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東方二次創作 普通の魔法使い  作者: 向風歩夢
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揶揄された宝石

「き、きさまぁあああああ!! よくも、僕の腕をぉおおおおお!?」

「あっははは! 腕をもいであげたのに、まだそんなに元気なんだぁ!」


 フランは右腕を失ったカストラートを見て笑う。その表情は幼い子供が虫の手足をもいで遊んで笑っているような……純粋故の残酷さを感じさせる。


「……コ、コンバルイスセット……!」


 カストラートは欠損した右腕に回復魔法をかけ、止血を行う。


「……回復魔法は魔力を大量に消費するんだ……。この落とし前はお前の命で払ってもらうぞ……!」

「わたしを殺すの? 無理だと思うよ。私はそこで倒れているお姉さまのように弱くないもん」

「……この吸血鬼の妹? ならば貴様も吸血鬼ということか!?」

「ええ。その通りよ」


 フランは犬歯を覗かせるようににやりと笑うと、飛膜のない骨組みだけの翼を広げた。羽には飛膜の代わりに美しい宝石が付いている。双翼とも宝石は内側から水色、青、紫、桃、橙、黄、黄緑、そして再び水色と……、順に8つが付いており、殺風景な骨組みだけの翼を彩っていた。


「く、くくく……。飛んで火にいる夏の虫とはお前のことだ……! 貴様も駆除してやるぞ!」


 カストラートは血が止まった自分の右腕を押さえながら、フランを睨みつけるようにして顔を歪める。額からは冷や汗が流れ続けている。破壊された右腕のダメージが重いようだ。


「……お前の翼……造りものか? くく、実験動物である上に出来損ないとは、救えない奴ですね」

「挑発のつもり? たしかにわたしの翼は不格好だけど、そんなことを私は気にしてないの。代わりに美しい宝石をお母様が付けて下さったんだから」

「ははははは!」


 カストラートはフランの言葉を聞くと馬鹿にしたような笑いをする。


「なにがおかしいの?」

「おかしいさ。吸血鬼(実験動物)ごときが親子愛の真似ごとをしているなんて知ればね。所詮は吸血鬼、趣味の悪い宝石の翼がお前たち親子のセンスの悪さを示しているよ。その美しくない模造品の翼ごとお前を消してあげよう」


 フランことフランドール・スカーレットは眉を吊り上げ、歯を食いしばる。


「お母様が下さった翼を馬鹿にすることは誰であっても許さない。……殺してやる!!」


 フランは翼の宝石を揶揄され、怒りに任せて突進する。


「や……やめ……な……さい、フラン……」


 息も絶え絶えにレミリアが忠告するが、フランにその声は届くことはなかった。


「ククク……。挑発に乗りやすい幼体だ。精々苦しむがいい……!」


 カストラートは左手に十字架を構えると……フランに照準を合わせて『発声』する。


(最高出力の声だ……! 吸血鬼ごときがよくも僕の腕を奪ったな……! 一瞬で内側から脳を破壊してやる……!)


 発声をしながら、カストラートはフランが脳を壊され苦しむ姿をイメージして不敵に笑った。しかし……彼女の思惑は外れることになる。フランは声によるダメージを受けることはなく、突進の勢いそのままに側頭部を思い切り殴り飛ばした。塀に叩きつけられたカストラートは激しい痛みを覚える。しかし、そんな激しい痛みよりも疑問が上回った。


「き、貴様……、何故僕の『声』が効かないんだ……!?」

「『声』? 一体何のこと!? お母様の翼を侮辱したことを誤魔化そうたってそうはいかないわよ!!」


 フランは血走った眼でカストラートを睨み続けた。


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