召喚されやすくって、おまけに勇者だとか賢者とか呼ばれるってこと。
今回も勇者呼ばわりでさ。それはまあ、いい。良くないけど、今はいい。
魔王城で決闘して、サクッと魔王を倒したんだけど・・・そのあと魔王がさ。
『このまま終わらぬぞ。終わらせぬ!』とか言って、何やら呪文を唱えて。
俺の剣に吸い込まれて、そのまま剣ごと消えた。
訳が分かんなかったけど、魔王が消えたからいいだろ、と思って、還ってきた。
そしたら、あの岩があって。あの剣があって!
あれ抜いたら魔王が出てくるんだろ? 相手なんてしたくないっての。
だから、折ってきた。うん、バキッと。
ははっ、すっきりしたぜ、オレ的には。
でもな、どうして異世界の奴ら、勇者なんて呼ぶんだろうな?
あれ、ぜってーその世界に居るはずなのによ。探しもしないでやんの。
職務怠慢だね、あいつら。
そんなもんだって? そりゃそうかもだけどよ。いい加減飽きた。
剣、折っちゃいました・・・どうしましょう!?