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神様との再会、そして聖女へ

「アイリーシャに何をする!」


 エドアルトが、神にくってかかっている。


「我言ったでしょ、強引にちゃちゃっと結ぶよって。だいたい、ルルは、他の人間が呼び出したんだから、アイリーシャとは本来契約できないんだよ。そこ強引にやったんだから多少の不具合は生じるってばさぁ」

「どういうことですか?」


 ようやく、落ち着きを取り戻してきた。自分がエドアルトの腕の中にいるのに気づいて頬を染める。

 慌てて身体を起こそうとしたけれど、身体に回された彼の腕に、ますます力がこめられただけだった。


「本来、聖獣と契約する儀式ってのは、資格を持った人間が、聖獣を呼び出して契約するわけ。資格を持たない人間が、強引に呼び出したところで契約できないんだよ――まあ、まんまと呼び出されたのもいたけどさ」


 神様にちろりと見られて、ルルはうずくまった。何かあったらしいけれど、詳しいことは聞くのはやめておこう。

 聖獣は、こことは違う世界で、生きているそうだ。

 時々、こちらの世界に来ては力を貸してくれるけれど、それには資格が必要らしい。


「資格って、どんな……? 資格を持ってないのに、呼び出せるものなの?」

「資格は、聖獣との相性だよね。それと、魔力の量。聖獣をこちらの世界にとどめておくには、やっぱりある程度の魔力は必要になるから」


 聖獣と契約すると、体内にためることのできる魔力の量が増えたり、今まで使えなかった魔術が使えるようになるそうだ。

 だが、儀式を行っても、聖獣の世界とこちらの世界を結ぶことができるのは年に一度。契約することのできる聖獣は一人一頭だけ。

 さらには、儀式を執り行う人物によって、契約のためにこちらの世界に招くことのできる聖獣の数というのも大いに変わるそうだ。

 そのため、昔、聖獣と契約するためにすさまじい争いが繰り広げられたらしい。

 あまりにも争いが続き聖獣達が胸を痛めたため、王家は聖獣を招くための儀式は執り行えなくなったとしたのだそうだ。


「なんで、資格がないのに、ルルを呼び出すことができたんですか? 王家の人間が協力したから……とかでしょうか」


 エドアルトは、相手が神というので、丁寧に接することに決めたらしい。こんな姿なのに、気にもしてないようだ。


「我、寝てた! 軽く十年くらい!」


 まったく悪びれていない様子で、神は言い放った。


「は? 寝てた?」


 目をむいたのはアイリーシャの方だった。手を伸ばし、神の身体をとらえたかと思ったら、前後にがっくんがっくんと湯探る。


「寝てたって! 十年も寝てたって! 神聖魔術の使い方教えてくれるって言ってたのに!」

「だって、我の力も完全じゃなかったしぃ。君をこっちの世界に連れてくるのにも力を使ってしまったしぃ。まあ、大変だったんだよいろいろと」


 そう言えば、そんなことを言っていたような気がしなくもない。アイリーシャをこちらの世界に生まれ変わらせるのに、彼は大変な苦労をしたとかなんとか。


「それで、呪いを解くのにはどうしたらいいんでしょう?」

「君、案外鈍い? もう、君の体の中にあるというのに」


 首を傾げ、神はこちらを見つめる。左右で色の違う瞳に見つめられ、落ち着かない気分に陥った。胸に手を当て、深呼吸を繰り返す。


「……あ」


 言われるまで気づかなかったとは、どうかしているみたいだ。身体になじんだ四つの属性。その他に、もうひとつ。今まで知らなかった魔力がある。


「――これは」

「うん、それが神聖魔術。神が君に授けた力だよ。まあ、神って我のことなんだけど。聖獣と契約してないと使えないんだよねー」


 十年ぶりくらいの再会なのに、神様の態度はあまりにも軽い。

 それでも、彼にいろいろ教わっていた頃のことを思い出して、懐かしくなった。


「でもさあ、君、その力に目覚めてしまったら今後うんと大変になるんだけど大丈夫?」

「……全力で隠れる。だって、あなたに教わったんだから」


 アイリーシャがそう言うと、ふぅんと首を傾げ、神様はエドアルトの方へとことこと歩いていく。


「あの子を助けてあげてくれる?」

「神様!」

「あの子、これからすごい大変だから」


 もう一度神様をたしなめようとしたけれど、彼はそこで動きをとめた。


「あ、我も大変なんだった。えっとね、アイリーシャ。君にやってもらわないといけないことがあるんだけど、また来るよ。前人間に渡した槍が見つからなくてさぁ」

「見つからないって!」


 たぶん、それって聖槍のことでは――いや、間違いなくそうだ。それが見つからなければ大変なことになる。


「ええと、ルル。あとは頼んだ。じゃあね」


 じゃあねって、そんな軽い……。

 呆然として見送っていると、ルルがアイリーシャの前で頭を下げる。


「大丈夫、頼まれた」

「ああもう、ルルってばなんていい子なの!」


 アイリーシャは、ルルをぎゅっと抱きしめた。柔らかな毛並みに顔を埋めるとホッとする。


「アイリーシャ……神に頼まれたからというわけじゃなくて、俺にも君の手助けをさせてくれ」

「いいんですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます」


 アイリーシャは微笑んだ。

 自分が望んだのとは違う形だけれど、アイリーシャにもできることがある。


「まずは、呪いをかけられた人を助けて回りましょう。神殿に、何人かいるそうですからまずはそこから」


 けれど、今はそんなことを考えている場合ではない。

 ルルを従えて歩き始める。

 自分の立場が変わることもちゃんと理解しているから大丈夫だ。


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