1話 アンドロイドを買おう!
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高校生の癖して平日の昼間からネトゲをしていたニートの俺の耳に、玄関からチャイムの音が響いてきた。
先日ネットで注文したアレが、やっと届いたのだろう。
俺は集中してプレイしていたゲームを一時中断し、玄関へと向かった。
なぜ集中していたゲームを止めてまで取りに行くかというと、両親は仕事で家にいることが少なく、実質この家に住んでいるのは俺だけだからだ。
例え俺が致し中でも、自分で受け取りに行くしかない。
配達員からかなり大きいダンボールの箱を受け取った俺は、少ない筋肉をフル稼働してそれを持ち上げた。
「クソっ、めっちゃ重てえな……。もう少し運動しといた方がいいのかな……」
一人でボヤきながらリビングまで運んだ俺は、それをゆっくりと床に下ろした。
これの到着を待ち望んでいた俺は、胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
俺は肩で息をしながら梱包を剥ぎ、ダンボールの蓋を開けた。
中には小中学生のような見た目をした金髪の女の子が、まるで眠っているかのように横たわっている。
これは決してえっちな人形ではなく、奉仕型アンドロイドというものらしい。
高校生になってから両親が家に居ないことが多くなり、そのため学校をズル休みする日が続いて、気づけば不登校になった俺は家事の面倒くささを痛感していた。
毎日家事を行ってくれていた父さん母さんには感謝しかないが、自分でそれを熟すのは面倒だ。
そこで、ネットで見つけた奉仕型美少女アンドロイドというものを購入してみた。
アンドロイドの見た目は複数のバリエーションがあり、俺は好みの金髪ロリで注文した。
今日からこのアンドロイドに、家の事は全てやってもらう。
「よっこらせっ〇す」
これからの楽ちんニート生活に夢を膨らませていた俺の前で、箱の中で寝ていたアンドロイドが、人間のそれと遜色ない動作で立ち上がった。
なにか不穏な言葉が聞こえたが、気のせいだろう。
少女は着ている純白のワンピースの裾を払い、無表情のまま腕を組んで俺の顔を見つめた。
……あれ、なんかこの娘の表情固くない?
なんかもっと『ご主人様〜♡』みたいな可愛い娘だと思っていたんだが……。
俺たちが無言のまま見つめあっていると、少女が口を開いた。
「お前が私の主か? さっきから何見てんだ。喧嘩なら買ってやる。いいぞかかってこい」
少女の声に機械っぽさは全くと言っていいほど無く、むしろ人間のような……いや、それよりも口悪過ぎじゃね?
ガンを飛ばしながら指でクイクイと挑発してくるチンピラアンドロイドに、平和主義者の俺は主としての威厳を示しながら応えた。
「け、喧嘩をする気は無い。今日からお前のご主人様となる菱川 凪だ。早速だが部屋の掃除をしてもらおう」
「えぇ……お前が雇い主かぁ……。なんかやる気なくすなあ……」
俺の顔を見ながら露骨に嫌な顔をする失礼なアンドロイド。
「やる気がなくてもやるのがお前の仕事だろ。こっちは大金叩いて買ったんだから。それで、えっと…………名前はなんだっけ?」
リビングのソファに寝転がり早速サボりだしたアンドロイドを見下ろしながら、俺は名前を尋ねた。
「私か? 私の名前はメリスだ。これからよろしく。奉仕型アンドロイドとして、頼まれた仕事は何でも熟してやるさ。望みは?」
腹をボリボリと掻きながら、説得力の無い働きます宣言をしたメリスに、俺は一つ目の指示を出した。
「とりあえずその口調を変えてもらおうか」
「は? なんでだよ? 私の個性を否定するつもりか?」
「お前さっきなんて言ったか覚えてるか?」
次の粗大ゴミの日にこいつを捨てようと俺は決意して、止めていたゲームを再開した。