表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方二次創作 普通の魔法使い  作者: 向風歩夢
56/217

心臓破壊

「殺してやる!!」


 フランは手の爪を立てると、カストラートを斬り裂こうと飛びかかる!


「何故だ!? 何故僕の『声』が効かない!?」

「はぁあああああああああ!!」


 フランの爪がカストラートに迫る。カストラートは声による攻撃を諦め、魔法で障壁を作りだし、受け止める。


「こんなもの……壊れちゃえ!!」


 フランの言葉を合図にするように、カストラートの展開した障壁が爆発とともに砕け散る。


「なにぃ!?」


 得体の知れない力で障壁が破壊されたことにカストラートは驚きを隠せない。比較的長い時間を生きている彼女だが、経験したことのない力に動揺していた。


「き、貴様、一体僕の魔法に何をした!?」

「『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を私は持っている。お前の腕を破壊したのもその力よ」

「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力だと? デタラメな力を吸血鬼ごときがなぜ……!?」

「ふふふふ。お母様が下さった翼を侮辱した罪は重い。次は心臓を壊してあげるわ!!」


 フランはカストラートの胸に視線を集中させる。


「貴様、なぜ僕の胸を凝視している!?」

「だって、心臓の『目』がわからないと壊せないんだもの」

「『目』? その御大層な能力は発動するのに条件があるようだな。そんなものを待ってやるつもりはない! ……さっきのは何かの間違いだったんだ……。今度こそ僕の声を貴様に浴びせてやる……!」


 カストラートは再び左手に銀の十字架を掲げるとフランに照準を合わせ、発声する。しかしフランには何の症状も現れない。


「なんで……。貴様、本当に吸血鬼か!?」

「当たり前でしょう? 私はお父様とお母様から生まれた生粋の吸血鬼よ!」

「くそぉお!! ……『声』が効かないならば、直接殺すだけだ!!」


 カストラートは光の剣を顕現させ斬りかかる。


「もう遅いよ?」


 フランは不敵な笑みを浮かべながら、右手を前に出し、開いていた手を握りしめた。


「きゅっとしてドカーン」

「ぐ……は……!?」


 フランは心臓を破壊した。カストラートは口から鮮血を噴き出す。


「ざまあみろ!」


 フランは笑みを浮かべていた表情をニュートラルに戻すと、眉を吊り上げる。


「あ、ああああああああああああああ!!」と叫びながらカストラートは魔法を発動させた。


 カストラートの胸を柔らかな緑の光が包む。回復魔法を使っているようだ。程なくして息切れを起こしながら立ち上がる。


「よくも、僕の心臓を潰してくれたな!? 心臓の再構成に多量の魔力を消費させやがって……!! この下等生物がぁ!!」

「まだ、生きてるんだぁ……。しぶとーい」とフランは怒りとあきれを合わせたようなトーンで喋ると、再び掌をカストラートに向けて広げてからギュッと握る。爆発音とともにカストラートの左足が吹き飛ぶ。


「う、ぐ、あああああああああ!?」


「怒りのまま、一瞬で殺してあげようと思ってたけど、変更。少しずつ砕いていってあげる」


 片足を失い、まともに立つことが出来なくなったカストラートの元にフランはすこしずつ歩みを進める。実力差は明らかであった。『声』があったからこそ吸血鬼に対して優位に立てていたカストラートだが、フランにはその『声』が効かなかった。身体能力、魔法の破壊力に劣るカストラートにもはや勝ち目はない。しきりに『この下等生物が!』とフランに咆哮し続ける彼女だが、誰から見てもそれは負け犬の遠吠えであった。


「あははは! 次は右足を壊してあげる!」


 フランの表情からは少し怒りの感情が抜けて行き、純粋な笑顔がかいま見えた。目の前で自分より圧倒的に弱い者が命を失うことに対する喜び。吸血鬼の本能に逆らうことができず、幼いフランは破顔してしまうのだ。


「だめええええええええええ!!」


 フランとカストラートの間に割り込んでくる少女が一人。背丈はフランよりも大きい。フランが人間で言えば5、6歳くらいの見た目であるのに対し、少女は15、6歳程だろうか。外套から黄色い長髪を覗かせている。


「ル、ルガト……」とカストラートは呟く。

「あら、そこの魔法使いのお仲間?」


 フランは不敵な笑みの視線をカストラートからルガトに移した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ