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東方二次創作 普通の魔法使い  作者: 向風歩夢
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出てこない魂

「殺生までするつもりはありませんでしたが……、生かすにはあまりにも未知数でしたからね。悪く思わないでください」


 妖夢は首を切断されたメアリーの体に向かって合掌する。しかし、すぐに異変に気付いた。


「……魂がでてこない……?」


 ここは冥界。死者の魂が集まるところである。冥界で死を迎えた者からはすぐに魂が抜け出てくるはずだ。しかし、メアリーの体からは一向に魂が出てくる気配がない。


「一体何が起こっているんです……!?」


 妖夢が予想外の状況にうろたえる中、メアリーの『死体』が動き出し始める。


「そんなバカな。確かに首を斬ったのに……!」


 メアリーの体は胴体だけで動き出し頭部を拾い上げるとそれをくっ付けた。腕をつなぎ合わせたときと同様に光の糸が現れ切断されていた首部分がきれいに縫合される。あっけに取られた妖夢をよそにメアリーはこれまた切断されていた左腕を拾い上げ、これも縫合する。


「な、なんで間違いなく死んだはずなのに……。なぜ魂が剥がれないのですか!?」


 妖夢は大きな独り言を叫んだが、すぐに一つの結論に行き着いた。


「そ、そうか。あなたは既に『死んでいた』んですね……? キョンシーと同じような類の術で動いているのですか……。死体に魂を無理やりつなぎ合わせて動いている……! ……ですが、信じられません」


 妖夢がメアリーの存在を信じられないのには理由がある。通常キョンシーが冥界に来ればその時点で魂が死体から切り離されるのだ。冥界は生者の住む顕界から魂を引き付けるほどに、魂を呼び寄せる強い力を発している。故にキョンシーなど生きている者よりも弱い力で体とつながっている魂は冥界に入ればすぐに分離することが常なのである。しかし、メアリーはそうではない。死者であるにも関わらず、魂が分離しないのである。これはメアリーの魂が生者と同じくらい強く体と繋ぎ合わされていることを示唆していた。メアリーを『造った者』は相当の実力を持った術者であることがうかがわれる。


「……どうすれば……。……考えるまでもありませんね。私にできるのは斬ることだけ。斬って斬って斬りまくるだけです!」


 妖夢は復活したメアリーにこれでもかと斬りかかる。メアリーに攻撃する機会を与えないよう手を緩めず斬り続けた。しかし、メアリーの体を斬れども斬れども、斬った端から回復されてしまう。


「くっ!? これではきりがありません。ここは一旦退いて幽々子様に報告を……」


 妖夢が退散の算段を立てているときだった。思考していたわずかな隙を突き、メアリーが攻勢に出る。蛇状の左腕を伸ばし、妖夢の体に巻き付かせる……!


「し、しまった」

「つか……ま……えた……。しめ……こ……ろす……!」

「あ……が、が……」


 首元を絞められ苦悶の表情を浮かべる妖夢。そんな妖夢の脳内に少女の声がどこからか響いてくる。


「あらら。苦戦しているみたいですね。代わってあげましょうか?」

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