霖之助の気遣い
「君が博麗の巫女を超えるなんて冗談は置いといて、ミニ八卦炉は持ってきているかい?」
「ひっでえ反応だなあ。冗談なんかじゃないぜ?」
「わかった、わかった。わかったから見せてもらえるかい」
「冗談じゃないのに……」
魔理沙は頬を膨らませながら、八角形のマジックアイテムをポケットから取り出し、霖之助に手渡す……。
「ひ、ヒヒイロカネで作ったミニ八卦炉が、こんな……ボ、ボロボロに……」
霖之助は青ざめながら、ミニ八卦炉を点検する……。
「……応急処置だが……、はんだごてで埋めておくか……」
霖之助ははんだの鉛をミニ八卦炉の削れてしまったところにあてがっていく……。
「おい、こーりん! 金色のミニ八卦炉に鉛が入り込んで、見た目が悪くなってるじゃねえかよ!」
「これ以上、ヒヒイロカネが削れて無くなるよりはましだろう……?」
霖之助は修理が終わると、魔理沙にミニ八卦炉を返す……。魔理沙は受けとったミニ八卦炉を確認した……。
「うわぁ。だせえ……」
「文句を言うな! そもそも、僕がただで上げたものなんだから、別に良いだろう?」
このマジックアイテム『ミニ八卦炉』は魔理沙が森の家で一人暮らしを始める際に、心配した霖之助が魔理沙に渡したものである。霖之助は当時のことを思い出しながら、魔理沙に問いかける。
「……親父さんとはアレからずっと会ってないらしいね?」
「なんだよ。こーりん、お説教か? 何言われても私は実家には戻らないぜ?」
「……この前、人里に行ったんだが、霧雨道具店に顔を出してきたよ。……親父さん、君が帰って来ないことを心配していた。たまには顔を出してあげたらどうだい?」
霖之助の言葉を聞いた魔理沙の顔が紅潮する……。眉もつり上がる……。
「なにが、心配してる、だ。あんな奴、知るもんか!」
魔理沙は、大声を出して、香霖堂を立ち去る……。怒りの矛先を霖之助に向けることは間違っていると、魔理沙も理解していたが……、我慢できなかったのだ。霖之助は走り去っていく魔理沙の後姿を見ながら、ため息をつくのであった……。
森の家に帰り着いた魔理沙は、すぐにベッドにもぐりこむ……。
「くっそ! ムカつくぜ! 心配なんてすんなよ……!」
魔理沙はうつ伏せに寝て、拳を握りしめ、ベッドを叩く……。疲れていたのだろうか……。しばらくすると、魔理沙は小さな寝息を立て始め、眠りに就くのであった……。