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東方二次創作 普通の魔法使い  作者: 向風歩夢
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言い争い

「ど、どこに行きやがったんだぜ!?」

「……紫のスキマと同じような空間転移の術みたいね……」


 霊夢はひと段落ついたと感じ、ふうとため息を吐く……。


「……まさか、ホントに運を奪っているとはね……。でもこれで全て話がつながる……。妖精も付喪神もなぜ消えたかが……」


 運の有無は存在できるかどうかにおいて大きなファクターとなる。博麗大結界は『幻と実体』の境界と『常識と非常識』の境界の二つで成り立っている。外の世界で忘れ去られた妖怪や妖精などが幻や非常識となり、幻想郷に流れ着く……。幻になってしまったものは自身の肉体や寄り代を得る必要があるが、この時に運が必要となるのだ。幻になるというのは強引な解釈をすれば、外の世界で運を失ったことなのだ。

 妖精がもっともポピュラーな例だろう。彼女らは、その昔は外の世界でもその辺を飛び回り、人間たちに認識されていた。しかし、科学技術が発達した人間は妖精の存在を……自然を忘れ、彼女たちを認識できなくなってしまったのである。認識をしてくれる人間を失った彼女らは幻となって幻想郷に辿り着いた。しかし、もし、人間が科学技術を持つという不運が無ければ、彼女たちは幻となることはなかっただろう。つまり、妖精は運がなかった存在なのだ。運を失った者たちが再び実体を持つには、失った運と同等かそれ以上の運が必要となる。幻想郷は運に溢れていたため、彼女たちは復活することができたのだ。だが、それ故今回の運を奪われる異変では最初に影響を受けてしまった。彼女たちの存在は良くも悪くも運に大きく左右されているのである。


「お、おい、霊夢……。もしかして運のない私も妖精たちみたいに消えちまうのか?」


 魔理沙は青ざめた様子で自分の両掌を見つめる。薄くならないか不安なのだろう。霊夢はまたはあとため息を吐く。


「大丈夫よ! 人間は妖精や付喪神と違って、存在を肉体に依存してるから。妖怪も同じよ。……もっとも、力が弱くなっている奴はいるかもだけど……」

「そ、そうか……」


 魔理沙も安堵のため息をつく。


「よし、それじゃ私は家に帰るぜ。魔法が使えないってんなら、マジックアイテムを用意しなきゃいけないからな……」

「何言ってるのよ、魔理沙! まさか、アンタこの後に及んでまだ異変解決をしようっての!?」

「当たり前だろ? あの魔女集団には私の母さんのことを聞かなきゃいけないんだ。ついでに私と母さんを馬鹿にしたんだ。やり返さないと腹の虫がおさまらないんだぜ!」

「だめよ! アンタには博麗神社か人里で大人しくしてもらうわ! アンタなんて普通の無力な人間なんだから……!」


 魔理沙は霊夢の放った「普通の人間」という言葉に不信感を持つ……。


「……おい霊夢……。私は『普通の人間』なんかじゃないぜ……! 『魔法使い』だからな」

「でも、今は魔法を使えないでしょ!?」

「ああ……。そうだな。私は運がないみたいだからな」

「それなら……!」

 妖精の存在と同様、魔法の発動にも運が大きなファクターを占める……。魔法も言うなれば幻や非常識の一種である。存在するためには運が必要なのだ。魔理沙も魔法に運が必要なのはもちろん知識として持っていた。その運を魔理沙は持っていない。これは事実上魔理沙が本物の魔法使いにはなれないことを示唆していた……。

 魔理沙はぐっと下唇をかむ……。


「なあ霊夢……。お前は私に運が無いことを知ってたんだよな……?」


 霊夢は魔理沙から視線を逸らす……。


「ええ、知ってたわ……」

「……知ってて……私と特訓してたのか……。私が本物の魔法使いにはなれないって知ってたのに、そのことを隠して特訓してたのか……」

「な、なによ。どうしたのよ急に……。幻想郷の中でなら、アンタは立派な魔法使いなんだから……。それで良いじゃない……」

「良いわけないだろ!」


 霊夢は突然の大声に体をビクッと震わせる。霊夢には魔理沙の思いが理解出来なかったから……。


「わ、私は魔法使いに……! 私はお前に……」


 そこまで言いかけて魔理沙は口を止め、話を変える。


「……お前が私と特訓してたのは……、私を特別と認めてくれたからってわけじゃなかったんだな……。新しい決闘ルールの『普通の人間』代表として私が適任だったわけだ……。運のない普通の人間である私が妖怪や神と対等に戦えるって宣伝できればこれ以上のものはないよな……」

「っ……!? ……ち、違うわ! 私はそんなつもりであんたと弾幕ごっこをしてたわけじゃ……」

「なんだよ……。今の一瞬の間は!」


 魔理沙は霊夢を怒鳴りつける……。魔理沙の怒りは……自分に魔法の才がないことの悲しみは霊夢にぶつけて良いものではない……。しかし、魔理沙は自分の能力の無さを自分の中で消化出来る程、大人ではなかった。感情の高ぶった魔理沙には今までの霊夢の行動は裏切りにしか感じられなくなっていた。


「お前は私のことを見下してたんだな……。運のない普通以下の人間だって……。そりゃそうだ。お前は幻想郷に愛された『博麗の巫女』だもんな……! ……私とお前じゃ住んでる場所が違い過ぎる……」

「な、何を言って……」

「霊夢なんて大嫌いだ!」


 魔理沙は両目に涙を浮かべながら霊夢に背を向けると、魔法の森の中へ走り去る……。藪の中に消えた魔理沙を霊夢はすぐに追ったが見失ってしまった……。霊夢は空を飛び、魔法の森の上空から探索するが、覆われた木々で魔理沙を見つけ出すことはできなかった。霊夢は大幣を強く握りしめる。


「違う……。私はそんなつもりじゃ……」


 霊夢は悲痛な表情で眉間にシワを寄せるのであった……。

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