不意討ち
「くっ……。私の魔法が発動しないなんて……。お前ら一体何をしたんだ……!?」
「敵に教えるわけがないじゃろう?」
老婆はにやりと顔を歪めたまま、魔理沙に近づき、首元に杖を当てる。
「さて……、おぬしをどうしてやろうかのう……。人質として生かすか……。口封じのため、殺すか……」
「……仲間に加えるって選択肢はないのか、なんだぜ?」
「ククク……。出来そこないを仲間にしてやるほどわしは物好きじゃないんじゃよ……」
「……さっきから、出来そこない、出来そこないって……気分が悪いんだぜ……!」
「フ……、拘束されているというのに、強気を崩さんとは……。やはり惜しい人材じゃな……。出来そこないでなければ、仲間にしてやったかもしれん……」
「……お前らの目的は何なんだぜ? 幻想郷で何をするつもりだ?」
「……次から次へと質問が出てくるのう……。よくしゃべる小娘じゃ……。まあ、時間稼ぎをしている……といったところか……? じゃが、魔法を発動しているわけではないようじゃなぁ……。……誰かに助けを求めている様子はないが……、何を狙っている?」
魔理沙は時間稼ぎをしていることを老婆に看破され、額から冷や汗をかく……。老婆の言ったとおり、魔理沙自身は誰かに助けをもとめるような魔法も、狼煙のような信号もだしていない……。だが、「勘の良いあいつなら、来てくれるはずだ」と魔理沙は確信していた。魔理沙が生き残る算段をしていると、眼の前に丸い黒球が現れる……。黒球は暗闇で構成されているようだ……。中から声が聞こえてくる……。
「なにやら、騒がしいですね、お母様……。どうなされました……?」
暗闇の中から一人の女性が現れる……。魔理沙は眼を見開いて女性を見る……。その女性は魔理沙の母親と同じ金髪だった。マリーと名乗っていた魔理沙の母親とそっくりの女性である……。
「マリサちゃん……!? な、なんでここに……!?」
「お、おばさんこそ……なんで……?」
魔理沙とマリーのやり取りを見ていた老婆が口を開く……。
「マリー……。お前、この娘と面識があるのか……?」
「い、いえ……」
マリーは否定の言葉を老婆に話すが、老婆はマリーに厳しい眼光を向ける……。嘘だと見破っているようだ……。
「……マリー……。この娘をマリサと呼んだか……? フフ……そういうことか……。この娘はお前の片割れの残りカスというわけか……」
「ち、違います! 母上! この娘とリサは何の関係もありません!」
「どうじゃかのう……。仮に関係なかったとしても……小娘一人が死んだところで何の
影響もあるまい?」
老婆が魔理沙に向けていた杖を光らせる……。魔力を込めているようだ。魔理沙が死を覚悟した瞬間、老婆と魔理沙を取り押さえていた二人の魔女は一斉に飛び退いた。直後、巨大な陰陽玉が老婆たちに襲いかかる……。老婆たちは不意討ちに対して、余裕を持って対応する……。
「いきなり、大技を繰り出すとは……品のないお穣ちゃんじゃのう……。当たったらどうするんじゃ……」
「当たったらどうするですって? 大成功じゃない」
大技を繰り出した少女は老婆たち魔女集団と魔理沙の間に割って入る……。紅白の巫女服を着た少女……。博麗霊夢はド派手に登場したのだった。




